1人じゃない

現在地-反魔物領の街ガレス-南門付近

俺は教団の兵士を突破した後、すぐに北の関所に向かって旅人と言って関所を抜けて街に向けて走った。

だが…

「凄く廃れてて、不気味な街だな」

夕日の赤い光のせいで街並み全体が赤黒くなっているし、道端にはゴミも散らかっているし、さらには失業者の様な奴等がバタリと倒れている。

既に生きているのか、死んでいるのかも分からない。

「センお兄ちゃん……なんだか恐いよ」

「大丈夫だ。でも俺が良いって言うまで服の中に隠れてろよ」

「うん」

俺の服の中に隠れているポップも少し恐いのか震えている。

とにかく地下に入ってアクアと合流できる場所……下水道への入り口を探さないといけないな。

「おや、旅人さんかい?」

突然、近くにいた人物に声を掛けられた。

その人物は女で、臍の出た露出の激しい黒い服装にトラベラーズハットをかぶり、腰には細身のレイピアを挿した金髪の美女だった。

服装は過激だが、魔物らしい外見はしていないし、こんな反魔物領に魔物が居る筈も無い……どうやら人間の女らしい。

「ああ、ちょっとこの街に用があってな」

「こんな廃れた街に用があるなんて……どんな用件だい?」

「その言葉、そのまま返すぜ。お前も旅人だろ?」

女の足元には麻袋があり、向こうも旅人だということを現している。

「フフ、ボクもちょっと、ね。縁があったらまた会おうね」

そう言って女はスタスタと立ち去って行った。

何だったんだアイツは……妙な奴だ、警戒するに越した事は無い。

まぁ、とりあえず俺は近くの裏路地に入って用水路を探してウロウロするが、そんな俺の前に2人のチンピラが立ち塞がった。

服装はボロボロで、近頃何も食べていないのか顔の骨格が浮き出るくらい痩せていて、正直不気味だ。

それぞれ手にはナイフを持っているが、手入れはされていないのか血がこびり付いていて切れ味は悪そうだ。

「……何か用か?」

「ヒヘヘ、兄ちゃんちょっと金目のモン置いてけよ」

「ククク」

俺を旅人だと見て金を持っていると判断したんだろう。

「お断りだ」

そう言って踵を返して大通りの方へ戻ろうとするが、似たような奴が更に2人、俺達に立ち塞がる。

前後に2人ずつ立ち塞がり、退路は無いが…。

「逃げられると思ったのか、兄ちゃん?」

ベロリとナイフを舐めて俺に近寄ってくるが、残念ながら不運なのはこいつ等だ。

「そっちこそ、無傷で立ち去るチャンスを逃したな」





「で、何か言い分はあるか?」

「カ、カツアゲしようとして…スンマセンでした…!」

数分後、この裏路地にはボロボロのチンピラ4人組が俺に向かって土下座していた。

ボコボコにした後、俺に土下座しろと言ったんだが…。

「土下座の仕方が分からないッス」と言ってきたので仕方が無いので教えてやった。

「先ずはこう、正座をして両手を着いて頭を下げて……って何で俺がやらなきゃいけねーんだ!」

「「「「ギャース!?」」」」

と、言うわけでカツアゲしてきた奴等は俺に土下座している。

「さて、お前らには南側にある下水道の入り口に案内して貰いたい」

「へ…?下水道の入り口ならこの路地の反対側ッスけど」

……どうやらまたやってしまったらしい。

「じゃあそこまで案内を頼むぜ……断ったら…」

「「「「ハ、ハイ!案内させて頂きます!」」」」

そこからは何も言わずに右足のつま先でトントンと地面と叩くと、チンピラ共は元気良く返事してくれた。

なーんだ、案外いい奴等じゃないか?

つー訳で4人に先に行かせて俺はアクアへ念話を繋げる。

『アクア、俺はこれから南側の下水道の入り口に向かうから、そこで合流しよう』

『はい、分かりました』

アクアは既にこの街の用水路のような場所から侵入しているらしい。

そして俺は程なくして用水路のような場所に到着した。

「ここからあっちに向かって歩けばすぐに下水道への入り口がありやすよ……」

「そか、ありがとな」

そう言うと俺は懐から金の入った袋を4人に向かって投げる。

全部じゃないが、案内代だ。

「え、えと……」

「案内代だ、それで飯でも食えよ。顔色悪いからな。じゃな!」

ポカンとしているチンピラ4人を放っておき、俺は下水道への入り口に向けて足を進めると、1分もせずに見えてきた。

用水路へどんどん水が流れ出ている。

俺は回りに気配が無い事を確認すると、念話を繋げる。

『アクア、出てきてくれ』

「はいっ」

ザパッと水面から胸元までを出して、アクアの姿が見える。

「ポップも窮屈だろ?もう服から出ていいぞ」

すると俺の着物からポップもフワリと浮かぶように出てきた。

「窮屈なんかじゃないよ!センお兄ちゃんが
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