第19話 一人の領主と記憶を失った少年

 
 降りしきる豪雨の中一組の親子が増水した川の中に落ち、母親らしき人は子どもの手を強く握っていた。

 「カルア!!!!手を離さないで!!お母さんが助けるから」叫びながら子どもの手を握る母親だが、母親を支えていた木が今にも折れそうになっていた。

 「母さん・・・・・母さんの子でよかったよ・・・本当の子どもじゃないのに・・・・・嬉しかった」

 「!!!何言ってるの、弱気にならないで!!!絶対助けるから!!!」そう励ましているが、手に力がなくなってきていた。

 「母さん・・・ありがとう・・・今まで育ててくれて」そう言うと子どもは母親の手を離し濁流へと消えていった。

 「嫌〜〜〜〜!!!カルアだめ!!!!カルア!!!カルア!!!!!!」母親の叫びは濁流の音と共に聞こえなくなっていた。

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               「バフォ様の寝室」
       
 「カルア・・・・・カルア・・・・・駄目!!!いかないで!!!」

 「フォ・・・・・・バ・・・・・・・フォ・・・・バフォ・・・・様・・・バフォ様しっかり!!!」目覚めたら、そこは濁流もない、雨に打たれることもない暖かい寝室だったそして、そこにいたのは付き人のミキシーだった。

 「夢か・・・・」この季節になると、いつもこの夢を見る。自分がまだここに来る前のことを・・・・・・

 「バフォ様。またあの夢ですね・・・・・」グラスに水を入れるミキシー

 「そうじゃ・・・・わしが、まだ人間界にいたときじゃ・・・」窓の外を見るバフォ様その表情は暗く悲しかった。

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               〜八年前〜

 私は、人間界の様子を探るべく幼稚園の先生として暮らしていた。だが、そんなある日ワシは一人の少年と出会う。

 「カルア君先生と遊ぼう?」彼の名はカルア、親から酷い虐待を受けた。体には無数のアザ、切り傷、そして・・・・・・・・・・・
 
 「むごい・・・・・・・・・・・」誰もが驚いた左わき腹のの大きなやけど、皮膚はただれ、膿が出来ておりそこからは異臭が漂っていた。最先端の治療で一命は取り留めたが、やけどの跡は残るみたいだ。実の親からの虐待を受けていたので、心の傷は深かった。

 「カルア君・・・・」どんなに話し掛けても、優しくしても心を閉ざしたままであった。

 「ミーラ先生・・・・すいませんがカルア君のことお願いします」ちょうど、大掃除の時じゃった。いつものように、孤児院から、カルア君が来て隅のほうで座っていた。その頃のワシは、自分に魔法をかけて魔力を抑えている状態で生活してた。まぁ〜人の心を読めるからいいんじゃが・・・・・・・・・

 「カルア君・・・・・深い傷があるみたいね」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「先生、人の気持ちわかるんだ」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「今何考えてるか当てよっか」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「誰も信じられない・・・信じない・・・・二度と・・・もう・・・死にたい」

 「!!!!!!!!!!!」驚いた様子で見るカルア君

 「すごいでしょ。喋れなかったら、心の中で思ってね」

                こくんっ
                
               頷くカルア君

      それからだった・・・カルア君と話すようになったのは。

      1年が経ち、春が来て新しい子ども達が来る時期だった。

 「お母さん、今日から僕小学生になるんだね♪♪♪」

 「そうよ、カルアしっかりと服着て・・・・・あっ口元にご飯ついてるわよ」

 あれからカルア君は、友達とも喋れるようになり、傷もだいぶ癒えてきていた。そして・・・・ワシの大切な息子になっていたのだ。カルアと一緒に幼稚園生活をしていたら、ワシにとって大切な存在となっていた。そして、クリスマスの日、ワシはカルアを養子として向かえた。

 「お母さんいってくるね〜〜〜〜〜!!!!」

 「気を付けていってくるのよ〜〜〜〜」

 元気に家を飛び出すカルア・・・・・この幸せな日常がいつまでも続くと思った。でも続かなかった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 あの日、天気もよく一緒に山登りをしていた。その時は、まだ晴れていた。だが、山の天気は変わりやすく、いきなりの豪雨に見舞われた。

 (いかんな・・・このままでは)山を降りていた時、下の川が増水しており、また、足場が不安定になっていた。

 「カルア、足元が危ないから気を付けて」そう
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