イチゴゼリー(上)

「うっ、ぁ、……も、もう駄目だ。またイくぞ、いのり、いのりぃッ!!」
「はぁ、あっ、あっあっ、うんっ…おねがい。イって、いってぇぇ♪」

 私、『三古寺(サンプルジ) いのり』はただいま、ちょっと年上の男の人にまたがって、夢中で腰を上下に振りまくっている。
現在は、たしか8回戦目。私の股間はもう、つながってる所が見えないくらい、彼の精液でぐちゃぐちゃだ。いや、股間どころか、全身白濁まみれだった。

「い、いの、うぁっ…!!」
「でっ、でた、あづっ、ひぁ、ぁあああああああぁぁぁッ…♪」

 恋人同士が、お互いを激しく愛し合っている。まあ、ごく当たり前の事だろう。…ちょっと一度の回数は多いかもしれないけど。
…けれど、私たちの下にあるのが、ベッドじゃなくて、『ピンク色のゼリー状の体を持つ生物』だとしたら、貴方はどう思うだろう?
そしてそれが、私と彼の体を、そのゼリーの体であれこれ責めているとしたら?
それどころか、彼が今日射精した内の3回は、この生物が相手だったとしたら?
もっと言うと、この生物が『私の一部』だって言ったら……貴方はどう思うだろうか?
もちろんこれは夢じゃなくて、すべて現実。だというのに、ふと思い返してみると、まるで夢みたいにおかしな状況だと思う。
まあ、幸せなんだけど。幸せすぎて、もう全身とろけそうなくらい幸せなんだけど。
できればもっと、ごくフツーの恋をしてみたかったという気持ちも、少しあったのだ。

…まったくもう。こんな目にあったのも、全部あの怪しい通販のせいだ…。





 〜ちょっと前〜

「…!」

 弛緩しきった体に、ふと力が入る。
どろりと酩酊した意識の中で、ゆっくりと体を伸ばした。

「んッ…」

 ぴんと緊張した体に、えもいわれぬ快感が走り抜ける。

「は…ああぁぁぁ〜〜〜〜〜…ッ♪」

 脱力。
全身に熱が回り、思わず、はしたない声を上げてしまう。
優しい余韻を楽しみながら、この瞬間が、この感覚がずっと続けばいいのにと思う。
…幸せ…♪



「…ふぅ〜、よく寝た…。
 あー、やっぱ人間、最低9時間は寝ないと。」

 大学の講義も、アルバイトも、その他諸々も、なんにも無い完全休日の朝。
私は、思い切り伸びをして、久しぶりの爽快な目覚めを噛みしめていた所である。
さっきので、もしも何か別の事を想像した人がいたのなら、きっと疲れているに違いない。
かわいそうに。出来るものなら、この爽快さを少しばかり分けてあげたい。

「さって、ゴハンゴハン…」

 爽快が冷めないうちに、朝ごはんの支度をする。今日は洋風ブレックファーストだ。
…と言っても、買い置きの食パンを焼いて、インスタントスープを付け合せただけだけど。
一人暮らしの女の朝食なんてこんなもの…と信じつつ、
実家から持ってきた小型テレビで朝のニュースを見ながら、パンにバターを塗る。

「…ん。それなり。」

 当然、美味しくなくはないけど、普通の味。ニュースも大した事件とかは無い。
特に感想も無く完食する頃には、情報コーナーが始まっていた。

「ごちそうさまー、と。」

 今日もまた、平凡な一日が始まる。
大学に通うため一人暮らしを始めた当初はどうなる事かと思ったけど、
特に危険にも見舞われず、大学で友達も結構出来たし、生活面でも特に困ってない。
とっても順調で、平穏なキャンパスライフが続き、もう一年以上が過ぎた。
唯一不満なことと言えば…

『今日のテーマは『結局、恋愛するなら何系男子?』です。早速VTRを…』
「…恋愛かぁ……。」

 そう、恋愛。
思えば、小、中、高、そして現在と、そんな感じになった覚えが無いのだ。
別に理想が高いつもりはないし、顔とか性格が悪いわけではない(ハズ)だし、
小中高と共学だったから、男子と触れ合う事自体もあった。
けど、同級生の女の子達が恋愛に盛り上がる中、私は彼氏いない暦=年齢が今まで続いている数少ない女子だった。

「したいなぁ、恋愛…」

 繰り返すけど、理想が高いつもりはない。
優しくて、どちらかと言うと同い年か、ちょっと下の人がいいなー。くらいの、低い条件。
合コンとか、交流できそうな場には普通に行くし、探してないわけでもない。
でも、それは最低条件。合ってても、『これ!』って男の人は、なかなか見つからない。
そんなもんなのかな。それとも、私の運がないだけ?
そうだとしたら…

「いつかは私にも向いてくる…よね?」

 でも、その時がずっと後だったら?そもそも来なかったら…?
いい年になるまで独り身で、お見合い結婚できたらまだいいけど、
悪くしたら、お婆ちゃんになるまでずっと…

「うう、ダメダメ!考えるのやめた!」

 考えるほどズンズン気持ちが暗くなっちゃうから、やめた。
全く…せっかくの気持
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