腰から下がとろけそうだ。覚めてまず最初に感じたことがそれだった。
「ん、お」
ぱちりとまぶたを開き、半分寝ぼけた頭でどうにか状況を把握する。
部屋は薄暗い。カーテンの隙間から差し込む日の光の強度から、まだ早朝の5時くらいだろう。室内気温が冬にも関わらず暖かいのは、今も動いているエアコンのお陰か。
敷布団の上に寝る僕の身体は、何故か裸。おかしい。就寝前は確かに寝巻に着替えたはずなのに。
そして何より。
裸の女が僕の下腹部に跨っていた。
正確にはフクロウの身体的特徴を持つ女性が、僕のペニスを女性器で咥え込んでいた。ゆっくりしたペースで腰を上下に揺する彼女の目尻は快楽に緩んでおり、小さな唇からこぼれる吐息も艶がある。身体が動く度に豊かな乳房も上下に揺れ、ぷるんぷるんと擬音が聞こえてきそう。
何回か射精を終えた後なのだろう。男と女の結合部からは、泡立った精液がぐぢゅぐぢゅと淫猥な音を立て漏れ出てくる。肉棒全体はトロトロした膣肉に抱擁され、ぬるま湯にも似た快感が僕を包む。
すごくいい。脳みそがのぼせる程気持ちいい。
「あ、起きた。おはよ」
僕の起床に気付いた女性が腰の動きは止めぬまま微笑みを浮かべる。透明感のある落ち着いた声色だ。
ここに来てようやく、ぼやけた頭が明瞭な輪郭を結んだ。
「おはよう。理莉(りり)」
恋人の名を呼ぶと、彼女は笑みを深め唇を近づけてきた。とても柔らかい唇だ。
軽く唇を重ねただけで、陶酔した気分が胸を満たす。ともすればキスだけでまどろんでしまいそうだ。
……しかし僕はなんで寝起きを襲われているんだろう?
「んむ」
疑問をよそに、彼女が舌を僕の口内に入れて来た。こちらも舌を絡ませ、おはようのディープキスを愉しむ。それだけで余計な思考は溶けてなくなる。
キスをしてる最中もまぶたは閉じぬまま、至近距離でお互いの瞳を見つめ合う。
黄金色の美しい瞳は、煮詰めた甘露のようにトロンとしている。交わいながらの接吻は彼女が特に好む愛情表現の一つだ。
肌に密着するもふもふした毛皮は温かくて柔らかく、ほのかにいい匂いがする。
ハーブと紅茶を混ぜたような、心が不思議と落ち着く香り。理莉がよくつけている香水の匂いだ。
「はむっ、んん、ずちゅうううう」
エサを欲しがるひな鳥のように理莉が僕の舌へ必死に吸い付いてくる。
(ああ、可愛いなぁ)
愛おしい人。姿形は人間と異なれど、そんなことが些事に思えるくらい最愛の女性。
僕も自分から舌を絡め合わせつつ、腰を下からゆっくり突き上げる。両手を彼女のおしりに回すのも忘れない。
勃起した剛直はドロドロになった密壺をえぐり、心地よい快楽を生む。スベスベの尻肉は高級調度品の如く触り心地が抜群で、いつまでも撫でていたいくらい。
「ふむうっ、ぢゅるうっ、ぢゅばっ」
ほっこりする体熱とふわふわの羽毛にくるまれることで、安心感がじんわりこみ上げてくる。天然湯たんぽとは彼女のことを指すのだろう。
「みゅちゅっ、はむっ、はむっ、ちゅうううううう」
しかし今日はやけにキスの時間が長い。そろそろ呼吸が苦しくなってきた。
「っぢゅむっ、びぢゅううっ、ぢゅぞぞぞっ、にゅぢうるるるる」
意識が薄れてきた。まずい、一旦停止を理莉に伝えなくては。
「ぢゅうううううううう! ずぢゅるるるっ、ぢゅううううううっ!」
「んーっ! んんーっ!」
本格的に呼吸がヤバくなってきたので、彼女のお尻をぱしぱし叩く。
しかし理莉は新しいプレイと勘違いしたのか、嬉しそうに目を細めると腰を上下に勢いよく揺らし始めた。そのせいで結合部から飛沫が飛び散り、暴力的な快楽が脳を焼く。
気持ちイイ。冗句ではなく死ぬほど気持ちイイ。
でも違う、そうじゃない。
「ちゅぱぅっ! ばはあああっ! ストップ! ストップ! ストーップ!」
なんとか唇を放すことに成功。
すかさず追撃の口づけをしようとしてきた理莉に、一時停止を求める。
窒息しかけていた気道が解放され酸素が供給される。役目を忘れていた肺が、正常に機能し始める。心臓がポンプの役割を果たし、停滞していた血流の脈動を再開する。
危うい所だった。呼吸困難と常軌を逸した快楽のせいでホントに逝きかけた。
澄み切った河と緑溢れる草原の向こうには、頭に輪っかを乗せた女性天使がいた。幻影……いや、走馬灯にしてはリアルすぎる光景だった。
呼吸ができるってとても素晴らしい。
「……。イヤ、だった?」
「だあああああっ、そういう訳じゃないから!」
生の実感を噛み締めていると悲しそうな声が降って来た。
じわっと一瞬で涙目になった彼女。僕は慌ててフォローの言葉を伝える。
「単純に、息継ぎができなくなっていただけなんだ。理莉とのキスが嫌になったとか、そういうのじゃないからさ」
「そうだったの……。ごめん、私、暴走しちゃって」
しょぼんとうつむ
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