甘いラミアと熱い抱擁

「おはよう、あなた」

カーテンの開く音とともに耳に響いてくる最愛の人 ―ラミアである妻のネーク― の声。
ネークは毎朝自分より早く起き朝食の準備などをしてから起こしてくれる、自慢の妻だ。
視線を向けると日の光を受けて輝く金色の長髪、優しげに微笑む目元、見慣れた顔がある。

「あぁ、おはようネーク」

こんな素晴らしい朝を毎日迎えられるのも良妻であるネークのおかげだ。
言葉に出すのは恥ずかしいので心の中で感謝しつつベッドから這い出る。
顔を洗い意識を覚醒させ食卓につき、一緒に食事をとる。

「「いただきます」」

結婚当初は妻と自分の料理の腕前はトントンだったが、1年以上たった今では妻にかなわない。
バターを塗ったトーストに齧り付き温かなスープを飲みながら感慨にふけってみる。
やはり良いお嫁さんをもらったなぁと感謝の念が絶えない日々だ。

「ねぇあなた、今日はご近所さんとの会合だったわよね?」
「ん? そうだね、そうだったなぁ」

僕らが住んでる街は魔物との交流が深い街で、ご近所とのつながりも強い。
季節に一度はみんなで集まって男も女も井戸端会議に花を咲かせるのだ。
普段はほとんどずっと一緒にいる夫婦たちもこの日ばかりは別々に行動するのだ。
前の会合ではオーガを妻に娶った男性が「鬼の居ぬ間に心の洗濯だな」などと言っていたなぁ。

「ふふ、今回はどんな話をするのかしら? 楽しみだわあ」
「楽しみだね、っと、ご馳走様。今日も美味しかったよ」
「ありがと♪ お片付けしちゃうわね」

朝の優雅なひと時も終わり、おたがいに会合の場所へと出かけて行った。
ちなみに会合の間の数時間とは言え離れるのが寂しいので、道が分かれるまで手を繋いでもらったのはご近所さんには秘密だったりする。





会合は前回と同じく色々な話をした。
ある人は最近この街を訪れた旅人から東方の珍しい精のつく食材 ―スッポン、というらしい― を買ったこと、
別の人は十数日前の雨の日に洗濯物がずぶ濡れになったので裸で過ごしたら交わりがいつもよりヒートアップしたこと、
また別の人は最近奥さんが妊娠したこと ―もちろんみんなで盛大に祝った― などを話した。
特に僕の中で記憶に残ってるのは、自分と同じくラミアの奥さんを持つ人の話だった。

「初恋の人が近くに来てた時に懐かしくて会いに行ったんだけどさ、それが家内にばれてカンカンに怒ってよぉ」
「それはキミが悪いよ、僕はそんなこと絶対しないのに」
「お前は初恋がネークさんだからだろうが。んでその晩は家内に搾られて絞られつくされちまったよ」
「ん、搾る? 絞る? どういうこと?」
「いやぁ搾精のペースも普段以上だったし尻尾の巻き付き具合も普段よりすごかったんだよ。俺ぁ雑巾になったかと思ったぜ」

とまぁこんな具合の話だった。
ネークとの交わりは毎日のようにしているけど、妻はそこまで強く巻き付けてきたことがない。
そういうこともあって彼の話みたいな交わりもしてみたいなぁなどと考えたのだ。
もし僕も浮気みたいなことしたらネークにたっぷりシてもらえるのかなぁ、とか。
彼女といつも以上に深く繋がりあってきつく抱きしめあってみたいなぁ、とか。
でもまぁ彼女以外の誰かを好きになることなんてないし浮気なんてできっこないよなぁ、とか。
まぁそんなくだらないことを考えつつ家へと帰ってきたのである。





「おかえりなさい、あなた」
「うん、ただいま、ネーク」

家に着いたらもうネークが晩ご飯の準備をしていた ―お昼は会合で皆でわいわい騒ぎつつとるのが恒例である― 。
僕も一緒に台所にたち料理の手伝いをしながら今日の話をした。
女性陣はもっぱら普段の性行為の話をしていたらしい、いやはやさすがは魔物というべきか。
お互いに話をしながら30分ほどだろうか、良い香りと湯気を立たせた料理も完成していた。

「「いただきます」」

今日の晩ご飯はたっぷりの野菜とお肉の入ったシチューだった。
温かなシチューを頬張るともちろんおいしい、やはり自分は幸せだと思う。
にこにこしながら食べる妻と一緒だからさらに美味しさを感じる。
楽しい時間というのは過ぎるのも早いもので(いつも早いんだけど)、あっという間に食べ終えてしまった。
二人同時にご馳走様をして、一緒に食器の片づけをしながらふと思ったことを口に出してみる。

「ねぇネーク、僕が浮気したらどうする?」

ガチャン、と食器の割れた音が台所に響き渡る。
彼女の顔を見れば信じられないという青ざめた顔を見せて数瞬後には眼を鋭くさせていた。
そんな顔も素敵だなぁと見惚れているといつの間にか身体を尻尾で拘束されていることに気付く。
そして彼女は台所の片付けもすませぬうちにそのまま移動し始めた。

「あれ、ネーク? まだ洗い物
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