本編

森の中の小道を、一人の青年が往く。
身体より大きなバッグを背負い、時折、それを枝に引っ掛け、振り払いしながら、微かな木漏れ日を頼りに、進んでいた。
日が暮れるまでに越えられるのか。
青年の疑問は、口ではなく、額の汗として吹き出した。
たまたま道を訊いたタヌキの魔物に、近道があると教えられたのだが。
進めば進むほどに道は細くなり、道だったものに枯れ葉が積もり、とうとう、そこだけ枝が払われている、というだけの状態になっている。
がさ。がさ。がさ。
青々と繁る、日を遮る葉を見ながら。
がさ。がさ。がさ。
隙間無く、長年積まれた、落ち葉を踏みしめる。
がさ。ぽきり。がさ。
変化と言えば、時折聞こえる、枝を踏む音だけ。
がさ。がさ。がさ。
代わり映えのしない景色に飽きが来て。
ぽきり。がさ。がさ。
早く抜けようと、ただそれだけを考え。
がさ。がささ。がさ。
いや、考えることすら停止して。
ががさ。がさ。がささ。がさ。
どれだけ歩いたかも判らなくなったところで。
がささ。ぽきぽき。がさ。がさささ。
やっと。
がさささ。がさささ。ぽきり。ががささ。
自分のものではない足音に、気付く。
ざっ。
一際大きな音を背後に聞き、振り返る。
何もいない。
右を。左を。
何もいない。
ざっ。ぽきり。
頭上からの音に驚き、脇目も振らずに走り出す。
どざっ。
大きな何かが、さっきまで自分がいた場所へと、落ちる音。
ざっざっざっざっ。
落ち葉に足を取られそうになりながら、走る。
ざっざっぱきりざっざっ。
頭上を、右に、左に。
木から木へ、枝から枝へと、飛び移る何かの音を聞く。
ざっざっざっざっざっ。
はぁはぁはぁはぁはぁ。
得体の知れないものへの恐怖が、正しい呼吸すら塗りつぶす。
ざっざっざっざざっ。
音が、自分の前に出た。
そう思った瞬間。
視界が黒く染まる。
顔面に何かがぶつかる。
勢い付いた身体だけが前に進み。
そのまま荷物はどこかへと飛んで行き。
置いて行かれた頭が、地面に打ち付けられる。
「――――――!!!」
叫びを上げた。
上げたかった。
しかし、それは何か、柔らかいものに阻まれた。
そして、首筋に触れる、複数の尖った何か-----ノコギリのような何か。
殺される。
本能的にそれを悟る。
手を動かした瞬間。
脚を動かした瞬間。
指を動かした瞬間。
ノコギリは、喉を掻き切るだろう。
心臓が破裂せんばかりに鳴っているのが、耳の奥に聞こえる。
そのとき、顔を覆っていた柔らかいものが、少しずつ持ち上がる。
やっと開いた目が捉えたのは、一面の肌色と、中央のすぼまった穴。
やっと空気を取り入れた鼻が感じたのは、酸味の強いチーズのような臭い。
それが離れて、薄紅色の裂け目を見つけて。
それが、女性の秘部だと気付いた。
ひくり、ひくりと、呼吸に合わせて蠢くそれを見て。
どこか、自分でも場違いだ、馬鹿らしいと思いつつも。
勃起していた。
ひどく、興奮していた。
今だ鼻を突く女性器の臭いと。
彼女の腰が浮き、緑色のカマが首筋に充てがわれた光景。
その奥に。
性器と、カマと、その奥の冷徹な視線と。
全てに、興奮していた。
どれくらい見蕩れていただろうか。
ゆっくりと腰を上げる彼女。
そのまま、何事もなかったかのように立ち上がると。
ちらりとこちらを一瞥だけして。
現れたときと同じように、梢の中に素早く消えて行った。
さわさわさわ。
そよ風に揺れる木々の音が、何事もなかったかのように響く。
はっ。はっ。はっ。
今だに整わない呼吸と。
はち切れんばかりにいきり立つモノと。
少しだけ湿り、鼻の奥へと臭いを突き立てるそれが。
現実だったのだ、と語る。
上体だけを起こす。
飛ばされた荷物が見えた。
だが、そんなことはどうでもいい。
ズボンの紐をゆるめ、熱く滾るそれを取り出す。
目を閉じ、そこにまだ焼き付いている、卑猥な光景を思い出す。
鼻の回りの臭いが、その妄想をかき立てる。
はっ。はっ。はっ。はっ。
呼吸と、鼓動と。
それに合わせるように、固くなった愚息を握り。
上下にしごき上げた。
瞼の奥の、彼女の秘部を広げ。
グロテスクな己自身を、乱暴に突き入れる。
「んぐっ、ぐ、ふっ、は、あ」
突く。突く。突く突く突く。
息を荒くすればするほど、酸っぱいチーズのような臭いに満たされる。
瞼の彼女のソコが、濡れ、溢れ、臭いを出すように感じる。
「ん、ぐ、あ、は、あぁああ!!」
竿の奥が、痙攣するのを感じる。
ビクリ。
全体が震え。
裏筋が、ドロドロした滾りを運ぶ。
ぴちゃり。ぴちゃ。
枯れ葉に、粘液が落ちる音を聞く。
力を出し切ったように、大の字に倒れ込む。
はぁ。はぁ。はぁ。
さわさわさわ。
そよ風に揺れる木々が、何事もなかったかのように響く。
呼吸が整うのを待ち、起き上がる。
すっか
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