『くそっ!!』
巣に戻りながら私は悪態をつく。
今日はようやく見つけたツガイに致命傷を負わされ、巣に撤退するという、最高に不様な結末となった。
ジパングから来たあの男…。
名はないと言うから勝手に字無と私は呼んでいた。
私に唯一傷を負わせ、ツガイにしたいと思った生涯唯一の男…。
絶対に逃がすつもりは無い…。
もう少しで奴の全てを奪う事が出来たものを――、
『あの憎き神剣めぇえええっ!!』
怒轟のような叫び声を上げ、尾を床に叩きつける。
硬い石で出来た床は簡単に砕けちった。
字無よ――、
何故、お前は私のものにならない?
何故、お前は永遠の命を欲さない?
何故、お前は私を憎む?
何故、お前は私の愛を拒む?
こんなにも想い焦がれているというのに…。
嗚呼、何故なのだ?
お前も私と同じで独りきりなのだろう?
ならば孤独がどんなに辛い事かわかるはずだ…。
お前の心がわかる相手は私だけだというのに、何故拒むのだ。
そうか…。気恥ずかしくて照れているのだな?
だから、私を拒むのだろう?
本当は何時までも私に求めて欲しいのだろう?
だから、そこまでして私から“離れたがる振り”をするわけだ。
だが、もう私は耐えられない。
今すぐにでもお前で愛欲を満たしたいのだ。
この欲情にまみれた心を満たせるのはお前だけだというのに――、
嗚呼、ああああああああぁあっ、
字無、字無、字無、字無、字無、字無、字無、字無、字無、
字無、字無、字無、
『あざなぁああああああっ!!』
誰も居ない城の中で、奴の名を叫ぶ。
神剣に付けられた傷は完璧に回復したが、右瞼につけられた傷は癒える事無く痛み続ける。
許さぬ、赦さぬぞ。
絶対に赦さぬぞ。
そうだ、何故今まで気づかなかったのだろう。
そこまで、奴が恋しいのなら一生離れられない状況に陥れれば良かったのだ。
城に監禁なんて甘い事をするから、簡単に逃げられてしまうのだ…。
『そうだ、此処に監禁すればいい…』
私は自分の下腹部を見つめながらそう答える。
そう、私の子宮の中に――、
何重もの舌と襞で満たされたこの中で奴を拘束すれば逃れる事は皆無、永遠に快楽に浸りながら共に居られるのだ。
魔力で奴の身体を小さくして、ゆっくりと膣肉で貪りながら子宮に監禁する。
嗚呼…考えただけでも涎が落ちそうだ…。
永遠に私の中で飼い続けてやる。
まずは、あの剣を壊さねばな…。
私は股を濡らしながら、瞼の傷を撫でて一人策を練った。
『必ず奪ってくれる。楽しみにしていろ…字無』
終
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