-ドラゴンの章3-

先ほどまで廃墟と化していた村は、村人が戻った事によって活気を取り戻しつつある。

建物も盗賊が使うために手入れされてり、既に夕暮れながらも人々や魔物が賑わいちょっとした宴会のような事になっている。

魔物とその夫は、既に家の中に戻り交じり合ってる者も居るようだが。

そんな中で宴会に参加していない者が2人居た。

村の端っこにある家の壁にもたれかかり座っているドラゴンのイオと、同じ家の壁に背中を預けて腕を組んでいるフルプレートメイル姿の青年だ。

「……お前はアレに混ざらんでいいのか?お前の仕事ぶりを称えての宴会なのだろう?」

「興味が無いからな」

イオが青年を気遣うような事を言っても青年は頑なに断り続けた。

ついでに、兜を外して青年に酒を飲むように勧めた村人もいたが、青年は全ての誘いを断って此処に居る。

そして青年とイオの会話は途切れ、なんとも言えない雰囲気となる。

心なしかイオの顔は赤く染まっており、妙にモジモジしている。

(く……会話が繋がらん!べ、別に会話をしなければならないという訳ではないが、この雰囲気は何なんだ!と言うかコイツは兜で表情が見えないから良いものの、私ばかりうろたえていては…)

「す、少し飲み物でも取ってくる」

その場に居られなくなったのか、イオは立ち上がるとどんちゃん騒ぎをしている村人達の傍から酒を2つ持ってさっきまで居た場所に戻ろうとする。

「良し、これでアイツも酒を飲むだろうし、あわよくば素顔も……って何故私はアイツの事を一々気にしているんだ!?」

アイツと言うのは先ほどの青年の事だろう。

しかしそれにしても1人で呟き、1人で慌て、1人で言い訳しているその姿あ妙に滑稽だが、周りは皆宴会に夢中で彼女に気を向けている者は誰も居なかった。

そしてイオが青年の元へ戻ろうとすると、物陰から妙な音が聞こえてくる。

その音が何か、気になったイオは気配をできるだけ消してバレないようにそ〜っと覗き込んだ。

「―――っ!」

物陰の先にある物を見て、イオは目を見開いて驚いてしまい、危うく悲鳴を上げるところだった。

「あんっ
#9829;気持ちイィわアナタァ
#9829;」

「くぅっ……!あんまり声を出すと皆に見られるってディアーチェ……!」

「だってェ
#9829;そういう方が燃えるんだものっ
#9829;」

何故か物陰で村人の青年とハニービーが交じり合っていた。

(あ、あれがオスとメスの交じり合い……性交……エッチという奴か)

イオはこれ以上ないくらい顔を真っ赤にして彼らから目を逸らした。

存外、純情なようだ。

(あ、あれを……何時かアイツと……)

「って違う違う…!」

何故か自分の頭の中でピンク色の妄想をしてしまい、余計な事を考えないようにする為に頭をブンブンと振る。

(な、何故アイツとの想像をしているんだ私は!?今日の私はどこかおかしいぞ!?)

これ以上この場に居れば、物陰から聞こえる喘ぎ声で顔が茹蛸のようになってしまうと思ったイオはその場から逃げるように立ち去った。

そして青年の居た場所へと戻ってくる。

「遅かったな」

「あ、ああ……少しな」

そう言って青年に向けて両手に持っているジョッキのうちの片方を渡す。

青年はそれを受け取るも、困ったような瞳でそれを見続けた。

「ど、どうした?飲まないのか?」

イオはいかにもワクワクソワソワといった雰囲気になり、青年の行動を待つ。

ハァ、と青年は溜息を吐くと渋々といった様子でその兜に手をかけて外した。

兜の下から出てきた青年の素顔は、全てを飲み込むかのような、少しはねた漆黒の髪の毛に、血のように赤い鋭い目。

そして割と整った顔立ちだった。

「俺を『死人喰らい』だと知った奴にあまり素顔は見せたくないんだがな」

「はぅ…」

青年の素顔を見たイオは溜息の様な吐息を吐き、うっとりと酔ったような視線で青年を見つめている。

しかしはっとしたイオはすぐに何時もの様な雰囲気に戻ると、青年に向けてジョッキを突き出した。

「か、乾杯だ」

「……乾杯」

カチン、ジョッキがぶつかり合い、2人はジョッキに口をつけて空を仰ぐようにして中身を一気に飲み干した。

酒の苦い味がすると思ったら、後味はほのかに甘い味が口の中に残っていく。

「ん、中々美味いじゃないか」

「そうだな、ほのかに甘い」

こうして、2人も村の隅っこで宴会を楽しんでいた。





その夜。

青年は村にある空き家を借りて一泊する事になり、イオも自分の住処であった城の廃墟に戻りそこで就寝する事になっていた。

しかしイオは眠れて居なかった。

「んぅ
#9829;あふぅ
#9829;んぁぁぁぁっ
#9829;」

ドラゴンの鋭い爪を一時的に消
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