現在地-不明-薄暗い下水道
「ふあっ!誰かっ!誰か助けてぇ…!」
地下下水道をぬるぬると進んでいくバブルスライム。
曲がり角の向こうには、巨大な体を持つ何かの影が見える。
その体は太く、グニグニと蛇のような体を蠢かせる。
「助けてぇ…!嫌だよぉ…!」
巨大な何かは、曲がり角を曲がると一気に加速してバブルスライムに襲い掛かった。
「いやぁ…!いやぁああああああああああ!」
現在地-闘技場都市ソサエティの南部の森-鍛冶小屋
此処は大陸のほぼ中央にある闘技場都市、ソサエティ。
世界一大きな闘技場コロッセウムのある巨大な街であり、彼がいるのはそのすぐ南ある何の変哲も無い唯の森。
彼は、そこにある鍛冶小屋の外に寝転がっていた。
ジパング風の着物にズボンをはいていて、髪の毛は短い茶髪だ。
顔は悪くない…決して美形とは言えないが男らしさと言う雰囲気を纏っている。
しかし彼は体中に腕や足を初め顔や胸にも黒い刺青を刻んでいる。
刺青は魔法を発動させる術式の一種であり、これは非常に強力な強化の術式であり、人間にしながらとんでもない怪力を発揮できるのである。
代わりに代謝が激しく、すぐに空腹になってしまうというのは本人談。
この男の名前はタタラ・ヒトツメ。
サイクロプスとドワーフの鍛冶技術を習得し、かつてブラックハンマーと呼ばれるほどに高名の鍛冶職人だったのだ。
しかし彼は教団に騙されて武器を作らされた挙句に無理矢理術式を刻まれて戦場に駆り出されてしまい、逃げ出した。
それ以来武器は作らないと決めたのだった。
風が草木を過ぎて擦れる音と共に、北にあるソサエティから声が聞こえてくる。
もうすぐ月に一度の闘技大会が行われるせいだろう。
「闘技大会か…アイツも出るのか…?」
起き上がると、そろそろ来るはずの来客を待つ。
暫く待っていると草木を掻き分けてポニーテールにされた赤い髪に赤い鱗、褐色の肌を持ち、吊り目で勝気そうな顔立ちをし、ビキニパンツをはいた魔物であるサラマンダーが現れた。
「よっすタタラ!」
「毎日毎日良く飽きないなカレン」
彼女はカレン。
以前折れた剣の修理をタタラに依頼しに来たのだが、勿論タタラは断り、色々あってその剣を元に作り直してもらったのだ。
その際にカレンがタタラに惚れてしまい、一度まぐわったのだが、カレンが自分で振り向かせてみせると言って半月前ほどから毎日此処に通っているのだ。
「大好きなタタラのとこに来るのが飽きる訳ないだろ」
嬉恥ずかしそうにそう言うと、タタラも少しだけ顔が赤くなる。
「馬鹿言ってる場合か…やれやれだ」
カレンはタタラの横に座ると腕に抱きついた。
「なぁタタラ、最近ソサエティが騒がしくなってきたんだけどどうかしたのか?」
「ああ、月に一度の闘技大会があるからそのために集まってるんだろ。腕に自信のある奴等がうじゃうじゃ集まってくるぞ」
そう告げると、タタラに抱きついたカレンの腕にこもる力が少し強くなった。
それを不思議に思ったタタラはカレンに視線を向けると、カレンはキラキラした目をしており、尻尾の炎も強くなってきている。
「ど、どうしたカレン?」
「そっか!世界中から強い奴等が集まってくるんだな〜!アタシも参加してやる!負けてられねぇぞ〜!」
どうやらサラマンダーとしての戦闘本能に火をつけてしまったようだ。
早速立ち上がってソサエティの方へと向かっていくカレンの背中をタタラはゆっくりと見送っていた…。
「あ、タタラも来いよ!」
だが急にUターンしてタタラの腕を引っ掴んで引っ張った。
「うおっ!待てカレン!俺は別に…」
「何だよ!別にいいだろ!じゃあ出発!」
「ま、待てって、ハンマー持ってくるから少しだけ待ってろ!おいカレン!」
暫く引っ張り合いが続いたが、タタラが自身の武器である巨大なハンマーを背中に背負って漸くソサエティに向かう事になった。
街の大通りは人々が行き交い、出店も普段よりも多く出ており様々な所で様々な人が色んな物を見ている。
遥か向こう側に見える闘技場コロッセウムからは大きな歓声が聞こえているので恐らく自由試合が行われているのだろう。
自由試合とは言え闘技大会が近くなってくれば満席に等しいほど客が集まる。
個人の賭け事でもかなりの額が動くはずだ。
「で、俺まで連れてきて何処に行くんだ?」
再びタタラの腕にしかみつきながら歩くカレンにそう尋ねる。
どうでもいいが抱きつかれているせいでタタラはかなり歩き辛そうだ。
「んー、そうだなぁ…出店が出てるしなんか買って食おうぜ!」
カレンは屋台までタタラを引っ張ると、屋台でバナナをチョコレートに浸しているおっさんに話しかける。
「おっさん!そ
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