森である。四方八方上下左右東西南北森である。
「静かな森の中は画家の創作意欲を書きたてるものです。」
静かな森の中で絵筆を持った少年が一人語る。しかし次の瞬間その声は弱くなりあたりを落ち着き無く見回し始めた。
「お腹空いたよぉ…」
画家見習いの少年は森の中で遭難していた。これは遭難十日目の出来事である。
「国境の街に行くつもりだったのに、近道なんてするんじゃなかった・・・」
足取りはおぼつかない。空腹と疲労が彼の体を蝕む、限界を迎えた体が悲鳴をあげる。
「短い間だったけどありがとうございました…師匠…」
そう呟き目を閉じると彼の意識は体から離れていった。
_______それからまもなくして_______
「なかなか上手く書けないものね。」
森の中呟いたその女性は人間ではなかった。まず緑の鱗に包まれた尻尾が目を引く、顔は美しく整っており、
よく手入れされた茶色の長髪は木漏れ日を浴び煌いている。美しいリザードマンの女性だった。
彼女は変わっていた。武器を持たずペンとメモ帳を持ちこの静かな森を歩くその姿は奇妙でありそれでいて
違和感を感じさせなかった。
「変わった事でもあれば書く事に困らないのに。」
そして彼女の何気無い一言は彼女の希望の遙か上をいく形で現実となる。
「ここから先はこんな展開がいいかな。」
メモ帳になにかを書きながら進む彼女が迂闊だったのだろう。周りのものが見えていなかった。
「きゃっ」
地面に落ちていた何かにつまずき彼女は転んだ。起き上がりつつ下を見た彼女は、人間の少年を目にした。
「いたた…この顔…この子は?」
その少年は金の髪も見に着けている服も汚しながら、持っている絵筆と画板だけは清潔さを保っている。
「まだ息はあるみたいね、大丈夫これが運命ならあなたを死なせない。」
________そして時計の針は進む_________
暗闇の中、あたたかいものが手に触れている。懐かしいにおいを感じる。誰かに呼ばれている気がする。
目をあける。まぶしい…そこに見えたのは…
「あなたは…」
「目が覚めたのねよかった。」
目の前のきれいなおねえさんはぼくが目を覚ましたのを確認して驚きそして微笑んだ。その直後
ぐう〜〜
ぼくのお腹がなった。するとおねえさんはかばんの中から干し肉をぼくに差し出して、
「あんまりおいしくないけど食べる?」
と聞いてきた。だけどぼくにはその質問に答える余裕はなくて一も二もなく差し出された干し肉をたべた。
「もう起きて平気なの?無理はしないで。」
「はい、もう大丈夫です。助けていただきありがとうございます。」
「いいのよそんなこと。それよりあなたのことを聞かせてくれない?」
「ぼくの名前は"マール・アジャンファル"、画家見習いで師匠からの試練として絵を描きつつ芸術の町に行く
旅の途中です。」
「芸術の町に行く途中なのに森の中で遭難してたの?」
そこを突かれると恥ずかしい。顔を赤くしつつ答える。
「近道をしようとして…そうだ!そんなことよりあなたのことが聞きたいです。」
「そうね、私の名前は"レナ・レザード"、作家見習いで自分の文章力を上げるため、ものを書くための引き出しを増やすために旅をしているの。」
なんとか話を逸らすことが出来たみたいです。レナさんか、変わってるな
「リザードマンが本を書こうとしていることが変わっているかしら。」
「えぇっ!!」
「不思議ね、あなたの考えていることが私に伝わってくる気がする。」
驚くぼくを見て彼女は微笑んだ。やっぱりレナさんは変わってるな。
「もしよければ近くの町まで案内するけど、一緒に来る?」
「でもぼくお金はあんまり持ってないんです。」
「報酬はあなたの描いた絵ってことでどうかな?」
「それでいいなら…」
ぼくが不安そうに言うとレナさんは笑って
「これからよろしくね。」
ぼくに手を差し伸べた。握手したときにレナさんの力強さをかんじた。
__________________________________________
整備された路面に凹凸はなく、草は生えておらず土は固い。二人は街道に戻ってきたのだ。
「街道にもどれた…」
マールは感慨深く道を踏みしめていると、
「町まであと少しあるわ、賊が出るかもしれないから急ぎましょう・・・」
顔をしかめるレナ
「血の臭いがする。誰かが襲われているわ。」
「助けましょうレナさん。」
「危険よ、敵の戦力はわからないし」
「それでも、ぼくは死にそうな人を見殺しになんてできない!そいつらはどこにいるんですか!」
話の途中に割り込まれたレナはため息をつき血の臭いの方に指差すとマールはその方向に走って行った。
「やれやれ、困ってる人を見捨てられないか…」
そうつぶやきレナもまたマールの走った方向に向かうのだった。
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