商品No.1  折れた棍棒 ・・・・・・・・・・・ 銅貨3枚

 お前さん、この店は初めてだろ?だったらまず、俺のことについて話しておくか。
俺の名は『ペドル=サイクロン』。見てのとおり、ここの店主だ。
この『ハリケーン』は、いわゆるよろず屋ってやつか?何でもそろってる訳じゃないが。
お前さんが思い出話を買ったように、この店はいろんな情報も売ってる。
世界中を駆け回って自力で得た情報だから、ヘタな噂や新聞よりも役立つぜ?
あと、トシは秘密な。だが、お前さんが思ってるほどオッサンじゃあないぞ…多分。

 ん?どうしてこんな商売をやってるのか、だって?
そいつはまだ教えられねえな。別の話で聞かせてやるよ。
今は、この折れた棍棒についての話をしよう…





 俺がこの店で商売を始めて、ちょうど二年…だったかな。
辺りがだんだん春めいてきた頃に、俺はとある山でこいつを走らせてた。
すると向こうから、変な集団がやってきてな。よーく見ると、そいつらはゴブリンだった。
んで、奴らは店を取り囲んで、身動きできなくした。まあ、すぐに盗賊だとは判るわな。

「そこの店の主人!」
「お前さん方の用件は予想してるが……何だ?」
「お金とかを、ちょーっとばかり置いてってもらえないかな?」
「「アンド、やらせろ!」」
「大人しくしないと、素直に渡すよりもひどい目に遭うよ?」
「…こっちの予想してるような台詞ばかりだな。
『フフフ、そうやって強がってられるのも今のうちだ!』」
「…ってこらー!こっちの台詞を先読みするな!」
「そんなステレオタイプの盗賊、こちとらもう見飽きてるんだよ。もっと努力しろ。
 …それとも、お前さん方モグリかい?」
「なッ……も、モグリちゃうわッ!!もう、何やねんアンタ!
 そないに人おちょくりよってからに、ホンマ調子狂うわぁ。
 うち等かて、商人や旅のもん襲ったことも数え切れへんくらいに…」
「おーい、動揺しすぎだ。この世界に無い方言が出てるぞ。」
「襲ったことはあるけど、一度も成功して無いよね…。」
「性交したことも無いし…。」
「ところで作者は道民なのに、何で関西弁を選んだんだろ…。」
「あんた達は黙ってなさいッ!!
 うぅ〜…こんなに馬鹿にされたのは初めてだわ。
 皆、こうなったら実力行使よ。今までここまではしなかったけれど…
 あたし達を本気で怒らせた事、後悔するがいいわッ!!」
「でも、実際怒ってるのはボスだけじゃ「うるさいッ!!!」

 で、奴らは武器を手にして、こっちに向かってジリジリ迫ってきた。

「フッフッフ…謝るなら今のうちよ。あたし達の力と数にかかれば商人一人くらい…」

 ズガァァァンッ!!!

「……へ……?ぇへぇぇ…?」

 いきなり足元の地面が吹っ飛んで煙を上げだしたもんだから、
そいつらは顔面蒼白になって地面にへたり込んだ。中には何人か……
…いや、やっぱ奴らのメンツの為にも、これ以上は言わないで置いてやろう。
お前さんも聞かないでくれ。…そいつらのボスも、その中の一人だったけどな。

「襲うのも戦うのも、相手を見極めてからにしないとな。
 俺みたいな商人が用心棒もなしで行商できている理由は考えたのか?」

 なんの事は無い。この店に備え付けてある大砲が、火を噴いただけさ。
俺は職業柄、肉弾戦はからっきし。知識はあるが、魔法もそれほど使えない。
用心棒なんかも、よっぽど危ない場所に行くんでなきゃ、維持費がかかるだけだ。
そんなわけで、こいつには何度も命と店を助けられて来たのさ。

「…で?どうだ。まだかかって来るか?」

 一同はガクガク震えながら、首を千切れんばかりに横に振った。

「そんじゃ、さっさと退散してくれ。俺も殺しはしたくないんでな。
 出来るなら、このまま足も洗ってくれると世のためになるんだが…」

 そう言い終わるより早くに、奴らはボスと共に風のごとく退散して行った。
…一人を除いてな。

「ん?どうしたんだ、お前は逃げないのか?」
「え…あっ…えと、アタイは……その…」

 他のやつらと同じく、そいつもガタガタ震えてはいたんだが、
どうも、俺に何か言いたいことがあるらしかった。

「もう危害は加えないから安心しろ。何か言いたいことがあるんなら聞くぞ?」
「うぅ、あの…アタイを、ここで……あ、いや、その…、襲ってきてごめんなさいッ!!」

 そう言うと、そいつもピューッと逃げちまった。

「何なんだ、一体…?」

 その時は大して気にしなかったんだが…。
山を降りてすぐ、ふもとの大きめな町で商売していた時、何かの集団を見つけた。

「何をやってるんだ?」
「あぁ、公開処刑さ。こんな辺鄙な村にも魔物が入り込んでな。
 どうも、そいつの他にも何人か集まって盗賊行為を働いてたらしい。
 やっぱり魔物ってのはろくでもないヤツばっかりだな…。」
「何ッ
[3]次へ
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33