変わった・・・、確かに大事な奥さんと子供を殺された、いや殺させられたならのなら変わるのかもしれない。
それにしても昔はずいぶんとひどいことをする魔物もいたもんだ、そんな話聞いたこともなかった・・・、ん?ひょっとして?
「幾人かのお姉様が『お母様とお父様に旧魔王時代の人間との戦いの話を聞こうとしたが教えてくれなかった』とおっしゃっていましたが、もしかしてラービストさんのような話ばかりだからですか?」
私の質問にお母様が答えてくれた。
「そうよ、昔の魔物のなかには人間を殺すだけでなく、いたぶったり苦しめたりすることが得意な種族もいたのよ。聞いてしまうと、自分が魔物であることに罪悪感を覚えてしまうような話も多いわ。あなたの姉さんの中にはデルエラに負けないくらいの過激派だったのに、私やこの人から昔の話を詳しく聞いて、すっかりおとなしくなってしまった子もいるのよ」
なにそれこわい、そうなるとデルエラお姉さまは昔の話には興味が無い方なのかな?
あるいは自分が生まれる前のことなんか知ったこっちゃあない、という考えなのかも。
私は別に過激派ではないけど、そういう話を聞いてしまったらどうなるんだろう?
「おーい、そろそろ話を戻していいか」
考え込んでいたら、お父様に声をかけられた。
「ごめんなさい、話を戻してください」
「前にも言ったがラービストは理性的で感情を表に出さないから、見た目は変わったように見えなかったんだが、あいつの立てる作戦が明らかに変わった」
「どういう風に変わったのですかな?」
作戦と聞いてフィムは興味が出てきたようだった。
「それまで俺は魔物と戦うというのは、魔物の戦闘部隊と戦って勝つというふうにしか考えていなかった、いや俺だけでなく教団のほとんどもそうとしか考えていなかった。あいつは戦闘部隊と戦うのはなるべく避けて、魔物の本拠地をねらうという作戦を立てることが多くなった」
「ですが夫様、相手の主力を避けて砦や城といった拠点を狙うのは戦の常道ではないのですか?」
「いや、魔物の本拠地とはそういう意味じゃない、種族によって異なるが、その種族の戦闘に参加しない連中が日常生活を送っている場所、分かりやすく言えば繁殖する場所だ。獣系の魔物なら『まず子供をねらえ、そうすれば雌が出てくる、雌の中では孕んでいるのを優先して殺せ、その後子供を殺せ、引き揚げる際には餌場を焼き払うのを忘れるな』というのが基本的な指示だった」
それを聞いたお母様はつらそうな顔をして、フィムは少し驚いたような顔をした。
スクルはお父様の話すことをひたすら記録していた。
それって虐殺ってことじゃあ・・・。
私の表情を見てお父様は私の言いたいことが分かったようだ。
「俺や教団の中にもそれはちょっとやりすぎじゃないか?という意見もあったんだが、あいつは魔物のやっていることを真似しているだけし、魔物を滅ぼすには一見遠回りだがこれが確実なやり方だと言って取り付く島もなかった」
「当時は、魔物は戦闘員、非戦闘員の区別なんて付けずに人間を襲っていましたからなあ。ある意味、今でも変わってはいませんが」
フィムの冗談に誰も反応しなかった、フィムは少し傷ついたような顔をした。
「それでも俺は食い下がったんだが、『自分の両親や祖父母、兄弟姉妹は誰も魔物を傷付けたことがないのに魔物に殺されたんだぞ』と言われるとそれ以上何も言えなかった、あいつは故郷の村を魔物に襲われて一人だけ生き残って、魔物への復讐のために教団に入ったんだ。当時は教団にはそういう奴が多かった」
なんだかラービストさんの方に味方したくなってきた。
「他に、特に仲間意識の強い種族を相手にするときの作戦として、生け捕りにした一匹を逃げることができないくらいに半殺しにして見晴らしのいい場所に放置するというのを考案した」
「それでどうするのですかな」
「助けようと近づいてくる仲間を弓矢や遠距離魔法で狙い撃ちにするやり方だ、これは最初の生け捕りに成功すれば実に効率のいい作戦だった」
「狙われる側としてはずいぶんといやな作戦ですな、だが効果的なのは確かですのじゃ」
「そのほかアンデッド対策として、死体は火葬する、ということも推し進めようとした。こちらは教団の信仰の問題もあるからうまくはいかなかったが、疫病の流行を防ぐためという名目で進めていたな」
「たしか反魔物国家の一部でも火葬しているところがあるはずじゃな、ラービスト殿の努力も無駄では無かったらしいのお」
ラービストさんはなかなか頭のいい方だったようだ、だけどお父様が敵に回したくない相手と言うほどのことなのかなあ?
「ですが夫様、いずれのやり方も今の魔王様に代替わりしてすべての魔物にサキュバスの魔力が含まれているようになってからは、必ずしも有効なやり方とは限りませんぞ。夫様が魔王様
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