「それじゃ行ってくるからね、ちゃんと戸締りなさいよ」
「うむ」
「分かったよ、早く行きなって」
夫婦水入らずの旅行に出かける両親に、恵一は手をひらひらと振りながら出るように促した。そして扉が閉まると鍵をかける。居間に来て一人であることを実感すると大きく腕を上げた。
「ひゃほーい。今日から一週間、自由の身だ〜っ」
よくある話ではあるが、親が居ないので解放感に喜んでいた。とはいえやる事もないのでそのまま自分の部屋で菓子を食べながらゴロゴロと転がって漫画を読む。
ピンポーン
「おや、配達か?」
そんな事をしているとチャイムが鳴る。
「はーい」
「こちら神田様のお宅でしょうか。ご依頼を受けてきました魔法頭巾家政婦協会の物です」
「家政婦協会?」
「はい、決まった時間家事などをさせていただくのがお仕事になります。神田良子様からのご依頼です」
神田良子は母親の名前である。
「さては俺が家事をしないと思ったな、信用ないな」
口では文句を言う恵一だが、今まで小学校の宿題で出たお手伝い以外は家事をしたことがない。まともに生活できるか疑問視されるのは当然である。
「今開けまーす」
扉を開けると、入って来たのは何人もの幼女だった。
「は?」
ぞろぞろと入ってくる幼女達に押されるように家の中に後ずさる恵一に構わず、幼女達は居間に入っていく。その幼女達の中に見知った顔を見つけた恵一はその手を掴む。
「おい、南、何だこれは」
お隣に住む幼馴染で元同級生、レッドキャップの須藤 南という幼女である。
「ああ、大体あたしたちが来るとお前みたいな顔になるから言いたい事は分かる。ちょっと待て、あたしも仕事中の会話はまずいんだ」
恵一の手を解いて、居間に入る。恵一も後について入ると、合計11人の幼女が、恵一が据わるらしい一か所以外に座って、または立って待機していた。全員制服だろう同じ服を着ている。幼女に見えるが全員魔物娘なので齢は分からない。南以外年上という可能性もあった。
「説明をしますのでどうぞお座りください。書類にサインも頂きますので」
よく分からないが空いている場所に座った恵一に左右の幼女がくっついて来て恥ずかしくなる。顔が赤くなるのを感じていた。
「というかもう少し詰められないか?」
右に座っているのは南だったので聞いてみる。
「無理、あたしも我慢してるんだから我慢しろ」
南の顔は真っ赤である。
「まずは自己紹介をします。私達は魔法帽子家政婦協会の派遣家政婦です。リーダーのメンティと言います。よろしくお願いします」
恵一の正面に座ったバフォメットがお辞儀する。
「あ、こちらこそ」
お辞儀を返す恵一の前に一枚の書類が差し出される。
「まず、今回神田 良子様のご依頼で、一週間、三型家事パックで働かせて頂きます。宜しければこちらにサインと判子をお願いします」
「その前に良いですか?」
恵一は契約書を見ずにメンティに質問する。
「この人数は何でしょうか」
幼女11人は普通の家事に必要な人数とは思えない。
「そこが我が魔法帽子家政婦協会の特徴でして」
メンティが分厚いカタログを取り出してページを開く。
「幼女の姿の魔物娘は力では劣る場合もあります。そこで、専門を絞って多人数で仕事をすることで素早く、丁寧に、綺麗に出来るという物です。勿論、基本10人なので人数によって値段に差がありますが見習いを含むことで値引きも可能です」
「はあ、だから11人も。来たんですか。皆さんの食事なんかはどうなってますか?」
「そこは材料持込みで、こちらの調理器具を使って、恵一様のお食事と一緒に作る事になっています。ちゃんと食べる時間と場所は別ですのでお気遣いなく。それから午後五時で仕事は終わり、帰社します」
「いえ、別にキッチンで食べるならどっちも構いません。それで、ここにサインで良いんですか?」
「はい。…有難うございます。それではまず、メンバーの紹介をさせて頂きます。私の右から魔女のユーリ、ファミリアのスノウ、左にゴブリンのアン、ドワーフのルビィ、です」
「「「「宜しくお願いします」」」」
比較的小さい娘が並んで4人挨拶した。
「それからご存じの様でしたが、恵一様の右に須藤 南、サハギンのレイミー、左にエンデビルの周防 緑、アリスの都 桜です。その後ろにエンジェルの結城 翼、グレムリンのシャロット・スミスとなります」
「「「「「よろしくお願いします」」」」」
こちらも恵一に挨拶する。エンジェルの娘は実際は立っているのではなく飛んでいて、グレムリンの娘は謎の機械に腰かけていた。
「それでは本日から、お世話させていただきます。早速掃除、洗濯などを宜しいですか」
「あ、はいお願
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