後編

『字無あぁああっ!!』


黒龍が怒りに満ちた赤い瞳を向けて俺を呼ぶ。


その砲孔が辺り一面に響き渡り、大気をも揺らした。



「なるほど、黒龍のツガイか…。どうりで…」


視界の端で、二人の六騎士が撤退しようとする様が見えた。

「今回は引こう、名も無き侍よ。だが…いずれ天乃叢雲剣は回収させて貰うぞ」


軽々と瀕死のマイトを担ぎ上げて、捨て台詞を吐くと、六騎士ウィルは暗闇の中へと姿を消した。


最悪な事に、ニーズヘッグの意識は此方に集中しているらしく、全くウィル達に反応を示さない。


『ゴミ共は姿を消したか…丁度いい…。これから、お前を躾るのに邪魔だったところだ…』


それどころか、彼女は狂気に淀んだ美しい顔で微笑む。


「躾るだと…出来るか?お前に…」


精一杯の虚勢とは裏腹に絶望という文字が頭の中をよぎる。

後一歩で天野叢雲剣が手に入るというのに、最悪のタイミングであった。


何か手は無いか…。

龍の力はこの黒龍の前では全く意味を成さないだろう…。


何故ならば、ニーズヘッグが姿を表した途端に俺の龍化は解かれ、左腕は元に戻っていたからだ…。


頭の中で策を練るが、この絶望的な状況では何も思い浮かばない。


そうこうしているうちに、黒龍がゆっくりと此方に近づいてくる。


『強がるな…。絶望しているのだろう?その様子を見ればすぐにわかるわ…。
眼、呼吸、動悸…全てがお前の身体に訴えている。
――私が恐いとな…』


ぞくりっ――、


黒龍の言葉に背筋が凍りつく。


全て彼女はわかっていた。


俺の心の内までも…。


『この数カ月…。私は気が狂いそうだった。この傷を付けたお前を想い――、ひたすら彷徨い…探し続けた…』


右瞼に刻まれた刀傷を指でなぞりながら、彼女は話を続ける。


『なぁ…何故私の元から逃げた?あれだけ愛でてやったというのに…』


ゆっくり、ゆっくりと――、


『私の“中”は心地良かっただろう?
私の“愛”は美しかっただろう?
私の“心”は優しかっただろう?』


目の前まで来て歩みを止める。


俺はその重圧に耐えられず、全身から汗を流して震えていた。


ガチガチと歯を鳴らしながら、睨み付けるのが精一杯だ。


『なのに何故私から逃げた!?字無っ!!』


「っ!?」


首を掴まれ身体を宙に上げられる。


『足りないのか!?、私の愛がっ!
、優しさがっ!
、想いがっ!』

ばきりっ!

べきりっ!

ごつりっ!


硬い漆黒の尾が何度も俺の身体に放たれる。


俺は気が遠くなるような痛みと苦しみに、顔を歪めずにはいられなかった。


『答えろっ!!字無っ!!』


そして身体を床に叩きつけられる。


酷い打音が回廊に木霊した。


「ぐっ…あ…」


不死身と言ってもダメージはある。


俺は死ねない身体を恨みつつも、ひたすらニーズヘッグを睨みつけてこう言った。

「貴様の…愛などいらん。俺が望むのは…静寂なる安息のみだ…」


『あくまで私を拒むというのだな?』


「ああ…糞喰らえ」


『っ!!ならば――』


鋭き眼光が赤く光る。


「!?」


『満たして貰うだけだ…。私の“欲求”をなぁっ!!』

身動きが取れない俺の身体に黒龍がのしかかり、その右腕を振り上げた。


ざしゅりっ!


肉を裂く音が鼓膜に響くと同時に右瞼に
激しい痛みが走る。


「ぐっ…ああああぁああっ!!」


俺の視界が、半分赤く染まっていた。


『フフフッ…失明はしない様に加減した。これで私とお揃いだな…』


痛みに悶える俺に、黒龍は恍惚とした笑みを浮かべて答える。


『はぁああっ。待ったぞぉ…。狂おしいほどに…』


べろぉっ…。


「っ!?」


そして、その艶めかしく長い舌が俺の傷口をなぞった。


『嗚呼、もう待てぬわ…。んむっ…』


「んぐっ!ん…」


くちゅっ…ちゅぱっ…くちゅっ!


やがて、傷口から出血が止まった事を確認すると、麗しく貪欲な唇で、舌で、俺の口内を犯し始める。


『ぷはぁっ…こんなものは邪魔だ…』


そして、乱暴に衣服を脱がすと、自身が身に纏っている甲殻を隠し、浅黒い肌を剥き出しにした。


『さぁ、奉仕しろ。私に精を差し出せ…』


びちゃっ!!


すでに愛液でまみれていた秘部を、無理矢理俺の顔面に落とし、擦り付けるように這わせる。


そして否が応でも硬くなった俺の逸物に舌を這わせ始めた。


「やめっ!んぐ…んぶっ!」


抵抗しようにも凄まじい力で顔に秘部を擦り付けられ、発言すらままならない。

『嗚呼…
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