空は真っ青で雲がひとつもない綺麗な空だ。海沿いに家があるため、よくカモメが飛んできて餌をねだってくる。母がねだってきたカモメにパンの耳を与えていた。その光景を二階の窓から静かに見ながら桜は今日の夜のことを考えていた。友達宣言をしたあの夜、桜と零はいつ会うかの約束をしていた。
「あたしは、あんまり此処には来れないから次の月の満月の日にまた此処で会いましょう」そう言うと、零は暗闇の中に消えていった。彼女を見届けると桜も自分の家に戻っていったのだ。
それっきり桜は彼女とは会っていない。始めは、時が遅く感じた。何せ1ヶ月近く会えないのだから。それでも、桜は待った。レポートをやり大学の試験もして1ヶ月という長い時間を埋めていったのだ。そして、今日がその日なのだ。チラッと時計を見る桜。
「さっき見たときは、15時40分。今は15時41分・・・・・・全然進んでいないな」そう言うと、窓から離れてベットの上でゴロンと大の字になり寝そべった。
「まだ時間じゃないし、少し寝るか・・・・」そのまま、桜は静かに目を閉じ夢の中に入っていった。
桜が目を開けたのは海の中であった。色とりどりの魚達や会話しながら泳ぐイルカ達。だが遠くの方で、すごいスピードで、泳ぐ人魚がいた。手には四角い何かを持っていた。その人魚を良く見るとどこかで見たことのある顔であった。
「零さん?」
「!!・・・・・・」桜が零そっくりの人魚を見た瞬間、桜はベットから落ちてしまった。
「いてて・・・・今何時だ?」桜が時計を見ていると20時12分となっていた。
「しまった!!約束の時間に遅れる!!」そう言うと、桜は急いで自分の部屋から出て階段を駆け下り、サンダルを履き砂浜へと向かった。
あたりは真っ暗になっていた。明かりがあるのはポツポツとある蛍光灯だけであった。後は、車のヘッドライトぐらいであろう。遠くの方でちらほらと明かりが付いていた。
「はぁはぁ・・・ごめん。遅れちゃった」桜は息切れと共に手を合わせ零に謝る。だが、零は気にせず首を横に振った。
「ううん。あたしも今来たところだから気にしないで・・」そう零が言うと桜は顔を上げた。零は、青色のワンピースを着て髪の毛には綺麗に象られた珊瑚の髪飾りをしていた。少しばかり、髪の毛が濡れているような感じがした。
「良かった・・・・そうだ!!」桜は、そう零に言われて少し落ち着いて一呼吸おき、ジーパンのポケットに手をやった。
「これ、遊園地のチケットなんだけどどうかな?」桜の手には二枚のチケットが握られていた。その遊園地は最近できた物で海に隣接しているため海の魔物達も働いている画期的な遊園地である。
「このチケットをあたしに・・・・」受け取ったチケットをまじまじと見た零。
「嬉しい。ありがとう!!」満面の笑みでお礼を言う零。少しばかりか、零の目からは涙が出ていた。
「どうしたの?俺なんか変なこと・・・」零が涙を流したので戸惑う桜。
「ううん。違うのあたし、今まで貰った事ないから嬉しくてつい・・」涙を拭う零。
「だったら、俺と一緒に行かない?」不意に桜の口から出た言葉。零は少し驚いた様子だったが笑顔で「はい」と言った。
「そしたら、来週の日曜日に行かない?急だけどいいかな?」頭を掻きながら言う桜。
「来週の日曜日ですね・・・わかりました」少し難しそうな顔をしたがすぐに明るくなり答えた。
「じゃあ、あそこにあるバス停の前で待っとくね」零が指を差したところに街頭の下にあるバス停を指差した。
「分かった。そしたら、楽しみにしててね」
そして、二人は別れた。来週の日曜日に会う約束をして・・・・・・
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