大好きな、愛しい女の子


俺が誓いの言葉を口にすると同時に、ウィルマリナは目蓋を落とし、少し顎を上げる。
いくら色事に縁が無かった俺でもその意味は、彼女が何を求めているかは分かる。

誓いのキス。
口にした約束を確かなものにするための、神聖で大切な。

彼女の青みが掛かった、瑞々しい唇に唇を合わせる。
俺から進んで。俺の意志で。

ウィルマリナの背に手をまわして、身体が密着するように、やんわりと抱きしめる。
柔らかく心地よい弾力を持つ唇に、自分の唇を押し付ける。

「ん……♪」

ファーストキスの時のように貪られはしなかった。
ただお互いの唇を合わせるだけの軽いキス。


だが、今の俺達にはこれが一番のキス。


しばらく唇を重ね合わせた後、どちらともなく唇を離す。

「うふふふっ……♪」
「……ははっ………」

ウィルマリナの幸せそうな笑顔を見たら、つられて俺も笑みが浮かんだ。

……そういえば、魔物になったウィルマリナと会って初めて笑ったな…。

「今すぐあなたが欲しいけど……此処は要らない臭いが多いよね……」

ウィルマリナが少し顔をしかめる。

「臭う?……なんの……?」

俺には桃色の湯の匂いとウィルマリナの香りしか感じないが……

「あなた以外の男の臭いがする。
                ……嫌な感じ」

……魔物になったことで嗅覚が鋭くなったのだろうか。
確かに、此処は一般兵用の大浴場の男湯だ。
時間で考えて俺は最後の客だろうし、俺の前に大勢の人間が此処に来ていたんだろうが……。
ウィルマリナは俺以外の男の臭いがするのが不満らしい。

「ね、行こ?」
「行くって……何処へ?」

ウィルマリナは、笑う。


「私の、ううん。
   私達が、これから暮らす部屋♪」


ウィルマリナは俯いて目を閉じ、小さく何かを口にする。

「………――――っ」

呪文の、詠唱?

詠唱を終えると、ウィルマリナの身体から淡い光の粒子が溢れ出してきた。
その光は俺の身体からも溢れてきて……


―――意識が、反転した。




意識が戻る―――。

「う、あ……?」

ウィルマリナの後ろに見えるのは今まで俺達が居た浴場ではなく、途轍もない広さの豪奢な部屋。
一目で高価だと判る調度品がところ狭しと置かれ、部屋の隅には大の大人が3,4人は眠れるのではないかと思うほどの巨大な天幕付きのベッド。
まるで贅を凝らした王族の部屋のようだ。

「私達の部屋だよ♪」

俺の疑問に、先んじてウィルマリナが応える。

ここは、ウィルマリナの自室……なのだろうか。
俺の稼ぎでは一生掛けても届かないような装飾品で飾り付けられた、大仰なまでに豪華な部屋。
眼も眩むような煌びやかな空間は、お世辞にも人間がリラックスできるような場所には思えなかった。
教団の経済力を、権威を不必要なまでに誇示している。
そこに住まう者に、自分もその一員であることを無理矢理にでも自覚させようとする圧迫を与える……
少なくともウィルマリナは絶対に好まないであろう趣の部屋。





ウィルマリナは、城内でいつもこんな部屋に住まわされていたのか……。
可哀想に……。
こんな部屋では心が休まる暇など無かっただろう。





「邪魔な“ガラクタ”が多いけど、ベッドは広いから、いいよね」

手を引かれて、俺は部屋の隅の天幕付きのベッドへと導かれる。

ウィルマリナは俺の手を離し、はしゃぐ子供のようにベッドに飛び込んだ。

そして立ち尽くしている俺に向き直って


「……来て
hearts;」


両手を広げた。



「ファーストキスは私からだったから、“はじめて”はあなたから、ね?」


………―――ああ。
そうか。そうだよな。

魔物になったとか人間を辞めたとかは、彼女にとって大きな意味は無いのかもしれない。
ウィルマリナは普通の女の子なんだ。
普通に笑って、恋をして、異性を好きになって、結ばれる…その神聖な瞬間に憧れて………。

魔物になったからといって、理性も人格も無い怪物に変わったわけじゃない。
もしそうだったら、浴場で初めて魔物化したウィルマリナを見たとき
いくら姿形が似通っていても俺は彼女をウィルマリナとして認識できなかっただろう。

ならば、『ウィルマリナ』のことが好きな俺がすべきことに変わりは無い。


ベッドに乗り、膝立ちの状態で彼女に近づく。
ウィルマリナは脚を広げて、その間へと俺を導く。
彼女の両手が俺の肩に置かれ、尻尾が俺の腰に巻きついてきた。

「早く。早くぅ……。もう、我慢したくないよ……」

やんわりと倒れこみ、俺は覆い被さる。
俺は童貞だが、ここからどうすればいいかは同僚達と廻し読みした本で知識を得ている。
ウィルマリナの脚の付け根の間にある、濡れた秘裂。
女の子の一番大事な場
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