-ダンピールの章4-

レブルが『愚者』を倒した翌日。

相変わらずレブルは兜をつけて姿をかぶり素顔を隠したまま街並みを歩いていた。

勿論、先日の傷があるので兜の下は包帯を巻いている。

噴水広場から南の大通りに入り、その通りにある『デレさせ屋』へと入る。

「おかえり、レブル」

「待っていたぞレブル」

中には勿論店の持ち主であるライラと、なぜかは知らないがイオがいた。

「ああ」

店の中に入ると、レブルは兜を外して素顔を晒す。

これは恐らく、2人には既に素顔を見せているからであろう。

レブルが素顔を晒すと、イオとライラはとろんとしたような視線をレブルに向けて溜息のような吐息を吐く。

「うむ、やはりレブルの素顔はイイ……」

どこかトリップしたような雰囲気でイオがそう言うが、レブルは軽く首を傾げ、兜を脇に抱えてライラの正面に立つ。

「ライラ、話がある」

「ん?何だい?」

レブルの真剣な面持ちにライラも表情を引き締めた。

「明日、俺はこの街を出る」

この一言に部屋の中の時間が停止した。

実際に止まったわけではなく、そういった雰囲気になっただけなのだが。

「……ああ、また依頼に行くって事?いつ頃帰ってくるんだい?」

少し冷や汗を流しつつそう聞くライラだが、本当は如何いう意味かは分かっている。

今まではもっと別の言い方をしていたし、単に依頼で出かけるならもっと簡単に言うはずだ。

ある意味予想できた事だが、レブルは首を横に振った。

「違う。この街を拠点として活動して2ヶ月ほど経った。教団に俺の位置が特定されている。このままだとお前に迷惑がかかる」

レブルの言い分は尤もだ。

位置が特定されているから討伐隊が派遣されたのだし、『愚者』の奇襲に会ったのだ。

「ボ、ボクはそんな事は気にしないよ!」

座っていた椅子がガタンと音を立てて倒れるほど勢い良く立ち上がるライラだが、そこへイオが声をかけた。

「昨日は貴様が人質にされてレブルが怪我を負ったんだぞ?お前がレブルの枷になっているんだ」

「う……!」

イオの指摘にライラは反論する事ができない。

そんな誰が見ても暗くなっているライラをレブルは優しく撫でてやる。

「今まで世話になった。この恩は忘れない……また何れ会ったときには恩を返す」

それだけ言うと、レブルは自分の部屋へと入っていく。

「レブル!勿論私は付いて行くぞ!」

続いてイオもレブルの部屋へと入ってく。

残されたライラは、呆然として手と膝を床に着くことしかできなかった。





その夜、レブルはインナー姿でベッドに横になっていた。

2ヶ月も過ごしたこの街には少しだけだがレブルも思い入れがある。

初めてこの街に来た時には路銀がなくなってしまい、野宿をするしかないという状態だったが、ギルドでうろうろしていた時にライラに誘われたのだ。

最初は週1回に家賃を払っていたのだが、日常生活で付き合っていく内に家賃は要らないと言われたのだ。

お陰で路銀を稼ぐのも思ったより早く終わった。

暫くはずっと放浪としていても困らない程度に懐は暖かくなった。

次は傭兵として金を稼ぎやすい反魔物領同士の戦争にでも行こうかと考える。

反魔物領では指名手配されているが、鎧を変えて正体を隠せば問題はないだろう。

もう眠ろうと目を閉じると、暫くしてから部屋の扉が聞こえるとレブルはピクリと反応する。

(教団の暗殺者か…?昨日俺を殺すのを失敗してからだと考えると早すぎるが……ありえない話じゃないな)

できるだけ潜められている足音が自分の射程範囲内に入ると、ベッドから飛び上がってシーツをその人間に向けて投げて視界を塞ぐ。

相手がシーツで視界を塞がれている内に飛び掛って組み倒す。

「うわぁっ!」

「……ライラ?」

しかし組み倒した時に聞こえてきた悲鳴は良く知ったライラの声だった。

「んっ
#9829;レブルゥ……
#9829;」

「っ!?」

状況が掴めずに暫くライラを組み伏せていたレブルだったが、自分の手がライラの胸を掴んでいる事に気が付くとすぐに離して飛び退いた。

起き上がったライラは、どこかうっとりとした、そしてどこか嬉しそうで、どこかしおらしい表情をしていた。

一歩ずつ、ゆっくりと、そして静かにライラがレブルに近寄ってくるが、レブルはベッドの所まで後退すると立ち止まってしまう。

「ラ、ライラ…?」

普段とは違うライラの様子にレブルはかなり戸惑っているが、そんなレブルを見てライラはフッと微笑む。

「嗚呼、そんなうろたえているレブルは始めてみるけど…可愛いなぁ…」

レブルの両肩に手を置いて顔と顔がくっ付きそうな位近くに近づける。

2人ともが心臓の鼓動が早まり、顔が赤く染まっていく。

そして、不意
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