教会の中から剣戟と咆哮の重奏が聞こえる。
「これで十五匹目だ!」
ミレイの振った剣は、的確に金の獣の急所を切り裂き燃やしていく、獣の巨体が崩れ落ちる。
「こんなところで立ち止まっている暇なんて無いのに…」
戦いが始まってしばらく時間が経ち、始めは互角以上の戦いをしていたミレイだが、もはや顔に浮かぶ疲労の色を隠せずにいる。獣の数を三分の一程減らしたものの、剣に掛かった炎の魔法も今では僅かに火の粉を散らす程度になっている、限界が近づいているのだ。またも迫り来る獣の爪を避ける、しかしそのときだった。
「そんな…」
ミレイは崩れた祭壇の破片でつまずき転んでしまった。獣の爪がミレイに迫る、
「ごめんね…レナ…」
目を閉じて死神の鎌が振り下ろされる瞬間を待つミレイ、しかしその瞬間は訪れない。
目を開けたミレイの視界には止まった獣がいた。そう、まさに止まったと表現するのが正しいのだ。
「待たせちゃってごめんね、ミレイ。」
聞き慣れた親友の声が聞こえると同時に目の前の獣の体が細切れになる。
「来るのが少し遅いわよ、レナ。」
親友の顔を見たミレイは軽口を叩いた。階段の奥から獣の鳴き声が聞こえてくる。
階段の下から獣が増える。しかし、もうミレイは怯まなかった。
「状況は好転しないわね。」
「あなたとならばなんとかできるわ。」
親友の援軍で気力を取り戻したミレイは剣を構えなおした。だが、この戦力差は簡単には覆らない。
こうしている間にもレナのさらわれた仲間はどうなっているかわからない。焦りのみが膨らむ中、突然何かが獣たちを吹き飛ばした。
「うふふふふ〜お困りかしら〜。」
「マール君を助ける手伝いをしてやる。」
「あなたたちは!」
「誰?」
戦斧を持った給仕服の女と、拳で獣を殴り飛ばした給仕服の女を見てレナは驚き、ミレイは首を傾げた。
突如戦場に現れた二人の給仕は続ける。
「うふふ〜ここは私たちに任せてマール君のところに行きなさい。」
「これはお前が持って行け。」
無愛想な給仕が投げたかばんをレナは受け取る。
「あなたには、これをあげるわ。」
ミレイは不思議な雰囲気の給仕がスカートの中から出した瓶を受け取った。
《不死鳥と魔王の秘薬》
服用した者の体力と魔力を最高の状態まで回復する薬、
回復する為にしてはコストが掛かりすぎるため一線から退き、製造することすら難しい幻の薬の一つ。
「ほんとにいいんですか?」
「うふふ〜道具はね、正しい持ち主に使われる為にあるのよ。」
「だから早く行け、そのかばんを正しい持ち主に返してやるんだ。」
二人の給仕は武器を構え、獣の方へ向き直る。
「ありがとうございます。」
「この礼は必ず返します。」
礼をした二人は、階段を下りて教会の地下へと足を進めた。
「うふふ〜さあ暴れるわよ〜。」
「楽しませてくれよ、獣共。」
二人の給仕は不敵に笑い、獣たちの中に切り込んでいった。
______________________________________
教会の地下深く、白衣の男の実験室。作られた英雄の薬の試作品が次々に別の部屋に運ばれている。
「まだ賊を片付けられませんか、所詮は出来損ないの集まりですねぇ。」
白衣の男の狂気の実験は続く、それはまるで世界の全てを狂わす勢いで。
_______________________________________
目が覚めるとぼくは光の中にいた。何も聞こえず、何にも触れず動くことすらできない、
ただ目を開けると黄金の光が見える。
ぼくはどうしたのだろうか?なにもすることができないや。なにもないならしなくていいや。
薄ぼんやりとした意識の中、ぼくは再び目を瞑ろうとした。
「困るな、眠ってもらっちゃ。」
声が聞こえる、あなたはだれかな。
「君を待ってる人たちが外にいるんだ、早く起きて迎えに行こう。僕も力を貸してあげるから。」
声が途絶えると、ぼくの意識がはっきりとしていく。見えてくる、聞こえてくる、ぼくの感覚が帰ってくる。
そして…
________________________________________
「馬鹿な、被検体の力は幾重にも重ねた封印魔法で封じたはず。」
白衣の男の驚愕の声と同時に少年が入っていた容器が割れた。溢れ出る黄金の波動は、白衣の男に恐怖を与える。
「おっおとなしくしていろ!」
『星の断層よ、生と死の境界よ、彼の者を封じよ【惑星断層の結界(スタープリズン)】』
【解呪せよ】
竜すらも封印する最上級の封印結界魔術を使い、少年を再び封じようとする白衣の男
しかし、白衣の男の魔術は黄金を纏う少年の一言でかき消されてしまった。
「何故だ、そんな魔術はこの世界には…」
【壊れろ】
白衣の男が喋るのに割り込み少年が発した一言に呼応して、白衣の男が砕け
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録