現在地-スーダン-闘技場控え室
「怪我は無いかアノン?」
「そんな軟な体してるつもりはないさ」
控え室でアノンの体を見るが、どうやら怪我はしていない様だ。
「そいつは良かった、じゃあ俺はもうすぐ決勝だから準備してくる」
「相手はポムか…もしくはあのリザードマンのどっちかだね」
そう、Bブロック準決勝はポム対一回戦でキャノを打ち倒したあのリザードマンとなった。
これで勝った方が俺と戦う事になる。
そして扉の前に立った所で思いっきり扉が開かれて取っ手を掴み損ねる。
「大変ですよお兄さ〜ん」
「さーん!」
扉の向こうにいたのはそろそろ試合が始まる筈のポムと付き添いのキャノだった。
心なしか二人とも顔色が悪い。
「どうした二人とも、そんな血相を変えて」
聞くと、ポムは手に持っていた紙を俺に差し出してきた。
そこにはこう書かれていた。
「ようセン、闘技大会頑張ってるじゃねえか?
そんな事よりお前に言っておきたい事がある…
お前の連れの赤髪のゴブリンと片角のゴブリンは預かった…返して欲しきゃ先ずはお仲間のホブゴブリンを大会から棄権させろ。
次に、決勝では一切攻勢に転じるな、相手とのお喋りも禁止だ。
因みにお前の棄権も認めねえ。
しっかり見張ってるから破った時はすぐに分かる…もし破った時はゴブリン達がどうなるか分からないぜ?
それじゃあしっかりな?
カルマ・アルディエンデ」
俺は紙をグシャリと握りつぶした。
「これってセン…アンタが昨日言ってた…」
アノンも俺の後ろから覗き込んで手紙を見たようで、その声には怒りが混じっている。
「ああ…カルマァ…唯じゃおかねえぞ」
ギリッと歯軋りをするが、どうすればいい…せめて攫われたパノとウトの居場所が分かればいいんだが…。
「あれ?そんな怖い顔してどうしたの?」
廊下の方から声が聞こえたのでそっちを見ると、そこには此方を不思議そうな顔で見るティピがいた。
「パノとウトが攫われた…あのカルマにな」
怒りを込めた声で言うと、ティピは少し怯みながらも前に出た。
「ま、まさかこの前の件の逆恨み…?」
「ああ、多分な」
「どうしよう〜、もうすぐ準決勝が始まっちゃいますよお兄さん〜」
くそっ、この状況を打破するには二人を見つけて救出する以外ない…だが俺は動けねえし…この広いスーダンを探すとなるとな。
「…なら私達が探すよ!」
「ティピ…アンタがかい?」
急に大きな声を出したティピを皆一斉に見て、アノンが問う。
「違うよ、私達ラージマウス皆が探すんだ。この街の下水道は皆大体把握してるしこの街の情報網は私達のものだよ!」
「そうか…それなら二人を探し出せる!」
「だせるー!」
「うん!だからセンはできるだけ時間を稼いでね?助けたら客席から声をかけるから」
俺はその言葉に頷く。
「アタシとポムとキャノも探すのを手伝うよ。見つけても助け出せなかったら意味がないからね」
「ああ、皆頼んだぞ」
俺の言葉に、皆一斉に部屋を出て行った。
その後、控え室で十分ほど待っていると係員の女が控え室に入ってきた。
「セン・アシノ様、ポム様が棄権したのですぐに決勝戦ですが…大丈夫ですか?」
「…ああ」
頼むぜ皆。
現在地-スーダン-詳細不明
sideパノ
「んぅ…」
アレ…あたいはどうしたんだっけ?
闘技場で兄貴に負けて…兄貴とアノンの試合を見て兄貴の所に行こうとしてそれから…。
そうだ!兄貴のファンって奴に話しかけられたと思ったら急に後ろから鼻と口を塞がれて…眠っちまったんだ!
とにかく横になってるみたいだから起きねーとな。
ってアレ?腕が背中側から動かせねえ…足も一本の棒みたいになってて動かしにくいな。
目を開けて自分の姿をよく見ると…縄で縛られていた。
「んんんっ!?」
その格好に驚いて何だコリャと言おうとしてもくぐもった声にしかならない…てか口にも白い布で猿轡されてる!?
「んっ!んんんー!」
ジタバタと暴れてみるけど、縛られてて上手く力が入らなくて全然解けやしない。
「おっと、気がついたみたいだな」
あたいの目の前に二人の男が現れる。
確か…気絶する前にあたいとウトを押さえ込んで口を塞いでた奴だ!
あっ!そういえばウトは何処だ!?
キョロキョロ辺りを見渡してみると、ウトはあたいの右で同じように縛られて転がっていた。
まだ目が覚めてないんだろうな。
「んぅううう!んぐぅー!」
精一杯叫んだつもりだけど、くぐもった声にしかならない…多分この部屋の外には届いてないだろうな…。
「無駄だ、止めとけって」
「んん…!」
片方の男があたいに近寄りながらそう言い、あたいは警戒して睨みつけた。
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