とある山奥に一軒の家があった。
ちっぽけな家一つが。
その家の住人というと……
「……う、ここは……?」
先程まで寝ていたベッドから身を起こしたその黒髪の短髪の男の年は20代後半といった所か?
筋骨隆々な身体には無数の傷が付いており、包帯が身体中にされている。
一目見るだけで一般人ではない事がわかるだろう。
「……ようやく起きたのね?世界最強の剣士さん?」
声に反応してその方向に体を向けると、そこには1人の女性がいるではないか。
赤毛のショートカットで整った顔立ち、だが口元に大きな切り傷、それ以外にも切り傷が至る所に見られる。
そして背中には蜥蜴の様な尻尾。
その目には、戦士としての誇りと彼への慈愛が宿っている。
魔物娘の中でも特に戦士として有名なリザードマンだ。
「……ああ、俺はどれだけ眠っていたんだ?リル?」
「5日程かしらね……、ソウガがあんな事になってから……」
リルと呼ばれた彼女はどこか寂しげにそう答えた。
「そんなにか……。ちゃんとアイツは死んだんだよな?」
「ええ、貴方にした攻撃が正真正銘の最期の攻撃だったわ」
2人は……、いや彼らを含めたいくつもの戦士達は5日前にある者と戦っていた。
その名はスルト……。
現代のサキュバスの魔王の魔力でさえ、その性質を変える事は叶わず、願うは現世界の焼却。
世界の終末装置の一つである。
7年程前の事だ。
既に魔物娘を同じ生きる仲間と認める人間とそれを受け入れない最高神や過激派教団との戦いは終わり、一人一人自分が自分らしく生きたい場所で自由に生きていた。
魔王も其々の街の運営や人々の主義主張を尊重しあい、基本は非干渉を貫いていた。
自分が望む幸せを手に入れられる道を選べ。
それが今の世界のルールだった
だが、そんな平和な時が終わりを迎えようとしていた。
最初は雪女やメロウなどの氷や水の力を多く持つ魔物娘が熱さに悩ませれていたくらいだった。
だが次第にその力は、あらゆる所に影響を及ぼしていく。
あらゆる国の者達は、その原因を探っていたが分かった時にはいくつかの都市が焼却されていた。
この緊急事態にあらゆる国家、集団は主義主張を越えて集まり、スルトを滅ぼす為、最強の戦士団を結成した。
その名を黄昏の騎士団と言う
「長かったな…。お前と始めて出会ってからもう7年か……」
「ええ……、騎士団の結団式で出会ってからね…」
騎士団の団員は、身分や職業、所属を問わず魔法使い、剣士、騎士、鍛治師など直接戦う者以外も集められた。
スルトを滅ぼす為には、人魔両方の力を集める必要があった。
元々中立国家で有名だったとある国家でその結団式は行われた。
『スルトだっけ?そんな奴、俺が倒してやるよ!!何せ俺は世界最強の剣士だからな!!』
『何を言ってるの?私が世界最強の剣士よ!』
『何!?喧嘩売ってんのか!?』
『ええ!私の目の前でそんなふざけた事を抜かした事を後悔させてあげるわ!!』
集められた猛者達の中でも、群を抜いて強かった2人がいた。
ソウガとリルだ。
2人は同じ世界最強の剣士を目指す者同士、お互いをライバル視しぶつかり合っていた。
「ああ、あの時はこっ酷く団長に怒られて、しばらく雑用だぜ?大変だったよ」
「そうね。お陰で両親からもこっ酷く叱られたわよ」
だが決して仲が悪くはなかった。
最初の頃はお互いに意地を張り続けていたが命を懸けた戦いを生き抜いて行く中で、最大の戦友として認め合っていく。
『もう息切れかしら?なら残りの奴らは私が倒すわよ?不可視の刃さん?』
『はっ!ぬかせぇ!まだまだこれからだぜ!!お前の方こそどうなんだよ!龍姫将さん!!』
舞い踊る様に双剣を操り、敵を屠る、龍姫将ことリル。
その刃を見た者はおらず、だがその刃はどんな守りでさえ切り裂く、不可視の刃ことソウガ。
2人の剣士の名を知らぬ者はこの世界には、もはやいないだろう。
そしてスルトとの最終決戦の時が来た。
スルトは、世界各地から分身体を使って集めた魔力を貯めて、それらを全てを焼き尽くす終末の炎へと変換させていた。
巨人であり、炎であるスルト。
戦士団は力を合わせて、鋼や魔法がかかった剣など応戦するも、その炎の前に1人、また1人と倒れてゆく。
『我はスルト……。世界を焼却しよう……。我こそが終焉なり…!』
だが誰も諦めてはいなかった!
『終わるのは貴方だけで充分よ!みんな!!作戦通りに!』
『了解!』
『……!?我が炎が弱まるだと…!?』
スルトの炎の勢いが落ちていく。
世界各地から集められた魔法使い達によりスルトが奪われていた魔力を、逆変換して奪い返していたのだ。
『……邪魔をするなぁ…!』
『邪魔は幾らでもさせてもらうぜ?砲撃ようい!!撃てぇ!!』
更に、人間の科
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