「僕は将来、みんなを守れる素敵な警察官になりたいんだ」
そう子供の頃から僕は言い続けた。
みんなは他の子供達と同じように頑張れ、応援してるよ!と言ってくれた。
でもただ1人……
「そんなの無駄だよ、だって……、世界は……」
そんな事を言っていた女の子が居た。
でも僕はそんな彼女に……。
あれから何度も幼い頃の写真や友人達に話を聞いても彼女の事は分からなかった。
あれは夢の中の話だったのだろうか?
でも彼女の悲しそうな顔はまだ覚えている。
世界は終末へと向かっていた。
隕石、飢餓、病気、地震、台風……、あらゆる物は人々の心を蝕んでいった。
人々から、隣人愛は失われかけて、誰もが自分が生きるので精一杯。
かつての平和な時代などもはや夢のように失われていた。
「どけえ!!これは俺のモンだ!」
「私のよぉ!!」
「やめてください!暴力はいけません!!あぁ!」
既に警察や医療機関は荒れ果てており、まともに機能していない。
中には元警察も民衆の暴動に混ざってる始末だ。
「国の犬がうるせえんだよ!!」
「そうよ!!金目の物渡しなさいよ!あるんでしょ!」
「わ、分かりました、これを差し上げます、だからもう……」
人々からすればもはや警察は味方ではない、ただのうるさい邪魔者でしかないのだろう。
だが今はそれでも争いは一つでも防がないといけない。
自分の財産すら渡したとしても……。
「リュウさん、医療機器や薬、ある程度手に入ったよ」
「ああ、ありがとう、助かるよ」
街に残された数少ない病院、そこに残るただ1人の医者であるリュウさん、そしてその妻子達は無償で人々を助けていた。
「いつもありがとうございます」
「お兄ちゃん、遊ぼう!」
「こら!忙しいのよ、お兄さんは!」
「いえ、大丈夫です」
まともに食事も食べられてないのだろう、かつて結婚した当初は美人だったリュウさんの奥さんもすっかり痩せてしまっている。
せめて子供達だけでも元気に暮らせるようにしたい。
そう思いながら、かけっこやかくれんぼ、道具を使わなくても遊べる遊びで子供達と遊んでいた。
「あんた、こんな事して何になるのよ」
とある酒場-と言ってももはやまともに酒も提供はしていないが-で現在の数少ない娯楽である彼女のラッパの音を聴いていると突然言ってきた。
「どうしたんだよ、急に?」
彼女はいつからかこの町にラッパを手に現れた。
街から去る者たちが増えても、彼女はここでラッパを吹き続けた。
もはやお金を払う客も居ない、そんな状況で。
「もう、どうしようにもならないわよ、この世界は。あなたも何もかも放り出して仕舞えば良いじゃない、全部無意味よ」
彼女はいつも悲観的であった。
その度に僕は
「無意味じゃないよ、きっと意味があるさ」
そう答えてきた。
「何でよ、あいつらみんなあんたなんかどうでも良いように振る舞って!自分の事ばかりで他人の事考えてないようなクズたちばかりよ!」
「違うよ、それは。みんな大切なものがあるからだよ。あの人たちだって本当は大切な人が居るんだよ、それを守るために心を擦り減らしてしまっただけさ。本当はみんな良い人たちだよ」
「あんた馬鹿じゃないの!?あんたがここで頑張ったって!ニュースを見たでしょ、もうすぐこの国への本土攻撃がくるかもしれないって!そうじゃなくても地震や台風とか起きたらこんな現状、一瞬で……」
「……それでも良いよ、僕は。確かにもう未来なんて無いのかもしれない、次の日には全て終わっちゃうのかもしれない、でも僕は僕にした約束を破りたくないんだ」
「本当に馬鹿よ……、馬鹿……!」
きっと彼女は僕が終わっても泣いてくれるだろう、それだけでも僕がしてきた意味はあるのだろう。
そしてその日は来た。
「大変だ!リュウさんの病院が土砂崩れに!」
度重なる異常気象のせいで地盤が緩み、自身のせいで土砂が流れ込んでしまったのだ。
それを友人から聴いた僕は急ぎ向かおうとするが……。
警報が鳴り響く、これは……!
「核ミサイルが各地に……!?」
恐れてしまった事態が起きた。
破滅そのものが。
「君たちはシェルターに避難してくれ、僕はできるだけ避難する人たちを助けに行く!」
駆け出して行く、身体中の全ての力を出して。
人々はパニック状態でお互いに争いあう人も居た。
それでも僕は避難させるために動いた。
石を投げられても、殴られても、蹴られても、1人でも多く生き延びさせるために。
「リュウさん……ごめん!」
そう、リュウさん達を助ける余裕は無かった。
この罪は……。
核の到達まであと少し、しかしシェルターの扉が内部から閉められな
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