【Take1:常識はずれの愛と青春の旅だち】

 桜も終わり、何かと変化する環境にも慣れ始めた5月。
ここはとある高校の屋上。生徒達が教員の目を離れて過ごせる憩いの場所…
現実では学園モノとは違って閉鎖されている事がほとんどでございますが、
この高校では開放されております。ベンチも付いてます。まあ、学園モノですからね。
そんな屋上で、放課後にふたりの男子生徒がベンチに座り、
特に意味もなくぐだぐだと駄弁っておりました。

「和也!」
「あぁ?なんだよ、シロ。」
「オレを…」
「オレを?」
「オレを…彼氏にしてくれッ!!」

「……」

「本気なんだ!!」
「……いや待て。アレか?彼女欲しいってことか?」
「うん。」
「…言葉足りな過ぎだろ。俺じゃなかったら誤解するぞ、マジで。」
「でも最悪、それでもいいかなって…」
「俺はよくねえわッ!こちとら彼女いるってんだよ!」
「そう…それなんだよ。モテる方法か、女の子紹介してくんない?」
「いや、無理だ。」
「なんだよー。彼女できたんなら、女の子の百人や千人、余裕で紹介できるっしょ?」
「そんなに紹介できる奴いるかッ!
…それに、知ってんだろ?俺は告られただけなんだって。自分から行ったわけじゃなく。
 そもそも俺が、女にモテるようなタイプだと思うのか?」
「うん、 絶 対 に 思わん!」
「強調して断言すんな!傷つくだろ!」

 駄弁っているというよりは、漫才でもしているかのようなやり取りをするこの二人。
それぞれ名を『万西 和志朗(まんざい わしろう)』『十五持 和也(とうごもち かずや)』といいました。共に高校2年生、クラスも同じです。
陽気でお調子者なボケの方が万西くん、ちょっと不良っぽいツッコミの方が十五持くんです。
幼い頃から家が隣同士で、赤ん坊の頃からの付き合いの、同学年ではわりと有名な凸凹コンビでありました。

「クソォォ、なんでオレがモテないんだ!背の低さか!?くせっ毛か!?
腐女子受けしそうなオレより、極道顔ゴリマッチョの方が優れてるというのかーッ!?」
「…おいコラ、俺のコンプレックスを刺激しに来たのか。いい加減ケツ蹴るぞ。」
「いいじゃないかぁ、それが好きっていう子と出会えたんだし。
 …うぅ、こんなチビ夫のことを愛してくれる女の子は、一体どこにおるんやぁ〜…」
「ったく…」
「畜生、もうワンダフルなアレとかコレとか済ましちゃったんじゃないの?
 あのモデル並み、いやそれ以上の美女と!
毎晩毎晩バインバインヌッチャヌッチャ…ぬぅぅぅぅ…羨まちい……!!」
「勝手に妄想してんじゃねえよ…まあ、否定はしねえけど。」
「あああぁぁ〜!!」

 おどけていたかと思えば、焦って、悲嘆して、嫉妬に悶えて転げ回り。
もともとの性格に加え、やや童貞をこじらせたのも手伝って、ほんの数分の内に、まあ面白いようにコロコロと表情が変わる少年でございます。

「くううっ…!青春してえ…!!」
「…なにも、女と付き合うだけが青春じゃねえだろ。部活とかよ。」
「…最近、映画部にカップル続出でさぁ。肩身狭いのよ…。」
「続出?」
「うん。4月に、今年の学祭用の映画のシーン撮ったんだけどさぁ。
人数いるシーンで、部員だけじゃ足りなくて人集めたらさぁ、
なんでかその人達と部員のみんなが次々といい仲に…」
「マジかよ…」
「なのに!オレのとこには誰も来なかった!何故だ!坊やだからか!?」
「知らねえよ…。」
「クッソォォォォ…!天は、天はオレを見放したもうたのかッ!!ああ…」

 そこで万西くんは突然立ち上がり、屋上の中央に向かって走ったかと思うと、
両手を高く掲げ、天を仰いで叫びました。傍目から見たら完全に危険人物です。

「神よ、オレに彼女をくれええええッ!!」

 彼も、なかば冗談のつもりでやったことでしょう。
この現代社会で『神』が本当にいると信じている人など、ほとんど居ないのですから。


…しかし。


『はい、どうぞ!』
「…え!?」

 すると突然、晴れているのに、空から一条の光が差してきました。
「光…!?」
「なんだ一体!?」

「(Ah───、Ah────、Oh h──────♪)
さらにどこからとも無く、賛美歌のような荘厳なコーラスが。
日が出ているのにもかかわらず、空には花火大会のような沢山の花火が。
その上、屋上の四隅から紙吹雪やスモーク、特撮のような爆発にレーザービームまで…」

「…って、ちょっと待て!演出過剰すぎだろ!?いつ仕込まれた!?」
「いや、そうだったら面白いのになあって。」
「あ?どういう事…って、お前が口で言ってたのかよ!?」

 もちろん、そこまでの大仕掛けはありません。
天から差す光と共に、人型の何かが、花びらのようにゆっくりと降りてきて…
万西くんの前に降り立ったのです。

「……」
「……」


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