デュラハンさん、剣を捧ぐ。

「はるばるジパングから海を越えてきたが…良い武器は中々ねえなぁ…」
立ち寄った町の酒場で独り言を呟く男。
体躯は中々のもので、身長も頭一つ飛びでている。
赤い外套を羽織り、赤い頭巾を被っているため、混雑する酒場でも目立つ。
と、向こうで飲んでいる傭兵風の男が相方らしき男と話している。
「おい聞いたかよ、魔王軍がアリサスの街に進行するっていう噂!ありゃ本当なんだってよ!」
「ああ、俺もそこで名を上げようと思っててな。上手くいけば正規兵よ!」
ほう、こいつはいいことを聞いた。
相手が正規の魔王軍なら、いい武器持ってる奴もいるはずだ。
狙い目は…そうだな、デュラハン辺りか。
「親父、代金置いとくぜ!」
男は上機嫌そうに酒場を去っていった。
「アリサスは…そこそこ遠いな、一ヶ月ってとこか?」
地図をしまい、男は歩き出した。


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「将軍さ〜ん、私ぃ、旦那様見つけたから軍隊辞めるね〜
#9825;」
「うむ、幸せにな」
制圧した町の会館で、ワーシープからの引退届を受け取る。


「いいペットが見つかったので引退します
#9825;」
首輪とリードをつけた屈強そうな男を連れたダークエルフから引退届を受け取る。
「うむ…幸せにな」
ほら、将軍様にご挨拶は?」
「………わん」男は屈辱に震えているようだ。
「よく出来ました〜!」
スパァン!と男に鞭を入れた後、部屋を後にしていった。



二時間後、今回の町の制圧戦で伴侶を得た魔物娘達からの全ての引退届を受け取り終わる。
「団員の3割が寿引退か…」
しかし町の女性は全員魔物娘になった為、人数的にはむしろ増えたので問題ない。

戦後処理を終え、自分の寝所へ向かう。
今夜は町長の家を使うことになっている。
煉瓦作りの家はとても落ち着けるのだ。

私は小規模な町や村への侵攻を行う遊撃隊の隊長を務める誇り高きデュラハンである。
日夜魔界を広げ、魔王様の思想を実現するという名誉な仕事を任されている。
今日も一つ町を制圧した。
男性を捕らえ、新たな夫婦となって引退する魔物娘達を見るのは微笑ましい。
今夜はあちこちの寝所から朝まで嬌声が聞こえることだろう。
というかもう聞こえる。
「んおっほぉぉぉぉ!しゅごいのぉぉぉ!」
今のは恐らく昼間のダークエルフの夫の声だろう。お幸せに。

向こうでワーキャットとハーピーがこちらを見て何かヒソヒソと話している。

「おっ、長老だにゃ!今回も旦那様捕まえられなかったみたいにゃ!」
「長老?」
「そう、ずっと結婚できずに軍隊にいるから長老にゃ!」

何を言われようと全く気にしない。
そう、私は誇り高きデュラハン。
こんな事で目くじらをたてる様な狭量な器ではないのだ。





寝所へ着いた。
煉瓦作りのこの家は小さな町にしては立派だ。有難く使わせてもらおう。
鎧を脱ぐこともなく、ベッドへダイブ。
そして、私は自分の首を外し。







「ずるいよおおお!他のみんなばっかりさあああ!!」
思いの丈を、ぶちまけた。


「長老って…!確かに軍隊に長いこといるけどさぁ!そんな言い方ってあんまりだ!
あァァんまァりだァァーー!」
脚をバタつかせるとベッドがギシギシと軋む。
他の魔物娘達は今頃「旦那と」ギシギシしてるのかと思うと悲しくなってくる。

「私は結婚できないんじゃなくてしないだけだもん!
私より強い人とじゃなきゃイヤなだけだもん!」
私は誇り高きデュラハンである。
結婚するなら自分よりも強い男に剣を捧げたいのだ。
因みに剣を捧げる事は私たち騎士が主と主従関係を結ぶ際の儀式であるが、
現在はその意味が派生し、剣どころか己の全てを相手に捧げる事と同等の意味を持つ。だが幾多の死線をくぐり抜け、並みの勇者なら撃退できるほどの腕前に成長した私を倒せる強者などそうはいない。
それゆえの、叫び。
戦の後はこうしてストレスを発散せねばやってられないのだ。
その夜、私はいつもの様に泣き疲れてそのまま眠った。





一ヶ月後、私はリリム様率いる魔王軍に加わっていた。
アリサスという街への侵攻において教会との戦が始まるいうことで、勇者に抗しうる者として召集されたのだ。
正直リリム様御一人でも十分だと思うが、人間界への侵攻は魔物娘達の婚活も兼ねているので仕方ない。
陣幕の外から敵方を見ていると、動きが手に取るようにわかる。
私達が丘の上に布陣しているのに対してあちらは平地に布陣しているためだ。
どうせ平地に敷くならもっと離れるべきだろう。
どうやら敵の大将は戦の素人らしい。
今回も強者は期待できないかもな…。



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