僕の名は『日見 写英(ひけん しゃえい)』。
このような事は自分で言うものではないだろうが、
品行方正、規則遵守、公明正大が取り得の、生徒会長を務める高校二年生である。
…現在僕は、私生活における、非常に重大な問題に直面している。
それは…
「あっ、こんにちは、会長!」
…恥を忍んで言おう。
今僕の目の前にいる、図書委員を務める同級生の事が、気になって仕方がないのだ。
友人としての関係を保っているのだが…はっきり言うと、その先へ進みたい。
…
「あぁ…何て不甲斐ない…」
今日も今日とて、自分の部屋で頭を抱える。
…結局、また一向に切り出せないまま、一日が終わってしまった。
チャンスはあるのに、どうしても普通の会話になってしまう。
生徒会長に就任したての頃、使命感に燃えていた頃の自分と同一人物とは、
到底思えないほどの腰の抜けようだ。
「どうすれば…」
女性は、男とは性格も、性質も、考え方も大きく違う。
今まで勉学一筋で、他のものにはわき目も振らずに励んできた自分には、
他人の、それも女性の心理と言うものは全く分からない。
故に…怖いのだ。
自分が最良だと思った言葉でも、彼女を怒らせたり、傷つける結果になるかもしれない。
元々僕は、しゃべる事は苦手だし…
普通に会話をするよりも、仲を深めるのに有効な方法はないものか…
「と言う訳なんだ。何かうまい手はないだろうか、友よ…」
「…何かヤバイ物でも食ったか?まさかお前がそんな質問するなんて…。」
…と、思い、
小学校の頃からの付き合いである、信頼できる唯一無二の友に相談する事にした。
彼は僕と違って交友関係が広く、女性との付き合いも多いから、
何かヒントを掴めないかと思っていたのだが…
「つうかそんなもん、お前の勇気の問題だろ?
思い切って突っ込んでみろよ。そのほうが成功するかもよ?」
「そ、そうかも知れないが!その…自信も持てないんだ。
願わくば、もう少し親密になってからの方が…」
「そうか…。相変わらず慎重派だな。それじゃあ、アレだ。
仲を近づけるってんなら、やっぱりプレゼントだろ?」
「いいや、駄目だ!あんな清純な美しい女性を、物でどうこうしようなんて…
僕は、そんな下衆な男には絶対になりたくないッ!!」
「…お前、純粋っつうか何つうか…自分の世界に入るなよ。
度さえ越さなきゃ普通だろ、そんくらい。」
「し、しかし、怒られないだろうか?誕生日やクリスマスでもないのに…」
「そういうプレゼントはなぁ、何時貰っても、大抵は嬉しがられるモンなの!」
「そ…そういう物だったのか!?また全然知らなかった…」
「…ハァ、中学までお前に俺しかダチが出来ねぇ理由が、何となく分かったぜ…。」
「僕の父が、賄賂や贈答には特に厳しい人なものでな…。
僕も昔から、そういう類は悪い事だ、ときつく教わっていたのだ。」
「…お前の親父さん、汚職の噂ゼロで有名な元市長だっけ。
どう考えてもやりすぎ、疑いすぎだと思うんだがな…。
…まあとにかく、何でもいいから贈ってみろよ。別に悪い事じゃねえから。」
「でも、何を送れば…」
「いきなり服とかアクセサリーは、お前にゃハードル高そうだし…
そいつ、ダイエットとかしてる感じだったか?」
「いや、そういった様子は聞いた事がないな。」
「ならお菓子とかどうよ?女の子は大抵好きだし。」
「そうだな…。しかし、どうやって渡そうか…
宅急便か…クラッカーや花火を鳴らしつつか…いや、列車の窓から…」
「よし俺が決めてやろう。」
「おお、それは有難い!」
「…つっても、知らない仲じゃないんだし、
『おすそ分けに…』位の何気ない言葉で、普通に渡しとけばいいだろ。
知らない仲じゃないんだろ?お前は、まずはそっから慣らして行けよ。」
「…それで、本当にうまく行くのか?」
「…余計な事さえ盛り込まなきゃな。」
「大丈夫だ。僕を信じろ!」
「…。」
そして、自宅へと戻り…
「…しかし、何を送るかも重要だな。
辺りのコンビニやスーパーで買った物ではいけないし…
かと言って、僕はこの辺りのそういった店にも明るくないしな。
何か、女性に贈るのに適していて、それとなく気持ちが伝わるような物…」
僕が自室であれこれ思案していると、
普段は滅多に見ない自室のテレビの電源が突然入り、通販番組が始まった。
『モンスターズ・ミラクル・マーケット!!』
「…?どうしたんだ?タイマーを設定した覚えはないぞ?」
僕はすぐに消そうとしたが、手が止まった。
『プレゼンターは私、ルクリー利里夢と…』
『首梨 リューナでお送りします。』
番組の司会らしき二人組みの女性。
その美貌に、恥ずかしながら、思わず見とれてし
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