俺の名前は神楽坂 桜(かぐらざか さくら)大学2回生だ。見てのとおり名前が女の子ぽいが、正真正銘の男だ。俺の家は海の近くで、いつもレポートが詰まると夜の砂浜でよく散歩をする。その日は、あまりにもレポートが進まず行き詰まりサンダルを履きいつも通り砂浜を目指し歩いていった。
夜の砂浜は昼と違う。まず、人だ。昼は家族連れやカップル達がうじゃうじゃいるが、夜は人がいない。代りに静寂があり、聞こえるのは波の音だけだ。そして、綺麗な月だ。特に、この日の月はとても綺麗だ。まるで、誰かを誘うかの如くあでやかな青色であった。
予想通り人は居ない・・・・。砂浜についた俺は、一歩一歩サンダルで歩く。砂がゆっくりと足を包み込んでいく。俺は、それに気にとめず歩いていく。
お気に入りの散歩コースを歩いていると、遠くの方で白い服を着ている女性がポツリと立っていた。よく見ると、白い帽子も被っていた。
普段なら、無視して別のコースを歩くがその時俺は、その女性に興味があった。そして、その女性に声をかけた。
「こ・・・こんばんわ」恐る恐る女性に声をかける。
「こんばんわ」女性は静かに挨拶を交わした。その声はまるで聞いたことのないような美しい声で、一瞬意識がなくなった。だが、何とか意識を保ち次の言葉を女性にかけた。
「この時間にお1人ですか?危ないですよ?」
「いえ、私は平気です。それよりも危ないのはあなたじゃないですか?こんな時間に歩いていると魔物に食べられちゃいますよ・・」帽子を被っており顔はわからないが多分、清楚な方なのであろう。やんわりと俺に注意をしてくれた。その時、胸が高鳴った。
ドキッ!!
「いえ、俺は何故か昔から魔物に襲われないですよ・・・」そう。俺は、例え1人で山に登ろうが海に行こうが草原に行こうが絶対魔物に襲われないのだ。
「そうなんですか・・・不思議な事もあるのですね」やはり、帽子を被っており顔の表情が分からないが笑っているのであろう。そしてまた胸が高鳴った。さっきよりも大きな高鳴りで・・・。
ドキッ!!!!
ヤバイ!!この女性の顔が見たい・・・。なんだ、この感情は・・・・・抑えられない・・・。
「あ・・あの。いきなりで申し訳ありませんが・・・お顔を見せてもらいませんか?」
「なぜです?」
「それは・・・あなたの顔が見たいんです!!」赤面しながら言う桜。
「いいですよ」そう言うと彼女は静かに帽子を取り桜に素顔を見せた。
彼女はとても、綺麗だった。色は白く長い髪の毛が海風に吹かれて靡いていた。
「美しい・・・・」心のなかで言うつもりが口に出てしまった。彼女は、クスクスと笑いながら「正直な人ね」と言った。
「え・・・いや・・・・その・・・・・」桜の口がしどろもどろになった。
「いいんですよ。あたしも男の人と話すのは初めてで・・・」恥ずかしながら言う女性。
「そうなんですか?俺はてっきり喋りなれてるのかと・・」驚いたように言う桜。
「あんまりなんです。それよりも人とあんまり喋りませんし・・・」俯いて言う女性。
「そうなんですか・・・そしたら、友達も・・・」
「はい。あんまりいません」そう言うと女性は目から一粒の涙が出た。
桜は、思い切って言おうかと思ったが喉の奥で止まった。それは、ただ単純であり誰もが言えることであるが、どうしても言えなかった。それを言えばもう彼女に会えないのではないかと・・・・
「どうかしましたか?恐い顔して」
「いえ・・・・あの・・・よろしければ俺と友達になりませんか?」
「え!?」女性は驚いた。今日始めて会ったのに「友達になりませんかと」言われた。
「すいません。今日、初めて会ったのに・・・・だめですよね」
「はい。こんなあたしでよかったら喜んで」女性は、微笑んだ。
「本当ですか!!」桜は喜んだ。なんせ、初めて女性の友達ができたのだから。
「あ!!俺の名前は神楽坂 桜(かぐらざか さくら)て言います」
「あたしは、海野 零(うみの れい)よろしくね桜君」零が手を出し桜に握手を求めた。
「はい。こちらこそ零さん」
まだ、この時桜は知らなかった。零との出会いが自分の運命を大きく帰ることになるなんて・・・・。
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