初めての魔物はドラゴンで

「あれ?」

何で空が見えるんだ?

俺は確か倉庫の掃除をしてた筈なのに…。

「って仰向けなだけかよ」

俺の名前は葦野 尖。

黒髪、黒目、細マッチョで頭もそこそこ良くて面白いことが大好きな18歳。

足に刃を付けて戦う脚刀流の正式継承者。

これが俺のプロフィールだ。

上半身を起こして周りを見渡すと、そこは空と草原が広がっていた…。

「…落ち着け、俺は家の倉庫で掃除をしていて、足刀を見つけて装備…その後図鑑のような物を見つけて光に包まれて…駄目だ、これ以上は思い出せん」

立ち上がって身に着けているものを確認する…うん、服装は左袖だけ白い、黒い和服で黒い長ズボン、足には白地と黒空が装備されている…。

「何がどうなってんだ?」

さっきから疑問符ばかりだが、状況から考えると…

「本の世界に吸い込まれたとかって考えるのが一番簡単かね…」

どんな理屈でこんな所に居るのかは知らんが…

「面白そうだからありだな!」

幸い、身を守る手段はあるし、此処が本当にあの本の世界なら楽しみようはいくらでもあるか。

俺、面白そうな事大好きだし!

それにしても何もねーな…こういう時は街道でも探すか。

そう言う訳でとりあえず草原を歩いていくと何とか街道を発見できた。

「ま、面白そうだからって野たれ死ぬのはゴメンだしな」

そんなこんなで、俺は街道を進んでいった。



現在地-本の世界?の街道-道の真ん中

お、前方に山を発見!

木が生い茂っているな…何だか面白そうな匂いがするぜ。

「行ってみっか」

と言うわけで山に登ったのだが…

「雨かよ…雨宿り雨宿り」

木から木へと移りながら走り、雨を凌ぎながらどんどん山を登っていく。

来ている和服が少し濡れてしまうが問題ないだろうさ。

「ってアレ?」

いつの間にか山を降りてた…。

そう言えば俺はいつもそうだったな…学校に行こうとしたら何故か裏山にいるしコンビニに行こうと思ってたら何時の間にか内田さんの家で茶をご馳走になってたし…。

まったく、地形って本当は毎日変化してんじゃねえの?

ま、そんなことよりあそこに村があるからご厄介になりますかね。




現在地-本の世界?山の麓の村-とあるおっさんの家

俺はとりあえず村に厄介になることにしたが、どうやらこの村は裕福ではないらしい。

それでも人は温かく、俺を迎え入れてくれた。

設定は、道に迷った旅人って事にしておいた。

とりあえずオッズっておっさんの家に招いてもらい、一晩泊めてもらった。

しっかしこの村は俺が来たときもそうだったが全体的に沈んでいると言うか…もう元気と言うか生気すら萎んでいる。

「な、どうしてこの村こんなに元気無いんだ?」

俺は厄介になる家のおっさんに声をかけて質問してみた。

「どうしてってお前…あの山があるだろう?」

おっさんが指差したのは俺が上って降りてきてしまった山だった。

「丁度半年前ほどに、あの山にある城の廃墟にドラゴンが住み始めちまったのさ。そのせいで皆怯えて商人とかも寄り付かなくなっちまった…」

へえ!ドラゴン!

やっぱここは本の世界だな!ファンタジーだ!

「他の町とかに助けを求めないのか?」

「行ったさ…だが他の町は遠いし、たどり着く前に他の魔物に襲われて終わりさ…今まで何人か助けを求めに行ったけれど一人だって帰ってこない」

この村は終わりだよと言っておっさんは外に行ってしまった。

…これからどうするか暫く窓の外の空を眺めて考えていると、村人の歓声が聞こえた。

「何だ?」

気になったので外に出てみると白い鎧を纏っている少年とその仲間の魔法使いのような姿の女、少年とは違った鎧を着た中年の男を囲んで村人が大騒ぎしていた。

「どうしたよ?」

一番近くにいたおばさんに質問すると、その皺が出来ている顔を笑顔にして応えた。

「勇者だよ!勇者とその仲間がこの村に来てくれたんだよ!ドラゴンの討伐のために!」

「勇者って…?」

「知らないのかい?魔王を倒す為に教団に選ばれ、主神様に力を与えられた戦士のことさ。こんなことも知らないなんてどんな田舎から来たんだい?」

「…ずっと遠くさ。教えてくれてあんがとね、おばちゃん」

勇者、ね。

爺ちゃんから聞いた話だと、戦場で生き残れるのは強者と臆病者だけらしい…まあ多分気構えの話だろうけどさ。

持てはやされる姿からして勇者ってのはあの少年だな。

顔立ちは良く、銀髪が美しいがまだ幼さの残る顔だ。

何より、まだ殺しを知らなさそうだ。

え?俺は知ってるのかって?

…知ってるさ、じゃなきゃこんなこと言わないし。

どうやら少し体を休めたら出発するらしい。

…俺は無言で足刀の刃渡りを確認する。

白地と黒空…詳しいス
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