リリムのひみつ

『日刊魔界新報』は魔界で発行されている新聞の中では一番古い、そこの記者であるエフタという名前のラージマウスから私とスクルは取材を受けていた。
以前お父様が倒れて、魔界中に教団の勇者の仕業といううわさが広まった時には、うわさを打ち消すために新聞の取材を受けたことがあるので私は顔見知りだった。
今回の取材はスクルの歴史研究についてのことだった、スクルは取材を受けるというのは初めての経験だったので、少々たどたどしい受け答えだった、質問することには慣れていてもされることには慣れていなかった。
スクルの現在の目的であるお母様の出自探しについては、スクルには絶対に言わないように事前に釘をさしておいた、もしこのことが記事になったら、私とスクルの身が危険なだけではなく、日刊魔界新報も今までお父様しか受けたことのない究極破壊魔法『魔王の怒り』の直撃を受ける危険があるからだ。
スクルとしては記事になって、お母様の出自を知っている人から連絡があれば研究がはかどると考えていたので残念そうだったが、歴史研究者のグループを作るきっかけになればいいかと考えたので取材を受けることにした。
「スクルとの『性活』について質問されたら答えてもいい?」
「身内に話すのはいいけど、不特定多数に話すのは頼むからやめてくれ」

エフタからスクルへの質問が終わった後、スクルからエフタへの質問が始まった、日刊魔界新報が魔界で最も歴史のある新聞であるということを知ったときにスクルの歴史学者スイッチが入ったのだ。
エフタも質問することになれていても、されることには慣れていなかったようなので目を白黒させていた、年齢は私やスクルとはそんなに離れていないようなので昔のことはほとんど答えられなかった、あげくのはてにはスクルに「あなた本当に日刊魔界新報の記者なんですか?」と言われた。
「失礼な!私は間違いなく日刊魔界新報の記者です!」
「スクル!ちょっと今のは無いんじゃない?」
「大変失礼しました、どうも興奮していたようです」
エフタと私に怒られてスクルは謝罪した。
「魔界で一番古い新聞なら魔界の歴史研究には欠かせないと思いましたので」
「別にその考えは間違ってはいませんが」
エフタは謝罪を受け入れた。
「一番古いと言っても創刊されたのはお母様が魔王になった後のことでしょ?」
「その通りです、オーナーによると第一王女様のご生誕が創刊のきっかけだったそうです、このことを魔界中に知らせたいと考えたからとのことです」
「第一王女の…」
スクルは何か考えはじめた。
「ひょっとしてオーナーはずっと変わっていないの?」
「オーナーはヴァンパイアですので」
「なるほど」
ということはオーナーなら昔のことをよく知っているということだ。
「ねえスクル、オーナーに会って昔のことを聞いてみる?」
「いや、いずれ話を伺いに行くけど、別に行きたいところがたった今できた」
「どこ?」
「日刊魔界新報」
「「は?」」
私とエフタでハモった。

「創刊号から現在までの新聞が一か所にためているとなかなかの壮観ね」
私とスクルは日刊魔界新報の保管庫に来ていた、スクルは古新聞が読みたいと言い出したのだ。
「それにしてもお母様が出産した記事を探すなんてねえ」
「魔王様の出自を調べるとは別の話だけど、基礎資料として全てのリリムのリストを作りたいと前から思っていたんだ。魔王城の図書室には個々のリリムの資料はあっても、全てのリリムが載っているのは無かったから」
「それで古新聞を探して調べようと思ったわけね、でもこの方法だと名前と生年月日しか分からないわよ」
「それで十分だよ、エルゼルだって会ったことが無い、名前を聞いたこともない姉妹は結構いるんだろう?」
以前魔王城に大勢の姉妹が来たことがあったが、それでも全体からみれば一部に過ぎなかった。
お母様とお父様はリリムが何人いるのか分かるのだろうか?そして、全員の顔と名前を覚えているのだろうか?
「それに魔界では誕生日を祝うという習慣があまり一般的ではないようだから、生年月日が分かるのも重要だ。人間界なら現役の国王や、初代国王の誕生日がその国の祝日なのは当たり前なのに、魔界の暦には魔王様の誕生記念日が無いんだから」
「誕生日を祝うのなら自分が今何歳かということが周りに知られるからね、自分が今いくつかは絶対の秘密という魔物娘はお母様だけでは無いわ。前に結婚してから年齢が夫にばれて喧嘩になった話はしたけど、付き合っている時に本当の年齢がばれてドン引きされて破局になったという話も結構あるのよ」
特にバフォメットや魔女、アリスといった見た目がロリな魔物娘には良くあることだ、外見が幼いからまだ大丈夫と思っているとロリコンの中にわりといる『外見より実年齢重視、ロリババアは絶対お断り派』という思わぬ罠に
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