人や馬車が走る事で、草が潰れて生えなくなり街道が生まれる。
そんな街道を歩く2つの人影。
1人はドラゴンのイオ、もう1人は蒼いフルプレートメイルにユニコーンのような角が生えた兜を装備している、巷で『死人喰らい』と呼ばれている青年だった。
2人はイオの住処である山を降りてこれから青年が依頼を受けた者達が居る場所へ戻る途中なのだ。
しかしイオはムスッとした不機嫌そうな顔をしている。
「おい、移動の時くらい兜を外したらどうだ?」
「……」
「おい、聞いているのか!」
先ほどから青年に兜を外すように言うのだが、青年は全く意に介さず無視し続けている。
また無視をされた事でイオのイライラは更に募っていく。
「……そう言えば、お前が私のブレスを跳ね除けた魔法は何なんだ?」
兜の話は無視されるので、少し話題を替えて見ることにしたらしい。
「対竜魔法の1つで、竜の攻撃と防御に対して短時間の恩恵を受けれる魔法だ。竜の鱗の防御を無視させる法を武器に纏わせ、不可視のブレス避けの結界を展開させる超高等魔法だ」
「そんな魔法……何処で覚えた?」
「……」
漸く質問に答えたと思ったら、すぐに黙ってしまう。
自分の素性に関わる事は話したくないようだが、そんな事が分からないイオは更にイライラを募らせていく。
「いい加減に……!」
「見えたぞ」
イオが青年に怒鳴ろうとした瞬間に、青年がポツリと呟く。
草原の向こう側に、おそまつなテントが幾つか張られている。
更に近づいていくと、そのテントの周辺には人間は50人ほど、魔物が20人ほど居た。
その人間や魔物達は青年に気がつくと慌てた様子で駆けつけてきた。
「あ、あんた……大丈夫だったのかい!?」
「見ての通りだ。ドラゴンもこの通りあの住処から出てきたし盗賊も村にはもう居ない」
どうやらこの人間と魔物達があの村から出て行った者達のようだ。
青年の報告を聞いた瞬間、村人からおおおおおっ!という歓声が上がった。
テントの中から外の騒ぎを聞きつけた人々が出てきて青年とイオは取り囲まれてしまう。
「やっぱアタシの目に見間違いは無かったね!」
「いやー、これでやっと村に戻れるよ!」
「畑は大丈夫かな?結構手入れをしていないから作物が駄目になってるかも…」
「とにかく良かった!」
ワイワイガヤガヤと2人を取り囲んで盛り上がっていく村人をどうしていいか分からず、イオは戸惑う。
「お、おい……こいつ等どうすれば…」
「……何か来る」
「え?」
イオが戸惑い声を掛ける中で、青年は神経を集中させて周囲に気を配る。
何かを感じたのだ。
「There to capture all the eyes of a hawk in the sky.(鷹の目、空に有りて全てを捉える。)」
青年の右手に魔方陣が浮かび上がり、そこから光の鳥の様な生物が空に向けて発射される。
周りに居た村人は青年の魔法に驚き、青年が放った光の鳥を目で追う。
そして青年は光の鳥が空で浮遊しているのを確認すると、兜から見える赤い双眸を閉じる。
「……全員すぐにこの場から離れろ」
突然の言葉に周囲の人々は訳が分からず首を傾げる。
「此処からそう遠く無い場所に教団の駐屯地がある。どうやら俺の位置を嗅ぎつけた様だな。斥候が俺達を見張っている……急げ」
ザワザワと慌て、動揺してる村人達はすぐに行動ができない。
「急げ!でないと全員奴等に殺されるぞ!」
青年がそう怒鳴った事により、村人達は散り散りになって荷物を纏め始める。
しかし青年は兜の下で舌打ちをした。
「気づかれたか……Release.(解除。)」
空を飛ばせていた光の鳥が一気に地上に降下して青年の腕の魔方陣に収まる。
「……おい、一体何があったんだ?」
流石にイオも状況が飲み込めず、青年に尋ねる。
青年は戦闘の準備の為にか装備していた武器のチェックをしている。
「遠見の魔法を使った。空から奴等を発見した……俺は反魔物領では指名手配されているからな。奴等が追ってきたんだろう。お前も早く行け」
「お前は如何する気だ?」
「奴等の狙いは俺だが、奴等が魔物を前に黙っているとも思えない。自分のケツは自分で拭く」
青年は長槍を背中から外し、草原の向こう側を見つめてその場に立ち止まる。
その背中を見た時、イオは頼りがいを感じたが、同時に言い切れぬ不安感を感じていた。
「……フン!ドラゴンたる私が人間相手に逃げるなどあり得ん!それにさっき言ったばかりだろう!」
イオは青年の横に並んで腕を組む。
「私が守るとな!」
「……お前も追われる身になるぞ」
「人間如きに私が負けたり、捕らわれたりするものか」
青年は、さっき俺に負
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録