故郷なき者

それは、森と川が近くにある大きな道だった。
ブーーーーーン
そして、その道を一台の大きめモトラドが走っていた。
モトラドに乗っているのは、名前をアレン・ギルフォードと言う。十八歳の青年である。
モトラドには、テントや燃料タンク、着替えの入ったトランクなど、正に旅人の持ちモノと言える物が括り付けられていた。
アレンの服装は、黒の上下にグレーコートを羽織った感じで、腰の後ろには銃が一丁、ホルスターに収まっている。
モトラドは、これまた黒いボディーで、海を渡って来た商人を助けた時に譲り受けた物である。最近は、此方の大陸でも流通している。
暫く進むと二つの道が合流している場所に差し掛かった。
キイッ
アレンは、モトラドを止め、鞄から地図を出した。
「う〜ん、このまま北に行くと山を抜けないといけなくなるな〜かと言って南には大きい森が在るし、あまり時間も無い」
アレンが空を見上げると、日はすでに傾き始めていた。すると、
ドドドドドドッ
アレンの来た道の方から多くの足音が聞こえて来た。
「うん?」
アレンが振り向くと、少し離れた所から、騎士団と思われる一団が近づいて来る。
「まずいな」
アレンは林を抜け近くに在った大きな川の土手にモトラドを移動させた。
騎士団は、先ほどまでアレンが居た場所を通り、北へと向かう。
「北の方で戦争でも在るのか?」
アレンは茂みから騎士団を見ながら言う。
「これじゃあ、北は無理だな。けど、夜に成るまでの残った時間で南の森を抜けるのは無理っぽいし、うむむむむ―――」
アレンが腕組みしながら川を見ていると、
ぷかぷか
「うん?」
川上から木が流れて来た。だが、その木を良く見ると、
「えっ!子供!」
その木には、子供が一人しがみ付いていた。
「はっ!いけない!」
川は、今アレンの居る所からは、岩や渦などが多い場所に成っていた。
アレンは着ていた服を素早く脱ぎ、下着姿で川に飛び込んだ。
「はあっ、はあっ」
アレンは木の下に着くと、子供を抱え直ぐに岸に戻った。
ザバッ
「はあーっ、はあーっ!」
アレンが岸に付き、川を見ると、先ほどまで子供がしがみ付いていた木が渦に巻き込まれ、バラバラになって行くのが見えた。
「すーー、はーーー!」
取りあえず、アレンは安堵し、抱えたままの子供を見る。そこで、アレンは自分の胸の辺りに、何か固い物が当たって居るのに気づいた。
「えっ?」
アレンが子供の頭を見ると、
「つ、の?」
その子供の頭には角が二本生えていた。そして、その更に下、アレンのお腹には何か柔らかい物が当たっている。それは、子供にしては発達し過ぎの胸だった。
アレンは驚き、その少女の脇を持ち正面から体全体を見る。そして、自分が何を助けたかを知った。
「ホブゴブリンか?」
「うっ・・・」
すると、ホブゴブリンがアレンの声に反応して起きた。そして、一言、
「貴方は、誰ですか〜?」
「君こそ誰だ?」
「私ですか〜?私の名前はラピスで・・クシュンッ!」
ホブゴブリンは名前を言うと小さなくしゃみをした。

パチッパチッ
アレンは冷えた体を温めるため、近くから木の枝を拾って来て、それに火を点けた。
アレンとラピスは二人でその火を囲む。そして、アレンはどうして流されていたのかをラピスに聞いた。だが、その理由はとても簡単な事だった。
「なるほど、即ち仲間と筏を作って川で遊んでいたら、筏が壊れてしまいそのまま流されたと・・」
「はい〜、アレンさんが助けてくれなかったら、私」
ラピスの目がウロウロし始める。
「あー、泣くな、泣くな」
アレンはラピスの頭を撫でながら宥める。
今の状況、アレンは濡れた下着を履き換え元々着ていた上下の服を着る。一方、ラピスと言えば、濡れた服は木に引っかけてたき火で乾かしているため、アレンのコートを羽織ってアレンに寄り添っている。
「(いかん!なんだかドキドキしてきた!)」
アレンは気を紛らわすため空を見る。すでに辺りは薄暗くなっていた。そして、寄り添うラピスをチラッっと見る。すると、その視線に気づいたラピスと目が合う。
「(うっ!)」
アレンは直ぐに目を逸らす。
「(置いて行く訳には、いかないよな〜)」
アレンは「はっ〜」と溜め息をつく。
「今日はここで野宿か」

アレンは、モトラドに乗せていたテントを降ろし、川原に建てて夕食の材料調達の為の釣りを始めた。ラピスはと言うと、乾いた服を着て、
「少し食べ物が無いか周りを見てきますね〜」
と言って、森に入って行った。
ラピスは、何処か抜けている様で割と確りしている。
「よっと!」
パシャ
アレンの釣りは好調、中位の魚を6匹釣り上げた。
「結構取れたな、いい感じだ」
アレンが釣竿を片付けていると、
ガサガサ
後ろの茂みが動きラピスが帰って来た。
「わ〜、いっぱい取れましたね〜」

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