再会の港街はバフォメットと共に?

現在地-ザンガール-酒場

センだ。

現在、俺たちは非常に困っている。

それは…

「金が無い」

そう、金が無いのだ。

「え?でも私の渡した闘技場の優勝賞金は…?」

「この人数で風呂のある良い宿に泊まったらそんな金無くなるわ」

そう、既に俺達のパーティは俺、アノン、ポム、パノ、キャノ、ウト、ティピ、アーリア、ヴェロニカ、クー、シャム、ミンと10人以上。

人数が多すぎると移動や泊まるのも難しくなる。

「と言うわけで、此処にセン一行緊急会議を行う」

「「わーわー、やんややんや」」

酒場でも水しか頼んでいない…そんな状態で会議開始だ。

「で、まず金の事だが…お前達金になりそうなもの持ってないか?」

全員首を横に振った。

「…クー、お前の首飾りは?」

そう、あの遺跡にあった首飾りだ。

あれはあの後クーが大切に持っているはずだ。

「これは絶対に駄目だ」

首飾りを見せるが、ギュッと握って渡さない。

「結局それは何なんだい?」

アーリアの問いに、クーは少し考える素振りをするが何かを決めたように俺を見た。

「この首飾りは、主の証だ」

「主の証〜?」

ポムが首を横に傾けて聞き返す。ちょっと可愛い。

「ああ、あの遺跡の中心部には壁画があっただろう?あれはあらゆる魔物を率いた男の絵なんだ。あの遺跡はその男が魔物達と暮らしたもので…私はその魔物の子孫の1人なんだ」

「もしかして…その首飾りはその男の遺産って事かしら?」

「その通りだ」

成る程ねぇ……結構年代物なんだな。

「この首飾りには呪いがかかっていて、相応しくない者が身に付けるとその者の首を絞めるのだそうだ。教団があの遺跡に来た時も何人か絞め殺されたようだ」

「そう言うことニャ、迂闊に身に付けると呪いが襲い掛かるニャよ〜?」

ふぅん、面白そうだな。

「借してみ」

クーから首飾りを借りると、まじまじと見つめる。

「兄貴、絶対に付けちゃ駄目だぞ!もし兄貴が死んだら…」

「そうだよセン、そういう胡散臭い物は付けないに限る」

「センさん…」

「…おりゃ」

付けてみた。

「「「「「あぁああああああああああああああああ!?」」」」」

何人か大声で叫んで、周りから注目された。

「……何にも起こらないケド」

そう、首飾りは何の反応も無い。

「って言う事は、センが後継者ニャ?」

「ん…多分…」

「………」

ミンとシャムは落ち着いているが、クーはあんぐりと口を開けていた。

「はいはーい!後継者って何?」

ティピの質問に、シャムがニヤッと笑う。

「後継者とは、さっきの魔物を率いていた男が、何れ自分の意思を継ぐ男が現れると予言を残したのニャ…で、私やクーの一族はその継承者に従う事になってるのニャ」

「………け、継承者様!遺跡での数々の暴言、真に申し訳ありませんでしたぁ!」

テーブルにガツンとどたまをぶつけながら謝るクー。

何だか急に態度変わったな。

今までは普通に仲間だったのに急に家臣みたいになっちまった。

「いや、別に気にしてねーし…違和感あるから止めれ」

「し、しかし…!」

「そうだニャ、クーは少し堅くなりすぎニャ」

「シャムはもう少し掟を守れ!」

「てゆーか最初の議題は何処へ…?」

「何処へー!?」

ウトは冷静だな…キャノは相変わらずだけど。

「そんな事より現状をどうにかしないとね」

「そんな事とはなんだっ!」

スパンッと何処からか出したハリセンでアーリアの頭を叩くクー。

コイツは突っ込みの才能があるな。

「で、まあクー達の件は後回しだ。今は金の無い現状を打破するためにだな…」

「「あぁー!」」

言葉を区切ると、後ろから2つの同時に声が聞こえたので振り返った。

「ん?」

「「え?」」

そこに居たのは何時ぞやのドラゴンとワーウルフだった。



現在地-アルトリア砂漠-ザンガール付近上空

sideイオ

「流石ドラゴン、飛ぶ速度もとても早いですね」

「しかし数日飛び続けて流石に疲れたな…街に着いたら文字通り羽を休めたい…」

背にミスティを乗せて砂漠を飛び続ける。

「良いんですか?愛しの彼を早く見つけないと誰かに盗られちゃいますよ?」

「はっ!?や、やはり街に着いても彼を探すのが先決だな」

「クフフ…イオさん可愛いですね」

「ぐ…!」

何だか複雑な心境だ…。

ふと下を見ると、少しばかり軽装だが私達と同じく南へ向かって歩いているワーウルフを見つけた。

何だか少しフラフラしてるが大丈夫か?

「うっ…」

街まであと僅かだが、バタリと倒れてしまった。

「…ミスティ、少し降りるぞ」

「え?はい」

高度を落としてワーウルフの彼女の傍に降りる。

「大丈夫か?」


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