精霊王の記録

現在地-何処かの荒野-詳細不明

俺の名はディメント・ラティール。

愛称はディンと言い、親しい奴にはそう呼ばせている。

そして、今の世は魔物に溢れ、教団は殺戮を繰り返し、山賊が跋扈する…。

「なのにこの旅路は何と穏やかな事だろうか」

そう、何と穏やかな…

-ドォン-

突如この荒野に響く爆発音…荒野の向こう側に火柱が見える。

恐らく誰かの魔法だろう。

『うわー、結構強力な魔法だね』

俺の傍にフワリと浮かぶ、喋る緑色の球体。

大きさは俺の拳大だ。

「興味あるのかアニマ?」

俺はアニマと呼んだ緑色の球体に声をかけると俺の周りをう〜んと唸りながら飛び回る。

『しかしあの規模の魔法が放たれたという事はそれほど激しい戦闘が行われているという事でもあります…私は行かない方が賢明だと思いますが…』

続いてどからともなく現れる喋る青い球体。

『えー?面白そうだから行ってみようよー、きっと面白い展開になるよー?』

『アニマはディン様の身の危険を考えなさ過ぎます!万が一の事があれば…』

アニマが行きたいと言うのに対して青い球体はそれに反対意見を出す。

俺としてはどっちでもいい。

『その万が一の時にはアタシ達が助ければいいんだよ。その為にアタシ達が付いて来てるんだしな』

3つ目の球体の色は赤。

アニマ達の討論に意見を出すと、青い球体は起こったように激しく上下に動く。

『フラマまで!』

『煩いなーアクアは…そんな性格だからディンが来るまでパートナーが居なかったんだよー?』

『余計なお世話です!』

ギャーギャー騒ぐ3つの球体を尻目に俺は荒野の向こう側を見据える。

未だに戦闘は続いているようで先ほどから何度か金属がぶつかり合う音と魔法が放たれる音が聞こえてくる。

『テラは如何思うー?』

アニマは突如現れた4つ目の茶色い球体に向けてそう聞いた。

『ん…ますたー、必ず守る…』

『そんな…テラまでぇ…』

他の3つの球体が全員自分とは違った意見を出したせいでアクアと言う名の青い球体は力なくフワフワと高度を下げる。

俺はそれを優しく手の平で受け止めてやる。

「はは…アクアは俺の事を心配してくれてんだろ?なら落ち込む必要なんて全然ねぇよ」

『ディン様…!』

じーんという擬音が聞こえそうなほどアクアが感動しているのが分かる…アクアは少し世話焼きで心配性だが全部俺の事を思っての事だからな。

「じゃ、危ない時はよろしく頼むぜ…アニマ」

『りょーかいっ!』

瞬間、俺の周りを爆風が包み込み俺の体が空に浮き上がる。

そして俺達は上空を移動し、戦闘が行われている場所の上空へと辿り着いた。

其処には白い軽鎧に身を包み、美しい金髪にまだ幼さの残る顔立ちの少年とそれを守るように戦う騎士達だ。

それに対するは身長がいやに低い…一見すると子供に見える魔法使い達で、魔法の嵐を騎士達に浴びせている。

あれは恐らく魔女と呼ばれる魔物だろう。

その魔女の中に、より一層身長の低く、頭から山羊の角を生やした幼女が1人混ざっている。

あれはバフォメット…魔女達を率いてサバトなる怪しい集団を統率している高位の魔物である。

何度も放たれる無数の魔法を受けて騎士達はどんどん倒れていっている…このままでは勝ち目は無いと判断した騎士の隊長らしき人物は残っている部下を引き連れて逃げ出したようだ。

賢明な判断だ。

あのまま戦闘を続ければ全員気絶させられてサバトに拉致されていた所だったろう。

魔女達は気絶させた騎士達を下着姿にすると縄で縛り始めた。

あのまま連れて帰ってサバトでイロイロするのだろう。

「どうやら激しい戦闘所か一方的な殺戮ゲームだったみたいだな」

『そうみたいだな…にしてもあの人間達は何だったんだ?』

赤き球体であるフラマも気になったようだが今のは恐らく…

「ま、あっちの方は教団の騎士だろうな…中央で守られていた少年は勇者だったのかもしれないって所か」

憶測ばかりだがあながち間違いでは無いだろう。

これでも教団に潜入した事があるから詳しいし。

まぁ何故潜入した事があるかってのは置いておこう…今は関係ない。

『…どうする?』

テラに尋ねられて首を捻る。

この戦闘は無事終了したみたいだし俺の旅の目的は特に無いからな…サバトの連中に着いていってもいいか。

「アニマ、降りるぞ」

『あいあいさ〜』

俺を空中に浮かばせていた風が徐々に弱くなると、それに比例して俺の高度も落ちていきゆっくりと地面に着地した。

すると魔女達は警戒して俺に杖を向ける。

「動かないで下さい!」

「何者ですか!?」

そう口々に言うと俺は両手を上げて無抵抗なのを証明する。

「俺は唯の旅人って所だ…今の戦闘を見させても
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