街の広間へ着いた守たち一行。広場にはすでに、たくさんの魔物とその夫たちで溢れ返っていた。そして広間の中央には、町長らしき銀髪の女性と、山羊の角を生やした少女が立っていた。
「皆の者、ついにこの時が来た!」
銀髪の女性が声を上げる。
「いよいよ、我々は元いた世界へ帰ることが出来る。我々は、再び地上で幸せに暮らすことが出来る!」
「そうじゃ、皆が笑って暮らせる世界、地上で争っている連中に届けたくは無いか!?」
山羊の角を生やした少女が、守たちに問いかける。
「オオーーーっ!!!!」
広間にいた魔物たちが、一斉に声を上げた。
「なぁセリア、あの二人は一体誰だ?」
「ええ、あのお二方は、プラティ様とチーナ様。銀髪の方がプラティ様で、もう片方がプラティ様。リリムとバフォメットっていうとても強い魔物ですわ。」
「ほう、それはすごい。」
「お二方は、この世界を作り上げた方の一人。つまり、この世界の創造主の一人と言えばいいかしら?」
「…何ともスケールの大きい話だ。」
守は途方もない話に、ただ驚愕するだけだった。プラティと、チーナと言う二人の上には、何やら大きく、禍々しい色の球が浮かんでいた。まるで、暗黒の太陽と言えばよいか。果たしてこれからどうなるのか。守は、全く予想が出来なかった。
「さぁ、いよいよこちらの世界と地上とを繋げる時が来た。…心の準備はいいか?では、行くぞ!!」
そう言うとプラティとチーナは、何やら呪文を唱え始めた。守には何て言ってるのかさっぱりわからない。だが、二人の真剣そうな顔を見る限り、事の重大性だけは伝わった。そして、二人が呪文を唱えるのを終えると、宙に浮かんでいた球は猛スピードで上昇して行き、そのまま空に吸い込まれるかのように消えて行った。
「おおーっ!!」
あたりから歓声が上がる。
「では、今地上がどうなっているのか、この巨大平面水晶で見てみるのじゃ。」
チーナがそう言うと、水晶に守の住んでいいた現実世界が移りだされた。
水晶には、まほら島の大穴から、大量の何かが雨のように出ているのが映った。それは、さっき、飛ばしたあの球と同じ色だ。
「セリア、あれは何だ?」
「はい、あれは強力な魔力です。あの魔力が、まほら島と同じようにここの世界の抜け道となっている場所から、世界中に溢れ出ています。」
「ということは…俺の住んでる世界が、セリアの住む世界と同じようになること?」
「はいそうです。」
「はいそうですって言われても…どうすんだよ。」
「恐らく、魔力を全て出し切った後、私たち魔物で構成される軍隊が、各拠点を抑える計画になってます。そして今度は、人間、魔物が共存して暮す世界を作り上げるのです。」
「それって、半ば侵略じゃねーか!」
「ご安心を。あなた達は傷つけませんので。」
「でも、俺達の方が傷つけちゃいそうな気がするけど…」
「…あの光景を見ても、言えますか?」
そうセリアが指さす先には、襲いかかってきた魔物と淫らに交り合うA国の軍隊らしきものが映っていた。女性の兵士も、魔物により、同じ魔物に変えられているようだ。これが、世界中で起きていると予測すると…
「…人間って、欲望に忠実なんだな。」
守は、何だか情けなくて涙が出そうだった。
その後、守の住んでいる世界は、魔力に汚染されてしまい、セリアが住む世界と同じになってしまった。そして、プラティたち魔物が権力をもつようになった。しかし、守たち人間が支配するより、世界は平和になった。各地で発生していた紛争も、彼女たちが全て解決。貧困、食料、環境問題も、全て半年と3カ月で片付いたのだから、驚きを隠せない。あまりにも出来すぎたシナリオの様な気がするが、これが現実である。
この一連の騒動があった後、守はセリアが元いた世界での就職が決まった。それも、自衛隊にである。と言うのも、守は大学4年生なのだが、今まで就職先が決まっていなかった。しかし、魔物といち早く交流していたということが、人事の目に止まり、そのコネで試験を受け、見事合格したのである。ちなみに、身体検査で優秀な結果を得たが、セリアにインキュバス化してもらったのは内緒である。
そしてその後、守は自衛官で魔界の開発援助を行っているのだが…
「セリア、いつまでも愛してる。」
「ああん
#9829;あなた、私も愛してます
#9829;だからもっと突いてぇー
#9829;」
…と、仕事が終わった後、そして休日はいつもこんな感じである。
こうして、守の悪ふざけから始まった肝試しは、世界を変えたという事、愛する妻を手に入れた事、新しい生活が始まった事と言うとんでもない形で幕を下ろしたのである。そして守は、セリアとつながりながらこう言ったのであった。
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