第七話 毛糸物語

 
 凍えるような冷たい風。それでも、保育園の庭で元気に遊ぶ子ども達。その様子を、建物の中からそっと見つめる一人の女の子・・・・。

 「はぁ〜〜」大きなため息をつくダークマターのマリちゃん。

 「いやだな〜お外・・・・・寒いし、手は動かないし・・・・」真赤になった手を見つめるマリちゃん。

 「どうしたの、マリちゃん?」プルプルと体が振るえているマリちゃんの様子を見て、心配そうに言うジョロウグモの百合ちゃん。

 「あ・・・姫ちゃん・・・・・お外が寒くて遊べないの・・・・」

 「寒いの?そしたら、あたしのマフラー貸してあげる!!」そう言うと百合ちゃんは、自分の首の所に巻いてあったマフラーをマリちゃんの首に掛けてあげた。

 「ありがとう。百合ちゃん!!とても暖かいよ」もふもふとした雲みたいなマフラーに顔を埋めるマリちゃん。

 「うん。あのね、そのマフラー私が作ったんだ」

 「これ、百合ちゃんが作ったの?スゴーイ!!!」

 「えへへ・・・・恥かしい」ほっぺたが赤くなり自分の繭の中に入ってしまった百合ちゃん。

 「百合ちゃん!!明日、作り方教えて!!!私も、マフラー作りたい!!」目をキラキラしながら百合ちゃんに言うマリちゃん。

 「本当?」繭の中からこっそり顔を出す百合ちゃん。まだ顔が赤いのか花の先がまだ赤かった。

 「うん!!だって、百合ちゃんすごいもん!!私もこんな、暖かい物いっぱい作りたいもん!!」

 「じゃあ、明日から頑張って作ろうね。マリちゃん」繭の中から出てきてマリちゃんの冷たい手を握る百合ちゃん。その手は、どんな暖かい物よりもとても優しくて暖かい手だった。

 次の日から、二人は編み物をし始めた。器用に毛糸の帽子を編んでいく百合ちゃん。その様子を見ながら、同じように毛糸の帽子を編んでいく。見様見真似で作った帽子は、初めて作ったとは思えないほどとても綺麗に編んでいた。

 「すごいね。マリちゃん」驚く百合ちゃん。その帽子は、オレンジと赤色の縞模様が入った毛糸の帽子だった。

 「百合ちゃんだって、すごいよ!!とても、暖かそう」マリちゃんは、百合ちゃんが作った帽子を見て言った。その帽子は、白い綿帽子で周りには小さな白い綿がついており、その周りには雪の形をしたアップリケが装飾されていた。

 「でも・・・・いっぱい作っちゃったね・・・・」

 「うん・・・・どうしよう・・・・」二人はあまりにも夢中になりすぎて、多くのマフラーや毛糸の帽子を作ってしまった。

 「う〜〜ん・・・この、帽子はパパとママにあげるんだけど・・・・他の帽子とマフラーどうしよう?」マリちゃんの腕には、パパとママにあげるマフラーと帽子を持っている。百合ちゃんの腕には、腹巻きと帽子を持っていた。

 「そうだ!!!あのね、百合ちゃん・・・・・」

 「うん!!いい考えかも!!」

 「よ〜し!!そしたら、がんばろう!!!」

 「おぉ〜〜!!」二人は、こそこそして何かを作り始めた。

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             〜とある部屋〜

 この部屋には、多くの書物が詰まれていた。官能系から童話まで壁にはづらりと置かれていた。その、奥の部屋で、パソコンと正面から向き合う一人の男性。

 「ふぅ〜これでよしと!!!」男は、何かを書いていた。

 「いや〜。最近全然更新してなかったしやばかったな」大きく背伸びをしたら後ろから、何かが抱きついた。

 「こんばんは!!!」

 「うお!!!」いきなり背中に乗ってきたからなんだろう?と後ろを振り返ったら・・・・

 「え!!!マリちゃん!?百合ちゃん!?」そこにいたのは、赤い服を来たマリちゃんと百合ちゃんだった。

 「ふ・・・・二人ともどうやってこんな所まで?」

 「「それは、ひ・み・つ」」二人は同時に言った。そして、俺に緑色の袋を渡した。
 
 「これは・・・・」

 「あたし達からのお礼です!!」元気な声で言うマリちゃん。

 「あの・・・がんばって・・・ください」恥かしそうに言う百合ちゃん。

 「ありがとう。二人とも」男は二人の頭をなでていった。

 「そしたら、マリ達は他の所にも行ってくるから。いってきま〜す」そう言って、窓から飛び出していく二人。その様子を見ながら再びパソコンを開き何かを打ち始めた。男の横には、青空保育園の園児の名前や家族。そして、自警団の名前が書かれたメモが置いてあった。
10/12/05 23:48更新 / pi-sann
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