ん?その変な機械のことか。
それは「エンジン」とか言う機械で、元々この店はそれで動いていたらしい。
今はどうやって動いてるのかって?そもそも、この店って一体何物なんだって?
じゃあ、話してやろう。さすがに突っ込んだ話はできないがな。
まず、この店をどこで手に入れたか、だが……
とある商人の下で修業を終え、俺一人で行商を始めて数年が経った。
こっから西のほうにある、親魔物領の『パンタリオン』って町のことは知ってるか?
町の中心に川が流れてて、結構キレイな町だ。でも、かなり祭り好きな所でな、
どんな祭りでもそりゃもう朝から大盛り上がりで、よそから見に来る奴も多い。
夜は夜で、町中の魔物と男が昼以上に盛り上がる…のは、親魔物の町のお約束か?
俺達も何度か見たことがあるが、ありゃ凄かった。それはまた別の機会に話すが、
お前さんも一度、実際に行ってみればどうだ?
…おっと、話がそれた。とにかく、俺はそこで道行く奴を相手に商売してたんだが…
「ほぉ…、お主、この辺りではなかなか珍しい物を売っておるな…」
なんて言いながら、ものすごく怪しい格好をした子供が近づいてきた。
「えーと…確かにそうみたいだが…お前さんは何者だ?」
「何ィ?お主行商人のくせに、我ら『バフォメット』様の事を知らぬのかえ?」
「いや、知ってるけど…その格好じゃ、ただの子供…?にしか見えないぞ。
って、全然『ただの』でも無いな…あー、えーっと……」
そいつが着ていたのは、『特攻服』というらしいコートを羽織って、
頭に大きな赤いリボンがついた、ピンク色の熊の着ぐるみだった。しかも顔が怖い。
「この『レディース・ベア』の着ぐるみを着ていても、
隠し切れずに全身から溢れ出すワシのカリスマ系オーラは分かるじゃろ?」
「どう見たって、変質者系のオーラしか出てないんだが…」
「仕方ないのぅ………ほれ、脱いでやったぞ。これでどうじゃ?」
「って、何でその下全裸なんだよ!?服を着ろッ!」
「あの着ぐるみの下に服など着たら死んでしまうわい。この世界の暦ではもう夏じゃぞ?」
「着ぐるみ着てる時点で相当暑いだろ!なぜ着た!?」
「勧誘のためじゃよ。最近この町によく人が来るようになっての。衣装はワシの趣…いや、
このワシの魅力とマスコット的な可愛さが合わされば、もはや敵は無いと思うてな。」
「そのマスコットで片方潰れてたじゃねえか!しかもソレ可愛くもないし!
つーか、いい加減なんか着ろ!人もだんだん集まってきたぞ!?
自警団でも呼ばれたらどうすんだよ!」
「うるさい奴じゃな…。」
着ぐるみを着直し、そいつは改めて俺に近づいてきた。
「さて…。いきなりじゃがお主、ワシのサバトまで来ておくれ。」
「本当にいきなりだな…。理由は?」
「ついたら話す。まあ心配するでない。襲ったり、お主にとって不利益なことはせんよ。」
「もう少しで俺を巻き添えに捕まりそうな事した奴に言われても、安心できないな……」
「全く、男なら細かいことをいちいち気にするでない!」
「行商人がそんな性格だったら危ないんだよ…」
そんなやり取りの末に、俺は仕方なく付いていった。
そしてしばらく歩くと、サバトの…事務所?らしきデカイ館にたどり着いた。
「ここか…。」
「いやいや、そこでは無い。ホレ、看板を見てみぃ」
その看板には『パンタリオン・シルヴィア博物館』と書いてあった。
「ほー、博物館か…。」
「ワシのサバトはこの隣じゃ。ささ、入るがよい」
隣を見ると、博物館よりさらに一回り大きい館があった。ここがそいつのサバトらしい。
俺はそいつに引っ張られるように中に入り、中の客間のような場所に座らされたんだ。
そこには俺達の他に、熊の耳と爪を生やしたメイド服の女の子がいた。
「それでは、まずお茶でもご馳走しようかの…これ、ベリー!」
「はぁい、何ですのん?」
「このお客の為に、ハニーミルクティーを二つ淹れてくれんかの?」
「了解です〜」
「…なんか盛ったりしないよな?」
「……ベリー、やっぱり普通の蜂蜜で頼む。」
「あれ、普通のでよろしいんですか?」
「やっぱり盛るつもりだったのかよ!?何が『襲わない』だ!!」
「ジョークじゃよ、ジョーク。ロリリカン・ジョークじゃ。本気にするでない。」
「ロリリカンって何だよ…」
「ほな、淹れて来ます〜。」
「それにしても、熊が好きなのか?」
「クマちゃんは大ッ好きじゃ♪」
「だろうな。あんたの着ぐるみも熊だったし、この部屋にもテディベアが沢山あるし、
あのベリーとか言う子もグリズリーだったしな。」
「乙女らしいじゃろ?ちと体調が悪いときも、熊の胆で治す位に大好きなんじゃ。」
「うん。そういう事を言わなきゃ、普通に乙女らしかったんだがな。」
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