その1


   『第一幕』


 とある人間の五人家族が、そろって山に来ていた。

「みんなでキャンプに来るのも、久しぶりねぇ…。」
「おーい、そこの兄弟!遊んでないで、テント張るの手伝え!」
「「はぁ〜い…」」
「…あら?あの子は?」

 すると向こうからは、大量のホーネット達に追われる6歳の妹が!

「うぁぁぁぁぁぁん!!ママァァァァァアアアァァァァ!!!」

「「「「ギャアアアアッ!!どうしたんだお前!!」」」」

 ホーネットの群れからひたすら逃げる家族。しかし、彼女達はなかなか諦めない…

「どうしてこうなった!?」
「ハチの巣に近づいちゃダメだって言っただろう!?」
「そんなことしてないもん!」
「じゃあ何で…」

 そこで四人は、妹が大切に握り締めているものに気が付いた。
『先日買った『ハチの巣マスコット(アルラウネの蜜の香りつき)』』

「「「「それだァァァァァ!!」」」」
「早く捨てなさい!それをッ!!」
「どうりで、ハニービーも混じって追ってるわけだ…」



 そしてそのマスコットを投げ捨て、彼らは事なきを得た。
香りの強いものを自然の中に持ち込むのはご法度。くれぐれもご注意を…





   『第二幕』


 一人の少年が、梯子を使い、桜の木に登ってサクランボを取っている…

「ああ〜、めんどくせぇ…何で俺がこんな事…うわっ、カメムシ!!
 あのクソ親父…虫大っ嫌いの俺に、庭のサクランボ取る作業なんて無理だっての。
 あ〜あ、何で俺が兄弟で最年長なんだ。そもそも何で俺は男に生まれたんだ。
 俺に兄貴でもいれば…せめて俺が女なら、こんな事しないで済むのに…。」

(ブゥ〜ン…)
「うわぁぁッ、ハチか!!?」
(ブブ〜、ブゥ〜…)
「早く行ってくれ…早く行って…」

(ピトッ)

「だアアァァァァァァァァァッッッ!!!」

 何かに触れられた少年は、驚きのあまり梯子から転落し、
落ちて気を失ってしまった…。

「ここのサクランボ、貰って行くわね…って、聞こえてないか…。
 折角だから、この子が取ったやつも貰ってこ。ラッキー♪」

…それはハチではなく、ベルゼブブだった。




   『第三幕』


「フハハハハ…ついに完成したぞッ!!」
「やりましたね、博士!」
「苦節十数年…とうとう、超高性能の新型ゴーレムが完成したのだッ!!
 身体能力、記憶力、頭脳の演算能力、あらゆる面において、
 従来のゴーレムの十倍以上ッ!!まさに我が最高傑作だ!
 さあ、目覚めよ!我が魂の結晶よッッッ!!!」

 ゴゴゴゴゴゴゴ…

「聞こえるかね…未来への胎動が…」

『タイプ−SU51506,No.0000、起動開始シマス…』

「聞こえるかね、新世代の女神の声が…」

『声紋ヨリ、マスターの存在ヲ確認。始メマシテ、マスター』

「我らは…ついに、成し遂げたのだッ!!」



「…しかし博士、このゴーレムは、あらゆる面で十倍以上…なんですよね?」
「うむ、家事能力も、体の強度も、夜の奉仕の技巧も、
 当然、活動に必要な魔力も十倍以上なのだッ!」
「…このゴーレム、魔力の補給は完全ですか?」
「今、補給しようと思っているのだが……あ」
『深刻ナ魔力不足ヲ確認。強制魔力補給モードニ移行シマス。』
「う…うわぁぁぁッ!服を破くんじゃないッ!!」
「こ、コラ、止めろ!マスター命令だッ!」
『尚、強制魔力補給モード中ハ、マスターヲ含ム全テノ者ノ命令ヲ
 遂行スルコトガ出来マセン…』
「何だとォォォォォ!?」
「何でそんなモード作ったんですかァァァ!?」
『移行完了マデ、3…2…1……移行完了。』






 翌日、風邪で休んでいたもう一人の研究員によって、魔力不足で
スリープ状態のゴーレムと、搾り尽くされて虫の息の二人が発見された…。




   『第四幕』


「そこの男!私と勝負しなさいッ!!」
「うおっ、リザードマン!?何だいきなり!?」
「私は、この辺りで最も強い男を探しているのよ!」
「だからって、なんでこんな辺鄙なところに…」
「近くの町で、この辺で一番強い男は誰かって聞いたら、ここの事を
 教えられたのよ。そして、貴方がその男だとも!
 さあ、尋常に勝負ッ!」
「…いや、俺は武器すら握ったことなんてねーよ…」
「……は?じゃあ…格闘家?」
「い〜や?」
「魔道師?」
「違うね。俺はただの物書きよ。」
「…じゃあ、貴方、何の『最強』なのよ?」
「う〜ん………あ!あぁ〜あ、あれの事か…」
「だからあれって何なの!?」
「俺が最強な物、それはなぁ…」



「ジャンケン」



「…はぁぁぁぁッ!!??」
「いや、だからジャンケンだよ、ジャンケン。
 ここの近くの町のジャンケン大会で、何度も優勝してさ…」
「ふざけるなァァァァ
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