狸寝入り…が蛇にできるわけもなく

俺はここ20年と少しの間生きてきた中でビジネスホテルに一人で泊まることはあれど、ラブホに入ったことはなかった。
もっと汚いものかと思っていた。いいや、汚さとかをよく見る暇もないほどまでに今の俺はピンチに追い込まれているのだ。

「かわいいなあ君は…くんくん、すんすん、ふはぁ〜♪」

先輩に恐ろしい力で抱きしめられたまま部屋に連れ込まれ、ピンク色を基調としたベッドに押し付けられてくまなく匂いを嗅がれる。

「先輩!ちょっと!?一度話し合いましょう!ね?」

すると急に俺の胸元から顔を離してこちらをじっと見た。
目が据わった真顔はまたもや俺を金縛りにした。

「なに?」

「そ、その、ね?こういうのは、酔ってない時にしましょう?それに俺だって汗臭いですし…」

愛想笑いを浮かべてやんわり拒否する。
いやこの流れで一夜を共にしてもいいけれど、ヤってしまってから先輩が「酔っただけでした」では弁明も何もできない。
ならばとりあえずホテルで落ち着かせて、ベッドで寝付くまでなだめてあげればよい。
これは名案だ。

とか思っていると、先輩は急に自分のスーツをはだけて内側の匂いを嗅いだ。

「すんすん……私、汗臭い?」

なんか全く別の心配をしている。
が、やはりこれもチャンスだ。

「いい機会ですからシャワーでも浴びてきてください!熱いお湯に当たればきっと酔い覚ましにいい感じですよ!」

「!!わかった!じゃあ浴びてきます!それと…」

お風呂に向かってしなやかな足取り(?)で向かう先輩が、ふと振り返った。

「そ、それと?」

「逃げたら食べるから、あ、これ文字通りの意味で」

冷たい声で言われた。
……怖い。



「たっだいまー!春川お姉さんのお帰りだー!」

ベッドで戦々恐々寝たふりをしている俺の耳に、ハイテンションな声が突き刺さる。
絶対まだ酔ってる。
なので目を固く閉じてじっとしていよう。

「…ん?あれ?あれあれぇ?寝てるのぉ?」

頬を何か濡れたものが這っている。ちろちろと耳や鼻を撫でているので、恐らく舌で舐められているのだろう。
舐められるのはいいけど、酒臭い。

「寝たふりですかー?」

「…」

せっかくヤる気のところを、気の毒だし残念だが今日のところは健全な関係のまま保っておこう。
これは決してヘタレではない。据え膳食わぬは男の恥、だなんて言うが今回はフェイクの据え膳を見抜いてのことだ。
俺が望むのはもっとこう…いちゃいちゃから、俺が優しくリードしてあげる感じなのだ。

というわけで、おやすみなさい。

「…ちぇ、あんだけ飲ませてムラムラさせて期待させておいてヤらせないなんて、許さないからね!」

しゅるしゅる、と衣擦れの音が聞こえる。
いいや、もしも睡姦されても俺は体を右に向けて寝ている。この状態で挿入なんて不可能だ!

「あぁもう、可愛い寝顔だよぉ〜
#9825;こんな無防備なところ晒して、私に頼らざるを得ないか弱い感じが大好き…!」

にちゃにちゃ、ぺちゃぺちゃ、と水音が響く。

…まさか寝顔をオカズにオナニーしてるのか?
そんなに溜まってたのだろうか?これは是が非でも起きてはいけない…いや、起きたいけれど、起きたらH必至ルートだ。

考えている内に頬に何か固いものが押し付けられる。指にしては太いし、擦り付けるような動作をする何か。
なんか俺が一人でする時と同じような汗臭い匂いがする。
シャワーの音はたしかに短かったし、きちんと洗っていないのだろうか。

「んっ
#9825;あっ
#9825;あっ
#9825;可愛い顔汚しちゃう
#9825;私のえっちなものでべたべたにしちゃうっ
#9825;イくよ?いいよね?ね?」

ゴシゴシと頬に突き刺すような動きがあって、直後。

「あッ
#9825;イくよっ!顔に出ちゃうから、受け止めてっ!」

ビクッ!と顔にある何かが律動して、何か液体が口や鼻に垂れてくる。
顔に愛液をかけられたのだろうか…。

「んッ…ふぅ…
#9825;気持ちい…あ、この汚された顔可愛い!写真撮っとこ」

パシャパシャとシャッター音がする。
なんか色々と大変だが、とりあえず性欲は落ち着いたみたいだ。

シャッター音が消えてしばらく後、薄眼を開ける。


そこに先輩がいた。

「おはよ、やっぱり起きてたんだ」

「…ッ!」

ベッドから降りようとした矢先、重い尻尾で拘束される。

「先輩っ!もう満足でしょう?一人でオナ…し、してましたし、ね?こんなに潮吹くくらいハッスルしてましたし…」

頬のヌルッとした液体を手で拭う。
その液体は、白濁していた。

「…?」

「ふふふ…黙っていればヤらせて童貞卒業させてあげたのにね…」

先輩が上体を起こす。
白い綺麗なへそから下、蛇の体との境。
女性にあるはずの
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