この物語はある一言から始まった。
「パンダって尻尾何色だったっけ?」
佐藤 元 16歳の言葉に同級生の田中 敦が首をひねる。
「はて、何色だったっけ」
そこへ同じくクラスメイトの鈴木 一郎がやって来た。
「何話してるんだ?」
「いや、パンダって尻尾は何色だったかって話」
クラス一の雑学者に田中は質問を返した。
「え、パンダ?妹が持ってるぬいぐるみは尻尾が黒だったから黒だと思ってたけど、何色だっけ」
鈴木も首を捻る。
「鈴木も知らないのか?」
「済まない。パンダで知ってるのは、地毛が黒一色で、木に後ろから抱き着いた時熊に見えるように手足と耳が黒いと言う事だけだ」
「それはそれで知ってて凄いと思うぜ」
鈴木の言葉に佐藤が感心した。
「でも結局尻尾の色は分からないんだよな」
「まあな」
「そうだな」
田中のまとめに二人は頷く。
「別にどうって事ないけど、何か気になるんだよな」
「図鑑を見たらどうだ」
再び呟く佐藤に鈴木が本を指さす。
「それはそれでなんか負けって気がするんだ…」
言葉を言おうとした佐藤の視線が窓の方に行く。自然と田中と鈴木の視線もそちらへ行った。
窓には先祖が大陸出身という事からか仲の良い妖狐、火鼠、そして人熊猫の三人が笑いっておしゃべりをしていた。
「おい、やめといた方がよくないか?」
「まあ殺される事はないが、別の意味でやめた方が良いな」
田中と鈴木が止めようとする中、佐藤は壁に手をついて土台の恰好をした。
「どうしても気になる。こうなると夜になっても眠れない」
「だから普通に図鑑見ろよ」
田中の突っ込みを無視して、佐藤は鈴木に来るように促す。
「それじゃあ鈴木、頼む」
「いやある意味俺が危ないんじゃないか?」
「じゃあお前達土台をやるか?」
今三人がいるのは自分たちの教室の前である。この学校では体育の授業の時2クラスが
合同で行い、男女は分かれて教室で着替える。そして現在、体育の時間なので中では女子が着替えているはずだ。
「土台が一番逃げにくいから、どっちかが代わってくれ」
「しょうがない」
鈴木は仕方ないと溜息を一つついて窓からは見えないように気を付けてつつ、カーテンの隙間が見える上の方を見るために佐藤の上に上る。
「ええと、あの子の席は一番奥だから」
鈴木が隙間を覗き込もむ。隙間の真ん前に大きな目があった。
「うわっ!」
思わず声を上げて鈴木が落ちるのを後ろでスタンバっていた田中が支える。
「どうした」
「大丈夫か」
「あらあら、大丈夫?」
ギギギ、と音が鳴りそうなぎこちなさで佐藤と田中が振り返る。そこにはフワフワと宙に浮いている妖狐の娘さんが。
「ええと、どうしたの秦さん」
どうしたもこうしたもどう見えても覗きがばれている訳であるが、田中は一応聞いてみる。
「覗きなんて感心しないわよ。見たいなら見たいって言ってくれればいいのに」
妖狐の秦(ハタ) 美津子さんはそのまま鈴木の襟首を掴んだ。
「ヘルプ、ヘルプミー!」
「じゃあ罰として鈴木君貰っていくわね。あ、二人は欠席って先生に言っておいて」
ずるずると引きずられていく鈴木は声を上げて助けを求めたが、力で魔物娘に敵わない事を知っている男二人は合掌でそれに答えた。
「と、言う訳で貴い犠牲を出してしまった為にも我々はパンダの尻尾の色を知らなければならない」
「高説ぶってるところ悪いけど、これからどうしようって言うんだ。そして鈴木はどうするんだ」
熱く語る佐藤に田中が冷静なと言うよりも呆れた感じの突っ込みをする。
「何、魔物娘の彼女が出来たんだ。悪い事にはならないだろう」
「まあそうか」
納得する場面ではないのに納得してしまうのは魔物娘と暮らしている世界の常識である。
「さて、例え彼氏にされてでも尻尾を確かめるために、今度は完全に裸にする方法を考えた」
「まあその手のバケツを見れば何をやろうと言うのかは分かる」
佐藤の手にはぬるめのお湯が湯気を立てていた。
「何でお湯なんだ?」
「真冬なので水は寒いじゃないか」
「その気遣いをもうちょっとましな方向に」
皆まで言うなと佐藤は片手を広げて田中を遮った。
「今度は見ての通り水をかけて服を濡らす。そして慌てて濡らしてしまった事をお詫びしつつ服を脱げる保健室あたりに引っ張り込む」
「これ小説じゃなかったらとんだいじめだよな」
田中、メタな発言はしないように。
「まあ今回はお前一人が被害にあいそうだからいいや。好きにやってくれ」
「よし。この次の教室移動で二人はここを通るのは確認済みだ。妖狐のいる保健室によってから移動するらしいから他のクラスメイトよりも遅れる」
バケツを構えた佐藤のすぐ近くでわれ関せずに立っている田中の耳に目標の声が聞こえた。
後5メートル、2メート
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