怠惰な蜘蛛と虜な僕と

――はて、今は何時頃なのだろう?

部屋の外から物音が聞こえてこないということは、ジャイアントアントらが仕事に出かける早朝や帰ってくる夕方ではない。
ならば仕事に精を出している日中だろうか、それとも彼女らが部屋に帰りそれぞれの伴侶らと愛を確かめ合う夜中だろうか。
もしかしたら行為も終わりすっかり眠りについている深夜から早朝の間なのかもしれない。
隣で眠る彼女、アントアラクネであるベルの顔を覗きながらそんなことを考えてみる。
ここに住むようになってからというものの、僕の体内時計は少しずつ壊れていく一方だ。
起きている間はただ彼女を求め、僕がヤり疲れても構わず犯され、彼女の気が済んだらようやく惰眠を貪る。

――ベルが起きるまでどうしようか……二度寝するかなぁ。

彼女より早く起きることが大半な僕だが、たまに彼女の方が早く起きると寝てる僕に悪戯をしてくる。
悪戯とは言っても、おでこに肉と書いたりとかほっぺに渦巻き模様を書いたりとかの子供じみたものではない。
ある時はすでに濡れている女性器の中には入れずに、彼女の8本のうち比較的短めの最前の1対で僕の男性器を弄んだり。
ある時は大きく口を開けて男性器を頬張るが、ただ口に含むだけで舌などは動かさずただ僕が起きるのを待っていたり。
ある時は豊満な胸の間に僕のモノを挟み込み、僕が起きて慌てふためくのを見ようとするもそのまま彼女が寝ていたり。

――うん、二度寝はやめよう。起床直後まで彼女に弄ばれるのはたまにで十分だ。

そう心に決めて、物思いにふける僕。
こういうときは今までのことを思い出すに限る、たとえばベルとの出会い、とか。





どれくらい前だろうか、数か月かもしれないし、数年かもしれない。
当時薬草やキノコの採取をしてそれを売って生計を立てていた僕は、その日も森を歩いていた。
いつもと同じように家を出て、いつもと同じように目当てのものを採取し、いつもと同じように帰路につく。
ただ、なぜかその日の僕は、ふと「普段とは違う道から帰ってみよう」と思い立ったのだ。
まるで何かに誘われているかのようにふらふらと歩みを進める僕が見つけたのは、蟻に似た魔物の隊列だった。
何十人もの魔物たちが小動物やら穀物やらを運んでいるその姿に僕は圧倒されていた。
彼女達も僕と同じく精一杯働いたのであろう、夕焼けを受けて光る汗がとても美しく視界に映る。
その汗の匂いは僕の汗臭さとは比べようもないほどの芳香を漂わせており、もっと近くで嗅ぎたいと足が自然と近付いていく。
そして僕は親鳥の後を追う雛鳥のように、彼女達の後ろを付かず離れず歩を進めていった。

――ここが巣、かな?

20分ほども経ち、先頭の魔物たちが少しずつ地中にある大きな穴から地下へと入っていく様子が見える。
僕もその集団に付いて近づいていくと、斜めにぽっかりと空いた大きな穴は階段状になっているのが分かる。
階段を下りていくと、暗いかと思っていた地中だが魔法の一種であろうか、壁に埋め込まれた玉が暖かな色で照らしている。
好奇心には勝てずそれをよく見ていたせいであろう、いつの間にか先にいた彼女たちの姿が見えなくなってしまっていた。

「あれ、あ、どうしよ……」

とりあえず道なりに歩いていくか、とまた何かに引き寄せられるみたいにふらふらと歩いていく僕。
居住用の区域らしい、小部屋がたくさん連なる大きな通りにつくまでに数分もかからなかった。
たくさんある部屋のどこかに入らせてもらおう、と直感で一つの部屋の前に立ちこんこんと扉をたたく。
中から「どうぞぉ♪」という艶やかな女性の声が聞こえ、僕は部屋へと入り彼女とご対面したのだ。
まず僕の目に映ったのは、部屋の壁に立てかけられた糸だらけのスコップであった。
視線を部屋の右から左へとずらしていくと、小さな机と大きなベッド、そしてベッドの上に魔物がいた。

「こんにちはぁ。いえ、こんばんは、かしらね?」
「こ、こんばんは……」

耳朶に広がっていく彼女の声はひどく淫猥で、ねっとりと耳から犯されていくような感覚を覚えた。
藍色のショートカットの髪に、2本の触覚の生えた頭がこちらに向いている。
目はすでに蕩けた様子で、その目でじろりと見られるだけで体中が舐めまわされているようだ。
じゅるりと音を立て舌舐めずりをする彼女の唇から視線を下へとずらしていく僕。
僕が後を追いかけてきた魔物たちと違い、衣服は胸だけしか隠しておらず汗ばんだお腹やおへそが艶めかしい。
視線をさらに下ろしていくと、僕は先ほどの魔物と違う点をまた見つけた。

「脚、8本なんですね」

そう、8本。
彼女は4対の脚を持っていたのだ。
ベッドに接地しているのは6本だが、それとは別にすこし短い脚が付いていたのだ。

「ふふ、そうよぉ。ところであなた、お
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33