デーモン?の召喚

「さて、今度こそ間違えないぞ。まず魔法陣の内側の円に置く四大元素のシンボルはちゃんとイグニスにつけてもらった蝋燭の炎、ウェンディーネからもらった水の小瓶。シルフの風が入っている袋、ノームの土っと」
 すべて魔物娘からもらった物を置きながらもう一つの袋を持って魔法陣の外側の円に置いていく。
「傲慢なるルシファーはライオンだからスフィンクスの肉球手形、憤怒なるサタンはユニコーンだから尻尾の毛、嫉妬のリヴァイアサンは蛇でラミアの抜け殻、怠惰のベルフェゴールは熊のグレズリーからやっぱり毛」
 そこまで置いて魔術師の少年は首を傾げる。
「毛が重なると面白くないな。やっぱりユニコーンは削った蹄でも貰った方が良かったかな」
 手は休めずに順々に置いていく。
「強欲なるマモンは狐で稲荷からもらった寿司、暴食のベルゼブブは蝿だから腐った肉、蠍のアスモデウスは色欲で尻尾の毒瓶」
 すべてを置き終わると、最後に大きな骨を持ってくる。
「通販で買った山羊の頭がようやく届いたし、本式にやれそうだ」
魔術師は本を開いて呪文を唱える。
「ええ、偉大なる魔王の名の元に命じる。この声を聴き、すべからく現れいでよ。エロホンオッサンヨム、エロホンオッサンヨム。いでよ、悪魔よ」
 今までにない光が魔法陣を中心に渦を巻き、部屋を真っ白に覆い隠した。

 ここで少し時間が戻る。ついさっきデビルを召喚しようとしてデーモンを召喚し、聖騎士を撃退したまでは良かった少年国王アンドリューは、襲い掛かろうとするデーモンを押しとどめて外の様子を見るために部屋を出てきた。
「もう、皆お婿さんを貰ったから大丈夫だって言うのに」
「確認しないと安心できない」
 行く道行く道に若い少女姿のデビル達が、鎧を周りに脱ぎ捨てた、鍛え上げられたとはいえおっさんの聖騎士達の上で腰を振っている。
「そういえばレスカティエみたいにしてくれと言ったけど具体的にどうなるんだ。あの国は俺も普通に行ったことがあるけど多種多様な感じで上位層が変化してたろう。勇者とか女王とか」
 デーモンのブリージングはアンドリューの片腕にしがみつくように宙を浮いてついてくる。絶対に離さないと宣言しているようだ。
「さすがに多種多様は無理ね。普通の子でデビル、私でデーモンに変化させられるぐらいかしら」
「それでも十分だが、名産品でデーモンが作りそうな物あったか?」
 暢気なのか気分を紛らわせようとしているのか、働かせようとしている国王に頬を膨らませて抗議するデーモン。その姿を見てか知り合いらしい中年男性が走ってきた。
「大変で、す、国王。デビルが、デビルが」
「聖騎士を皆骨抜きにしたのなら私が頼んだ事だ」
「それも大変ですが、ニートや引きこもりの男性に襲い掛かっています」
「別に良い事じゃないか?それ」
 思わず返してしまった言葉を気まずそうにごまかそうとするアンドリューをブリージングは胸に押し込むように抱きしめる。
「かわいい。早くしたい。しよう!」
「神殿の確認が先だ。聖騎士が神器でも持ち出していたら大変だ」
 国王として譲れない一線を優先させて、先代主神の神殿という洞窟に着いた。
「それにしても、別に男を襲うなとは言ってないが、何でニートとか限定何だ」
「だって、助けてあげたいじゃない」
「あいつらに助けって、甘やかすんだろう。確か。デビルは」
「そうそう、私達がいないと駄目な体にするのよ」
「物騒だな」
 洞窟の入り口には兵士がおらず、しばらく入った場所でいかにも強そうな兵士が扉を守っていた。
「これは陛下」
「大丈夫だったか?」
 この兵士はこの国で最強の戦士だったので神殿の護衛として守りに入ってもらっていた。「はい、何人かきましたが放り出してやりました。そのまま魔物が連れて行きましたが、何をやりました?」
「デビルに頼んで聖騎士を連れて行ってもいい条件で襲ってもらった」
「それでそちらの魔物さんは?」
「やり方間違えたらしくて召喚したデーモンだ」
「はぁい」
 手を振って挨拶するデーモンにこめかみをほぐしながら兵士は国王に向き直った。
「どうやったら失敗するんです。召喚は貴方の得意でしょう」
「急いだので近くにあった物で魔法陣を組んだらこうなった」
「その手近な物で済ませる性格を改めなさいと言ったでしょう」
「分かった、分かったから」
 どうやら国王の教育係も兼ねていたようだ。
「神殿を確認する。開けてもらえるか?」
「よろしいですが、そちらのお嬢さんはどうします?」
「入って言いの?」
 神殿という事で別れると思っていたブリージングは思わず聞き返す。
「別に拒否するような神殿でもないぞ。入りたければどうぞ」
 アンドリューはそれだけ言うとさっさと入る。
「ええと、それじゃあお邪魔しまーす」
 一歩足を踏み入れようとした
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