反魔物国と親魔物国が国境を接するあるところで魔王軍と反魔物国の軍隊が衝突した。
戦いは攻守が何度も入れ替わり、最後までどちらが勝つか誰にも分からないほどの激戦だった。
しかし、最後の最後で魔王軍による広範囲に掛ける催眠魔法と麻痺魔法がきまって、反魔物国軍の全員を捕虜にすることに成功し、魔王軍が勝利した。
魔物娘たちにとってはこれからが本番だ、いよいよ夫探しが始まるのだ。
だが夫探しは事前にルールを決めて慎重に行う必要があった、優先順位やその判断基準をめぐって魔物娘たちが内輪もめを起こして、その隙に捕虜に逃げられてしまうということが過去に何度もあったからだ。
そこで今回は戦いが終わった時点でくじ引きにより優先順位を決めるという方法にして、魔物娘たちを招集する時にこのことを説明した。
くじ引きを戦いの前に行うことも検討はされたが、優先順位が後ろの方になった魔物娘の士気の低下や、前の方になった魔物娘が戦いの最中に後ろから攻撃される可能性があるために止めた。
くじで一番を引いたのはドラゴンだった。
ドラゴン「勇者のお主は常に最前線で戦い、どのような魔物を相手にしても決して怯まなかった、お主こそわが夫にふさわしい!」
二番目以降が続いた。
デュラハン「将軍、貴官の指揮は見事だった、ぜひ軍隊の指揮のなんたるかについてじっくりと語りあいたい」
白澤(ハクタク)「参謀のあなたがたてた作戦、霧の大陸の兵法書を読んでなければ思いつかないわね、あら、他にもいろいろ読んでいるの?一緒に時間をかけて研究しましょう」
刑部狸「兵站担当のあんさんがつけた帳簿を見せてもろうたが、計算誤りも不正もない完璧なものやな、商売の拡大には腕の良い会計担当が不可欠や」
セイレーン「その笛、陣営から聞こえたあの曲はあなたが吹いていたのね、あなたの笛に合わせて歌いたいわ」
リャナンシー「地面とか岩とかあちこちに絵を描いていたでしょ、ただの落書きだって?いや私にはわかるわ、君には才能がある、一緒に絵を描きましょう」
バフォメット「お兄ちゃんは背が高いのが良いのじゃ〜、よって一番背の高いお主をお兄ちゃんにするのじゃ〜」
ワイバーン「じゃあ私はあなたにする、え?俺みたいなチビのどこがいいんだって?あなたね『競馬の騎手とワイバーン乗りはちっこい奴に限る』ということわざを知らないの?」
デビル「男は顔じゃないってのが魔界の常識だけど、あたいは悪魔だからそんな下らない事にとらわれないのよ、一番美形のあんたにする!」
デーモン「あのデビルと同じく私も下らない常識なんか関係ないわ、キモメンが大好きだからあなたを選ぶわ、あら落ち込むことなんかないのよ、あなたほどの顔は探してもなかなか見つからないのよ」
コカトリス「あの、その、伝令兵であるあなたの足の速さはすごかったです、一緒に競走しませんか?」
キキーモラ「ぜひ私のご主人さまになってください、太っているのはどんなときもご飯がおいしいからですよね、私は料理が一番得意なんです!」
バイコーン「あなたは複数の愛人を抱えているでしょ、驚かなくてもいいのよ私にはわかるわ、それでこそ私の夫にふさわしい、みんなで仲良く暮らしましょ」
ユニコーン「ついに見つけたわ、あなた童貞でしょ!きゃあ、ごめんなさい、つい大声をだしちゃったわ、でも私にとってはあなたこそがふさわしいのよ」
魔物娘たちが夫を選ぶことにより、少しずつ捕虜の数は減ってゆき、残り三人になった。
サキュバスその1「三人ともズボンを脱ぎなさい、一緒に下着も、お、あんたが一番大きいわね、あんたにきーめた」
サキュバスその2「うちは小さいのが好みなのよ、あなたにするわ」
魔物娘の中でくじ引きでビリを引いたのは、魔王軍の将軍で、くじ引きを提案したリリムだった。
(私ってくじ運悪い方だと思っていたけどここまでとは思わなかったわ、だけど一番を引いていたらイカサマしたと絶対言われるからこれで良かったのかも、でも残り物には福があるというから気落ちせずにいくわよ)
リリムは最後の捕虜と対面した。
「あなたは…、えっと…?」
リリムには何も浮かばなかった。
突然捕虜は絶望的な叫び声を上げた。
「俺は!俺は!何のとりえもないんだ!身分どころか才能もない!長所もなければ欠点もない!個性も特徴もない!モブキャラだ!その他大勢だ!エキストラだ!通行人Cだ!ナンバーワンにもオンリーワンにもなれないんだ!」
「おおお落ちつきなさい!あなたにも良いところはあるわよ!」
「なにがあるんだよ」
「えっとね…?」
このリリムはアドリブが苦手だった。
「おしまいだ!俺はもうおしまいだ!生きていてもしょうがないんだ!」
「ちょっと、バカなまねは止めなさい!きゃああああ!」
その後、いろいろあったが
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