『魔物…殺す……』
現れた紅き勇者は動かない標的に高速で接近する。
『殺スゥ!!!』
未だ動く様子の無いミレイに紅き刃が迫る。
「そう上手くはいきませんがね。」
「さっさと諦めろさっさと。」
紅き刃はミレイには届かなかった。アールは紅い剣を自分の剣で受け止め、エルンストはアールの剣を拳で支えている。
『しゅうそくするまりょくよ、つくられしかみのやりよ、はかいのちからをここにしめせ【天上の魔槍(レプリカグングニル)】』
{《我血の契約において退魔の力を行使せん【闇紅の血界(ブラッディ・ウォール)】》}
音と同時に迫る極限に鋭い魔力の槍に反応した紅き勇者は即座に上級魔法【天上の魔槍】を打ち消し自分の邪魔をしたアールに激しく切りかかる。
「やっぱり魔術はだめですか。」
「魔術以外に何とかできないのか。」
攻撃を受けるアールだが紅き勇者の猛攻の前にはその防御も長続きはしないだろう。
「アール君、今助けます。」
エルンストは二人の間に割り込み紅い剣をその手で受け止めた。
「二人とも、時間を稼いで。」
マールは体から緋色の光を出して空中と地面に何かを描き始めた。しかし攻撃を抑えていたエルンストはすぐに前方から吹き飛ばされてきた。その隙を消すようにアールが紅き勇者と切り結んだ。
「時間を稼げとは簡単なことを言ってくれるな。」
紅い剣を受けるアールの剣を持つ手には少しずつ切り傷が生まれる。それに気づいたマールがエルンストを見るとやはり先ほど剣を受けていた手には切り傷が見える。
「大丈夫ですよマール様、あなたのやり方に任せます。」
後ろに下がったアールの代わりに再びエルンストが紅き勇者を抑える。
【英雄の治癒(フラッシュヒール)】
アールの体が黄金の光に包まれ、次の瞬間には体の傷はなくなっていた。
「おい、何かするなら早くしろ。このままじゃ持たないぞ。」
「もう少しです。あと少しだけ耐えてください。」
マールが描く何かは既に形を成していた。緋色の光で描かれたのは古の竜の紋章である。
「二人とも、離れてください。」
【竜王の骸より造られし禁断の火砲よ契約に従い炎槍の裁きを彼の者に落とせ】
緋色に染まる空から一筋の光が紅き勇者に降る。光が触れた場所から全てが灰になっていく。竜王アルシェーラから授かった竜王の遺産"禁じられし火砲"、その威力は人知を超えるものだった。まるで隕石がその場所に落ちてきたかのような衝撃と爆音、熱量だった。容赦を知らない無慈悲な熱は形あるもの全てを飲み込む。
「あの馬鹿、加減を知らないのか。」
ミレイを担いだアールは火砲の攻撃範囲からは逃れたようだ。
「二人なら逃げられると信じてた。それにほら、」
マールが指差す方向を見ると辺りを照らしていた火砲の光は消えたが、光に包まれて見えなくなっていた物の大部分は姿を変えずに残っていた。
「範囲を制御して周りへの被害を抑えたんですよ。その分威力は少し低下しましたが。」
火砲の攻撃範囲と思われる場所には何かが焦げたような黒い跡が残っているがその他の場所には何も変化はなかった。
「しかし大丈夫ですかマール様、奴は攻撃で倒しても直ぐに復活するようです。いきなりあんな大技を使うのは軽率だったのではないでしょうか。」
「あ、それなら大丈夫ですよ。」
とても自慢げな顔でマールは続ける。
「あれは自分の力をあまり使わないんですよ。連続で使うのはむりですけど。」
「その顔やめろ……」
灰になった大地の上に紅い霧が立ち込めると再び紅き勇者がその場所に立っていた。
『魔物…殺す…』
「マール様もアール君もふざけてないで、奴が来ますよ。」
「まったく面倒な奴だな。」
担いでいたミレイを後方に放り投げて剣を構えるアール。
「あ、ちょっとミレイさんに何をしてるんですか。」
地面に落ちたミレイはまだ目を覚まさない。
「緊張感は無いんでしょうか…」
エルンストはため息をこぼした。
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森の奥深く、日の光さえ届かぬこの世界を人は何と表現するのだろう。ある人はこの森を魔境と呼び、またある人は神域と呼んだ。
「ここが研究所ね。」
そこにはこの世界のものとは思えない建造物が建っていた。建物全体が金属で出来ており、
入り口が見当たらない。この世界には場違いな程発達した技術で造られた建物だった。
「どうやって入るの?」
『任せなよレナちゃん。』
目の前の鉄の塊への侵入方法を模索するレナの頭に突然聞こえなくなっていた声が再び聞こえる。
「ブラッド、今まで何してたの?」
声が聞こえるだけでなくぼんやりとブラッドの姿まで見える。
『レナちゃんの中で眠って力を溜めていたん
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