ここは魔物と人間が共に学び暮らす学園
「♪〜」
放課後の学園の廊下を一人の女子生徒が歩いていた。いや、泳いでいた。なぜなら彼女はマーメイドだからである。
ガラッ
「みんな〜居る〜」
女子生徒はある一室のドアを開ける。
「おう、もう揃ってるぜ。藍」
そこには二人の男子生徒と一人の女子生徒(マンティス)がギターやベースやドラムを並べて待っていた。
そこは、軽音部の部室である。
「皆早いね」
先ほど教室に入って来たマーメイドの名前は霧沢 藍(きりざわ あい)、高等部の2年生。
「藍が忙しすぎるんだよ」
ギターを持っているのは同じ2年の貴嶋 豪(きしま ごう)、
「あはは、まあ藍ちゃんは頑張りやだからな!」
ベースを持っているのも同じ2年の阿形 友木(あがた ゆうき)、
「・・・」
ドラムの椅子に座っているマンティスは1年の切也 誄(きりや るい)である。
「よ〜し、じゃあ今日も部活動頑張るぞ!」
そう言うと藍はマイクを取り、豪たちはそれぞれの楽器を構える。そして、豪たちが演奏を始め、藍がそれに合わせて歌い出す。
「は〜、お疲れ〜」
部活動が終わったのは日が沈み始めた頃だった。
「よし、じゃあ片付けるか」
豪たちは楽器を袋に入れ、ドラムを倉庫に片付けた。
「片付け終わり」
「は〜い、ご苦労様、では、私から重大な発表がありま〜す!」
藍が豪たちに注目するように言う。
「重大な発表?」
「なんだよ?」
「・・・・」
全員が藍を見る。
「えへへ〜、ジャジャ〜ン!」
藍は鞄から一枚の紙を出す。そこには、『全国マーメイドボイス決定戦 出場予選 合格』と書かれていた。
「マジで!」
「すげ〜!」
「!!」
豪たちが驚く。
「何時の間にこんなの受けたんだよ!」
「少し前にね。まさか合格するとは思わなかったけど」
藍は紙を鞄に戻す。
「それで、本戦は何時なんだ?」
「10日後だよ」
「そうか、まあ出るなら優勝狙わないとな」
「勿論だよ」
そう言って四人は騒ぐ。
「じゃあね〜」
「またな」
「じゃあな」
「・・・(フリフリ)」←手を振っている。
藍たちは校門で藍と豪、友木と誄の二組に分かれて帰り始める。
藍は豪と話しながら歩く。
「それで、大会はどんな感じになるんだ?」
「え〜と、上手く決勝に残れれば予選から二週間してから決勝になるらしいよ」
「ふ〜ん、開催場所は海外なんだよな」
「うん」
「という事は、少しの間会えないんだな」
「そうなるね。毎日メールしてよ」
「分かってるよ。俺だって、お前のことが心配だからな」
そう、藍と豪は付き合っているのである。
切っ掛けは初等部の頃、
「返してよ〜!」
「や〜い、ここまでおいで!」
藍が嫌がらせをされていた時の事である。
藍はマーメイドが陸上で歩行する為に必要な『人魚の涙(魔力を送ることで空中を泳ぐ事が出来る首飾り状の魔道具)』を取られていた。その為、普段から魚の足で生活をしている藍は、首飾りを取った男の子を捕まえる事が出来なかった。
「返して!」
藍がゆかをはってやっとのことで男の子所まで行くと、
「ほい」
ポイッ
「ナイスパス」
男の子は教室の逆サイドの居たもう一人の男の子に首飾りを投げる。
「ほ〜ら、首飾りはここだよ〜」
もう一人の男の子は、藍を呼び寄せるかのように首飾りを見せつける。すると、
「返してやれよ」
パシッ
横から他の男の子が首飾りを奪い取る。それが豪だった。
「てめぇ!」
豪に首飾りを取り返された男の子が二人がかりで豪に殴りかかり、喧嘩を始めた。
数分後、先生が来て豪以外の二人を職員室へ連れて行った。
「はい」
豪は殴られた顔で藍に首飾りを渡した。
「あっ、ありがと」
それが二人の切っ掛けだった。
「じゃあ、ここでお別れだな」
豪が分かれ道に差し掛かったところで藍に言う。
「またバイト」
「ああ、修行も兼ねてな」
豪の夢は一流の料理人になることであり、その為に料理店でアルバイトしながら料理の勉強をしているのだ。
「何か欲しい物でもあるの?」
「まあ、色々あるけど、今は一つかな」
「なに?」
「秘密だ」
「え〜」
「買ったらお前にも見せてやるよ。じゃあな」
そう言って豪はバイト先に急ぐ。
「絶対だよ〜」
「ああ」
そう言って二人は別れた。
「はぁ〜、豪くんも頑張ってるんだな〜。私も頑張らないと!」
藍がそう言って歩いていると、
「おっ!なあ、あのマーメイドの子、なんだかよくないか!」
「ホントだ!」
藍から少し離れて歩いていた三人組の男子が藍を見ながら言う。
「よし、声かけてみようぜ!」
三人組の一人が藍の方に行こうとすると、
「まて」
別の一人が止める。
「なんだよ!」
「よく見ろ、あれはウチの2年の霧沢だ」
「えっ、あっホントだ」
「面倒なことになるからやめとけ」
「そうだな」
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