「こちら鑑識班、昨晩の調査で休憩室にて発見した毛髪のなかに魔物の可能性が高いものがありました。しかも残留魔力の種類や量からみて2種類の種族がいたと考えられますが、種族の特定はできませんでした。あと同時に発見された緑色の極小の物体は食用の青ノリでした。」
昨夜は自室に戻ったらすぐ寝てしまった、やはりおとといの徹夜は思ったより身にこたえたらしい。
しかし昨日はリリムとバフォメット相手にずいぶん言いたいことが言えた、これも徹夜のせいでハイになっていたためだと思う。
あと例の青ノリのおかげで、魔物も間抜けぶりでは人間と大して変わらないということもよくわかった。
目が覚めて部屋を見回したが昨日の朝と異なるところは見当たらず、誰からも声を掛けられていないので、まだ誰も魔物が大学に侵入しているということに気づいていないらしい。
またなにか考えなければならないかもしれない。
となると今日も日記を読む作業ということになる。
いつもどおり食堂で朝食を取った後、出かける準備を始めたが、今日は何を持っていくかで考え込んだ。
エルゼルは魔界の王女なのだからか、基本的な教養は身につけているようだが歴史の専門知識となるとほとんど素人だった。
昨日は歴史学科の学生からみれば初歩的な質問ばかりで少々閉口したが、学生とはいえ一応は専門家なのだから質問にはちゃんと答えねばならない。
フィームズは歴史全般についてそれなりの知識があるようで初歩的な質問を連発するということはなかったが、高度な質問をしてくることはあったのですぐに答えられないことが何度かあった。
いろいろ考えて初歩的な質問に対応するために『歴史用語辞典』を持っていくことにして、高度な質問については答えられないときは、図書館の本館で調べることにする。
昨日受け取った金貨は部屋に置いておくと安心できないので、いつも使っているカバンに入れて持っていくことにした。
学生寮を出た後、いつもだったら昼ご飯用にパンあたりを買っていくのだが、あの二人が3日続けて『てっぱん亭』のお好み焼きと大判焼きと食べるかもしれないし、『てっぱん亭』でなくても持ち帰りのできる店は他にもあるのでまっすぐ図書館に向かった。
いつもの説明を受けて別館に入り、休憩室に到着したが、昨日と同じく二人はまだ来ていなかった。
「こちら追跡班201、目標101は一人で別館に入館しました、この後は予定通り別館の入り口を監視します」
「こちら監視班302、目標101は休憩室に入りました、一人です、他に同行者はいません、引き続き監視を行います」
「フィム、朝よ」
「むにゃむにゃ・・・借りた金が返せないようでは体で払ってもらおうか・・・、儂のお兄ちゃんになってもらうぞ・・・、これで儂にもやっと・・・」
「起きなさいよ」
私とフィムは大学のすぐそばにある宿に泊まっていた、この宿は部屋まで食事を持ってきてくれるのであまり他の人と顔を合わせずに済む。
部屋まで食事を持ってくる従業員に対しては、フィムが認識能力を阻害する呪いをかけているので魔物だとばれる心配はない。
この呪いは一月もすれば自然に解けて後遺症も残らないとのこと。
学生でこの宿を利用している人もいるので制服でいても目立たない。
その気になれば魔王城から大学まで転移魔法で行き来することもできるのだが、さすがにそれでは魔力の消耗が激しいので宿に泊まることにした。
「フィム、いい加減起きなさいってば」
フィムは朝の寝起きが悪くなかなか起きない、昨日はベッドから転げ落としてやっと起こしたがさんざん文句を言われたので、今朝は別の手段で起こすことにした。
最初は直接水をかけようと考えたのだが、ベッドのシーツが濡れてしまうので、タオルを水でぬらしてフィムの顔を覆うように被せた。
「・・・?ゴフッ!ゲホッ!・・・窒息させる気か!」
やっと起きたがまた文句を言われた、これがだめなら明日は顔に枕を押し付けようかしら。
二人とも起きたのでまず顔を洗って大学の制服に着替えた。
この大学の制服は魔物の特徴を隠しやすいのだが、それでもリリムの特徴である銀髪や赤い目は隠しにくい、不安に思ってフィムに以前聞いた時は『この大学には大陸各地から学生、教師、研究者が集まるので髪、肌、目の色は様々じゃから気にしなくともよい』と言われた。
大学内を歩いてみたら確かに様々な外見の人たちがいるので、私は目立つことを気にしなくてよいということが分かった。
宿の従業員が朝食を持ってきたので二人で食べて、出かける準備ができたので出発することにした。
部屋から直接転移魔法で図書館へ行ってもよかったのだが、それだと宿屋に怪しまれるので、一度玄関から出てから人気のないところで転移魔法を使った。
「こちら監視班302、休憩室に魔物が二体現れました!転移魔法の
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