現在地-闘技場都市ソサエティ-とある武器屋
この街は世界一巨大な闘技場であるコロッセウムが建てられている街…名をソサエティ。
大陸のほぼ中央に存在し武器屋が立ち並ぶ巨大な街。
そんな武器屋にとあるサラマンダーが居た。
「ハァ!?此処でも駄目なのかよ!」
目を見開いてカウンターに両手を叩きつけるこのサラマンダー。
名をカレンと言い、信じられないといった表情でカウンターの向こう側にいるスキンヘッドの中年男性を見つめる。
「ああ、この折れた剣は家では打ち直せないな」
中年男性はその手に折れたサラマンダー製の片刃の剣を持っているが、申し訳無さそうな顔で告げる。
「この剣は殆ど寿命だよ…それにこの街の鍛冶屋は全部武器屋と一緒に経営していてな…この街は形に流し込んで作るからな…最近腕の良い鍛冶師が居なくなっちまったんだよ」
この街に立ち寄るのは腕に自信のある戦士ばかりで、武器屋で武器を次々に購入していく。
その需要に供給が追いつかず、形に流し込み量産する方式が取られたにだ。
「畜生…」
サラマンダーは剣を受け取ると折れた切っ先を腰の袋にしまい、剣を鞘に収めた。
ズーンと擬音が聞こえそうなほど落ち込むサラマンダーを見て、中年男性は益々申し訳の無い気持ちになる。
心なしか尻尾の炎も弱々しくなっている。
「なんだい…その剣、そんなに大切な物だったのかい?」
「ああ…これはアタシのお袋の形見なんだ」
剣を大切そうに見つめる彼女に、中年男性は更に申し訳ない気持ちになる。
そして中年男性は店の奥から一本の剣を持ってきた。
「お嬢ちゃん、こりゃあ何の変哲も無い唯の長剣だがもし良かったら暫くの間使ってやってくれ…」
確かに何の魔力も無い長剣だが、その心遣いが嬉しかったのかサラマンダーは嬉しそうにそれを受け取った。
「おっさん…ありがとな!大切に使わせてもらうよ!」
少しだけ元気になったサラマンダーは、長剣を腰に下げて店を出た。
彼女の名はカレン。
自分の夫になる男を探すための旅の途中でこの街に立ち寄ったのだが、闘技場の戦いで強者と戦い、辛くも勝利したものの剣が折れてしまったのだ。
「くっそー…目ぼしい武器屋はもう回っちまったし…しかたねぇな」
少し諦めたように足を進めると、その先には酒場があった。
カレンは酒場に入りカウンターに座るとマスターに酒を注文した。
「…お袋」
剣の柄を握り既に亡き母を思い浮かべる。
魔物限定の流行病にかかってしまい父の奮闘虚しく逝ってしまった。
そして父はカレンに自分の夫を探す旅に出るように言ったのだ。
そんな母の形見をこのまま折れたままなどと言うのはカレンは許せなかった。
「絶対に直してやる」
そう呟いたと同時にマスターが酒を持ってきてくれた。
カレンは剣を打ち直せ鍛冶師の情報を、このマスターから聞くことにした。
酒を喉に通すと顔をマスターに向ける。
「なぁ、折れた剣を打ち直せるような腕の良い鍛冶師を知らないか?」
酒を置いた後、グラスを磨いていたマスターは若干目を細めると、グラスを置いてゆっくりこう言った。
「南の森に一人の男が居る…その男はかつてブラックハンマーと呼ばれドワーフとサイクロプスの鍛冶技術を持っているらしい…」
「…そっか、なら早速行ってみるとするか。あんがとな」
酒を仰いで一気に飲み込むとカウンターに酒代と情報料を置いて店を出た。
南にある森は穏やかな森だが、大した木の実や薬草も無いので人々は殆ど立ち寄らない。
そのブラックハンマーと呼ばれる男を尋ねて極稀に立ち寄る者がいる程度だ。
大通りを歩いて行くと、カレンは妙に視線を感じる。
これはどの街でもそうだ。
褐色の肌に腕と足には赤い鱗に、赤い髪を黒い布で束ねており、目が釣りあがっていて勝気そうで綺麗な顔立ち、胸は鱗で覆われておりビキニパンツをはいているその姿はかなりの美人だ。
肌の露出も多いので道行く男共がカレンを見ていくのだ。
そんな視線は何時もの事なのでカレンは全く気にせず街の南門を目指した。
南門に到着し、門を通り抜ける。
暫くは街に出たり入ったりする人間や魔物が行き交っていたが、森を目指すために街道から逸れるとすぐに誰も居なくなってしまった。
暫く草原が続き、自分の足音だけを聞きながら進んでいくと、緑が生い茂る森が見えてきた。
「お、見えてきた」
剣が直せるかもしれないという期待に思わず口からそうこぼれると、自然と足も軽くなり森を目指して早歩きする。
森に入ると小動物がちょこちょこ見られ、どこかで見たことのあるような珍しくもない花や草が見られる。
草木を掻き分けて進んでいくと少し開けた場所に出た。
「…なんだコリャ?」
その開けた場所に
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