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借金の話だけでもラービストさんのお父様への恨みは相当なものだということがよくわかった、普通死後の恨みなんて時がたつほど薄れていくものなのに借金は時がたつほど増えていくものだから。
まあこれもお父様がラービストさんの死後ものうのうと生きているからだけど、憎まれっ子世にはばかるとはこの事かしら?
・・・私本当にお父様の娘なのかしら・・・。
ラービストさんはともかく他の人はどうだったのかな?
「ねえスクル、他の人はお父様のことをどう思っていたの?」
私の質問にお父様がビクッと反応した、たぶん今まで主神や教団を裏切ったことを全く後悔していなかったのだろうけど今日一日でずいぶん弱気になったようだ。
「他の人の私的な記録ではあまり非難するような内容はないね」
「え、そうなの?」
「『女好きで有名なあいつをサキュバスの魔王のところへ行かせればああなることは火を見るより明らかだ、あいつを選んだのはラービストの判断ミスだ』と書かれた日記があるけど、ラービスト大司教以外はだいたいそういう考えだったようだね、中には『今頃は魔王といちゃいちゃしているに違いない、ああ妬ましい、爆発しろ』なんていうのもあるよ」
今度はお母様が『女好きで有名な〜』のところでピクリと反応した、「サキュバスではなく本当はラミアなのではないか」「いや正体は白蛇だ」と噂されるほど嫉妬深いところがあるお母様にとっては自分と出会う前のお父様の女性関係は気になるのだろう、その反面現金なところもあり『今頃は魔王と〜』のところでにこにこしていた、どうやら機嫌を損ねずにすんだようだ。
「あれ、でもさっきお父様の裏切りを事前に予測するのは不可能に近いから、ラービストさんは公式的には罰せられなかったって言わなかった?」
「みんなうすうすと予想していたけど口には誰も出さなかったんだ、ラービスト大司教だけはそう考えていなかったらしい、さすがにそれで罰するのは気の毒だということになったらしいね」
ラービストさんはお父様のことをとても信頼していたのね、お気の毒に。
考えてみれば教団にいたときのお父様は高名な勇者だったのだからさぞや女性にもてただろう、本人は言いたがらないだろうから後でスクルに聞いてみよう、うまくいけば後日お父様をゆするネタに使えそうだ、けけけけけ。
「それなら公的な記録はどうなっているの?」
「『史上最悪の裏切り者』『恩知らずの恥知らず』『べちゃぼんてん』『うんつく』『もけけぴろぴろ』といった悪口が並んでいるよ」
「後ろの方の言葉はどういう意味?」
「悪口だということはわかるけど具体的な意味はわからない」
「フィムは知っている?」
「うむ、どこかで聞いたことがあるようなないような・・・」
「お母様とお父様は?」
「私は知らないわ」
「他はいいとして『べちゃぼんてん』はいくらなんでもないだろ・・・」
なにらやぶつぶつこぼしていた、私の声は聞こえていないようだ。
公的な記録では非難されるのは当然として、私的な記録ではあまり非難されていないというのは驚きだった、ただ人望のおかげというよりはそれくらいのことはやりかねない奴と思われていたからなようだ、どちらかというと悪名のおかげだ。
こうなると今度は現在の評判が知りたくなってきた。
スクルに聞いてみたところお母様とお父様は不安そうな顔になったが、なあに知ったことか。
「教団の正史では『決して許されない大悪人』なんて書いてあるけど、一般的なところでは必ずしもそうでないよ」
「ふーん」
これ又意外な話だ。
「伝説、民話、演劇、音楽、詩、小説、笑い話、いろんなところで題材にされていて、悪役もあれば正義の味方もある、まあ正義の味方は教団にいたころの話がほとんどだけど」
「笑い話というのはどういうの、ぜひ聞かせて」
後でみんなに教えよう。
「ちょっと本人の目の前で言えるようなものではないから・・・」
「じゃあ後で二人きりになったら教えて」
お父様は嫌そうな顔をした。
「ぜひ儂にも教えてくれ」
フィムが割り込んできた、私とフィムは笑いのつぼがよく合うのでさぞ盛り上がるだろう。
「そのほかで有名なのはどんなのがあるの?」
「エルにもわかりやすく言うならバシリューの書いた小説があるよ、読んだことは・・・無いみたいだね」
「無いわ」
ここでバシリューの名前が出てくるとは思わなかった、でも歴史小説家なのだからお父様の小説を書いていてもおかしくはない。
「もしかしてバシリューがラービスト日記を読んだのは!?」
「時期から言ってその小説を書くためだろうね」
バシリューがお父様の小説を書くためラービスト日記を読んだ、そのために私とスクルが出会うことになった、縁は異なもの味なものとはよく言ったものだ。
「どういう話なの」
「それまでは善悪いずれにしろ超人的に描かれることの多
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