第三章

崖の上まで無事に来た二人。
「んぐ、はぁ、なんとか、なったか」
「あの・・・も、申し訳、ありません・・・」
崖に手が届くところまでは登れたものの、片腕が取れて登れなかったイヴを引き上げたラウルだったが。
相当に、重かったらしい。
「いいてば。とりあえず、あそこで休もう」
指さした先には、小屋。
見ると、先ほどの吊り橋に繋がった小道があった。
「旅人用の休憩小屋だよ。直せるだけ、あそこで直していこう」
「わかりました。
 ・・・えーっと」
「はい」
困っていたイヴの前に、ラウルが背中を向けて座る。
「・・・大丈夫ですか?」
そう言いながら、左手を肩に乗せるイヴ。
「なぁに、なんとか」
それを背負おうと引くラウル。
「な、な、んなぁぁああっ、る、って!」
反応を見るに、思った以上に重かったらしい。
「・・・脚の先、引きずるくらいは、ちょっと許して・・・」
「え、えぇ、もちろん」
ずる、ずると進み始めて数歩。
ラウルの耳が真っ赤になっていることに気づくイヴ。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
「へ、あ、あははは!大丈夫大丈夫!」
当のラウルはというと。
やべぇ、背中に柔らかいものが当たってる!
これ、まさかおっぱ・・・
いや何を考えているんだ!これは機械!機械なの!
いくらふにふにふよふよのよくわからない材質でなぜか温かいからって、これは人工物なの!
「えっと、何が、温かいのでしょう?」
声に出ていたらしい。
「え?いやほら手だよ手!金属部品なのにあったかいなーって!」
「あぁ、そうでしたか。それは先ほどウィンチを使ったときのモーターの発熱ですね」
「え、うん、だよね!」
「でも、ちょっとだけ、嬉しいです」
「へ?」
「金属だらけの私でも、ちょっとだけ人間っぽくなれたみたいで、嬉しいんです」
きゅう、と、ラウルの肩に掛かっていた腕に力が入る。
それはとても優しく、柔らかく。
しかし当のラウルとしては。
ごめんなさい。
その綺麗な心を汚すようでごめんなさい。
そう抱き着かれると、とても優しく柔らかい二つのモノがさらに押し当てられてしまうんですごめんなさい。
僕の柔らかかった部分は逆に硬くなりそうなんだけど!
「えっと、柔らかい、とは?」
「えっ・・・あっ、いやほら、イヴのほっぺた、柔らかいから、
 何でできてるんだろうなーって」
危ない危ない。かろうじて首筋に顔が押し付けられてて助かった。
まぁこれはこれで、女の子の身体が柔らかいと言っているようなものなのでなかなかアレではあるが、下心を知られるよりは幾分かマシなはずである。
「これですか。これはシリコンですね。ケイ素を使ったポリマーで・・・
 と言ってもきっと判りませんよね」
「あ、ははは」
「まぁ、柔らかくて丈夫な素材だと理解して頂ければ幸いです」
「ふぅん」
「柔らかい肌は、お好きですか?」
「そ、そうだね、固い金属よりは、人間味があっていいと思うよ!」
大好きです。
特に背中に当たってる柔らかいのとか。
とは、口が裂けても言えなかったが。
「ふふ、よかった。
 開発段階では、頑丈さを目的に全部金属にしようって意見もあったみたいです」
「へぇ」
「しかし、子供にも好かれやすいようにと、あえて柔らかい部分を持たせたそうです。
 他にも・・・あっ・・・やっぱりナシで!」
「どういうこと?」
「き、聞く必要ないじゃないですか!ほら!着きましたよ!」
言われてみれば、小屋はもう目の前だった。
戸を開け、中にあった椅子ににイヴを座らせる。
「お疲れ様でした、マスター」
「いや、興味深い話を聞かせてもらっていたおかげで、
 思ったほどキツくは感じなかったよ」
言うと、なぜか恥ずかしそうに顔を背けるイヴ。
顔を背けた先の、赤くなった自身の手を見て驚いたようだった。
「ま、マスター!そういえば、手を・・・」
「え?あ、そうだった。
 夢中だったから痛いのも忘れてた・・・」
「手をこちらへ。止血と・・・刺抜きも必要でしょう」
「あぁ、それじゃあ、お願い」
ラウルが手を差し出すと、イヴはその手を取り、舐め始めた。
始めは舌を出して舐めていたが、ささくれたワイヤーを取るために軽く歯を立てたり、指全体にローションを塗るためか、指を深くまで咥えたりし始めた。
それをぼーっと見ていたラウル。
「次は左手をどうぞ」
「ひぇ!?あ、うん」
同じように舐め始める。
どうしよう。
これ、なんかエロい。
余剰分のローションでべたべたになった指を、口に出し入れするイヴ。
こちらの体勢を極力変えないようにするためか、首や上半身をしきりに揺らすようにしているのもまた・・・
「終わりました」
「にゃ!?あ、はい」
手を離すと、もごもごと口を動かし始めるイヴ。
自身の手を受け皿にして。
口の中のローションを、吐き出した。
粘液は
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