ワタクシ、○○でございます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 魔界からの記者様でいらっしゃいましたな?お初にお目にかかります。
ワタクシ、この森の主たるドリアード様にお仕えする者でございます。
生まれつき、ものを喋れませぬゆえ、筆談で失礼いたします。

 …ふふ。一目見たとき、さぞ驚かれた事でしょう。
ワタクシ自身も、自分がこの森にそぐわぬ容貌をしております事は、重々承知しております。
おや、そうでもない?
…ふふふ。貴方様は、お優しい方でいらっしゃいますな。
しかし世間には、ワタクシを醜く思う方も沢山居りましょう。
こんなワタクシを受け入れてくださった主様への恩は、到底返しきれぬほどでございます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ワタクシの日々の仕事でございますか?
おもに、主様の身の回りのお世話をさせて頂いております。
主様も色々とお忙しい身でございますから、
ワタクシも可能な限り、主様のお手を煩わせることの無いよう努めております。
……と言っても、大した事は出来ておりませんが。
見ての通り、ワタクシには生まれつき足が無く、ゆえに自由に動くことも叶いません。
それに加えて、主様の魔力は、病気も災害も寄せ付けませぬから、
お世話をさせて頂けるような事が、探してもあまり見つからないのでございます。
精々、ワタクシの手の届く範囲で、木についた害虫を払う事や、木肌をお手入れする事、
あとは、主様の話し相手を務める事くらいしか出来ませなんだ。
主様は”それで十分よ”と仰って下さいますが…情けない限りでございます。
せめて木登りでも出来たら、もっとやれる事も増えるのでしょうが、この体では中々…。
…おっと、そう言えばもうひとつ、出来る事がございました。
行商の方への応対や交渉も、最近はワタクシが務めさせて頂いております。
ご存知かもしれませんが、ここをよく通られる行商のゴブリン様とは、
主様の樹液や、この森で取れる希少な木の実などと物々交換で、
本や外の情報、時には食料なども頂いているのです。
行商の方への応対や交渉は、かつては主様が自ら行っておられたのですが、
今ではワタクシも、そのお役目をこなせるようになりました。
これからもなお、ワタクシに出来る事があれば、お役に立ちたいと思っております。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 …おや。ワタクシがなにゆえこの森に住む事になったか、でございますか?
それでは、ワタクシの生い立ちを簡単にご説明致しましょう。
…その前に。貴方様はこの森を、どう思われますか?
フム…フム…ええ、そうでしょうとも。
穏やかで美しい所でございましょう?ワタクシと、ワタクシの主様の誇りでございます。
見上げれば、生命に満ち、青々と輝く葉が風にそよぎ、
下を見れば、柔らかな芝生や、色とりどりの野の花々を、木漏れ日が優しく照らす。
聞こえるのは、リスなどの小さな動物が時折立てる音と、木の葉が擦れ合う音だけ…
この心安らぐ場所で、ワタクシは今日まで育ったのでございます。
…しかしながら、両親がそこで暮らしていたという訳ではございません。
そもそもワタクシ、親の顔などとんと知らぬ身でございまして。
何がどうなってこの森まで来たのか、誰にも分かりませんが…
ともかく、物心のつく前から、主様の木の根元にワタクシは居りました。
ああ、別にお気になさらずとも。このご時勢、珍しくもない事でございましょう?
本当に、お優しい方でいらっしゃいますな。

 続けましょう。
主様は、ワタクシが生まれる何十年も昔からこの地に根を張っており、
当時すでに、樹精ドリアードとしてこの木に宿っておられました。
ワタクシにとって、それが最初の幸運でございました。
生まれたばかりのワタクシを、主様は、それは愛情をもって育てて下さいました。
乳の代わりに、胎内に流れる樹液を、その豊かな乳房からワタクシに与えて下さり、
大きな根と幹、木の葉でもって、この身を雨風や寒さから守り続けて下さったのです。
ある程度成長すると、読み書きなどの勉学までも教えて下さいました。
何年も何年も、実の子供のように…。
ゆえに主様は、ワタクシの母とも言うべき存在なのでございます。
ワタクシが荒れず、穏やかな心のまま育てたのも、
ひとえに、この森に満ちた、優しく清らかな水と土と空気、
何よりも、主様の愛情あっての事でございましょう。

 この口調…いえ、文体の事でございますか?
母とも言
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP
[0]投票 [*]感想
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33