壷の女の子と小さな冒険

 あるところに、お昼寝が大好きなつぼまじんの女の子が住んでいました。
名前をラジーナちゃんといい、保育園に通っています。
保育園のお友達と話すことがちょっと苦手だったラジーナちゃんは、
ある日、夢に出てくるお友達と本当に出会って、大の仲良しになることができました。
そこからどんどんお友達が増えていって、お昼寝のほかにも大好きなことができたので、
保育園に行くのも毎日楽しみです。
そんなラジーナちゃんですが、実は寝相がすごく悪いので、
寝ているときに壷ごとゴロゴロと転がっていってしまいます。
そのために、ラジーナちゃんは、小さな冒険をすることになってしまうのでした…

 その日はパパとママのお店がお休みの日。パパとママはお買い物に行ったので、
ラジーナちゃんはお家でお昼寝をしていたのですが……

「すぅ…すぅ……んんっ、もうおなかいっぱい…」

 よくある寝言をつぶやきながら、壷の中で穏やかな寝息を立てています。
しかし、そんなラジーナちゃんの様子とは違い、壷はゴロゴロと部屋中を転がっています。
ところでラジーナちゃんの家には、庭に出られる大きな窓があるのですが、
その日はちょっと暑かったので、ラジーナちゃんはその窓を開けっ放しにしたまま
お昼寝をしてしまったのです。
そのせいで、ラジーナちゃんの壷は窓から外に出て、そのままゴロゴロと
遠くへ転がっていってしまいました。
庭を出て…住んでいる町を通り抜け…坂道を転がり落ち…どんどん遠くへ…そして……

「う〜ん…ふぁ……」

 ラジーナちゃんが起きると、そこには全く知らない風景が広がっていたのでした。

「えっ、ここは…どこ?まだ、夢の中なのかな…」

 そこは、見渡す限りの暗い森です。大人ですら不安になるような場所なのですから、
子供のラジーナちゃんだったらなおさらです。

「そうだ、ミナちゃんから貰った腕輪が…」

 夢の中で出会った、ラジーナちゃんの一番のお友達のミナちゃんは、
ラジーナちゃんに、悪い夢から守ってくれる不思議な腕輪をくれました。
でも、今いるこの場所が夢の中だとしたら、これは間違いなく悪い夢です。
今ではいつもつけているこの腕輪が守ってくれないことが、
これが夢ではないという一番の証拠なのでした。

「そんな…!やだやだっ、ここどこなの!?パパ、ママ、どこにいるの!?
 やだよぉっ、助けて、パパ!ママぁ!!」

 いくら大きな声を出しても、もちろんパパやママには届きません。
そんな時、風が吹いたのか、動物がいるのか、茂みがガサガサと音を立てます。

「キャァァァァッ!!やだぁぁぁぁッ!!!」

 とうとう、恐ろしさに耐え切れなくなり、ラジーナちゃんは泣きながら走り出しました。
何度も転んで服を汚しながら、ラジーナちゃんは森を必死に逃げ続けます…

 ドンッ!!

 突然、ラジーナちゃんは何かにぶつかりました。木ではないようですが…

「いたぁい…だ、誰ッ!?」
「ぐぐ…それはこちらの台詞だッ!!この我にぶつかって来るとは、命知らずめ…」

 それは、頭から角を生やして、大きな爪と翼を持ったお姉さんでした。

「ご、ごめんなさい…あたし、ここがどこか分からなくて……ぐすっ…」
「なんだ、迷子なのか?お前のような子供が、こんな深い森に何の用がある?」
「えっと…お家でお昼寝してて、起きたらここにいたの…。」
「何ィ?…にわかには信じがたいが……嘘をついているようにも見えんな…」
「お姉さん、ここはどこなの?」
「ここは反魔物領の近くの森だ。奴らに見つからなかったのは幸運だったな…」
「やつら?はんまものりょう?それって何?」
「反魔物領とは簡単に言えば、我やお前のような魔物達を嫌っている連中がいる所だ。
 そこに住む奴らに見つかったら、恐ろしい目に合わされる事だろう。
 なにしろ奴らは、お前のような幼い子供にも容赦はしない。一切な。
 我ならあんな連中一捻りなんだが、お前だったら、恐らく……」
「…!!!いやぁ、怖いよぉっ…!うぇぇぇん…」
「す、すまない。怯えさせるつもりはなかったのだが………そうだ!
 我がお前の家まで送り届けてやろう。だから泣くのはやめろ、な?」

 さすがに「地上の王者」ドラゴンも、泣いている小さな子供にはかないません。
ラジーナちゃんもようやく安心したようです。

「本当!?お姉さん!」
「ああ。関わった以上、無視もできんしな。お前の名は何という?」
「あたしの名前?ラジーナっていうの。お姉さんは?」
「我が名はゴールディ。それでは、こんな森に長居は無用だ。行くぞ!」

 そう言うと、ゴールディさんはラジーナちゃんを抱えて、翼を羽ばたかせました。
見る見るうちに地面が遠ざかっていきます…

「すごぉい…お姉さん、空飛べるの?」
「我はド
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