新鮮プリンと秘密のレシピ

<STEP1:材料を揃えましょう>


 昔かもしれないし、未来かもしれない時。昼かもしれないし、夜かもしれない刻。
ナンセンスな冗談と、ちょっとイカれた人々と、とびきりの愛と淫欲に満ちた世界で、
ピンク色の小鳥さんが、素敵な旦那様とズッコンバッコンしておりました。
彼女のお尻の下には、乳児ほどもある大きな卵が柔らかな藁との間に挟まれています。
そんな繊細なものの上で激しく盛りあっても、この世界では当然のこと。
子供が生まれるのを待つ母にとって、常にお腹を暖めておくのは当然のことなのです。

「そうそうそう、ぁっ、当然の…ことなの!はっ…だからセックスなの!んふ…まだまだまだ、セックス、セックス、セックスゥ!」
「まだまだって、毎日寝ても覚めてもヤリっぱなしじゃないか。
まったくもう…万年発情期め!今日もピイピイ啼かせてやる!」

 今日も今日とて、なんでもない日。絶好のお茶会日和ですが、この夫婦は今日も、卵を暖めながら交わって過ごすばかりの一日になるはずでした。
しかし、突然…

「…ん?」

 小鳥さんが、お尻の下からの妙な感覚に不思議そうな顔をします。

「どうかしたのか?また収まりでも悪いのか?」
「ううん、そうじゃないの。なんか一瞬、卵がピクッて…あ、また!」
「まさか…。先月産まれたばっかりじゃないか。いくら不思議の国でも、早すぎ…」
「でも、すっごく暴れてるの!なにが起こって…きゃッ!?」

 なんと卵が小鳥さんを跳ね飛ばし、開けっ放しになっていた寝室の窓から、ロケットのような勢いで外に飛び出していってしまいました。

「わー!?俺達の子が…は、早く追いかけないと…!」
「うん…でもあの速さだと、あたしの羽根じゃ追いつけないの。一人で追っかけたとしても。
 卵がどこに行くのか見て、それから追っかけるほうがいいの。」
「そうか…だが、どうやって行き先を見る?このままじゃ見えなくなるぞ…」
「ん〜…あ、そうだ!ここに丁度いいのがあるの。」

 それは、水分補給のため、冷茶の入ったポットと一緒にベッド脇のサイドテーブルに置いてあった二人分のグラスでした。
小鳥さんは、普段は羽毛で隠れている指でグラスをふたつ掴みあげると、それに向かってこう叫びました。

『オペラが始まるの!はやく見に行くの!』

 次の瞬間手の中のグラスは、ポンッとはじけた小さな煙と共に、
ふたつのオペラグラス(双眼鏡)へと変わりました。
オペラと聞いて、グラスはすっかりオペラ気分になってしまったようです。

「おお…。」
「不思議の国マジック!なの。はい、これ。」
「ああ。…ところでコレ、元に戻るんだよな?」
「簡単なの。いま大きな声では言えないけど…オペラなんてやってないってバラせば戻るの。」

 ただしグラスによってはしばらくの間、色が『ブルー』になったり、オペラ気分が抜けきらないせいで、突然オペラグラスに戻る事があるそうです。
…それはさておき、二人はオペラグラスを通して窓の外を覗き込みました。

「さーて。あたしはもちろん、ここで見させてもらうの。」

 オペラグラスを覗きながら、ササッと旦那様の腰を両の太股で挟み、再び旦那様のモノを挿入する小鳥さん。そのまま自分で動きながら、飛んでいった卵を探します。

「…見つけた!アレなの!あそこの『逆さ生垣』の上!いや、下?」
「ややこしいよ…あ、アレか!?」

 二人の目に、いや、二人のレンズに、白くて丸いものが、白煙の尾を引きながら青空を飛んでいくのが映りました。

「すごい勢いなの…。煙がまた、勢いよく飛んでる感をかもし出してるの。」
「なんで煙が出てるんだ…って、ん!?急に止まっ…」

 突然、時間が止まったかのように空中でピタッと停止した卵。
しかし、動きが止まったからといって浮きっぱなしにはなりません。
重力に引かれた卵は、建物が崩れるように、少しずつ速度を増して落下していきます…

「うわああぁぁ、落ちる、落ちちまうッ!!」
「えっと、下には…下には何があるの!?」

 卵の真下には、レンガ塀の上にボーっと座っている青年がおりました。
不思議の国の住人が見れば、ひょんな事からこの国に迷い込んでしまい、途方に暮れている未婚の男性だと一発で分かる事でしょう。中々よい身なりから察するに、貴族でしょうか。
そんな彼が、ふと何かに気付いて、上を見上げた瞬間…
落ちてきた卵が彼の顔面にぶち当たり、グッシャーと盛大に潰れました。

「あ゛あああああぁぁぁッ!!!!」

 旦那様は、はるか向こうの青年に届きそうなほどの絶叫をあげました。

「〜〜〜〜ッ…お…落ち着いてほしいの。耳の膜が破れちゃうの…」
「だって、お前、たまごが、おれたちの、こが…!」
「気持ちは痛いほど分かるけど…落ち着くの。あの子と、
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