シーン3
魔物娘
シーンプレイヤー:アルト
(――フリック君)
アルトは自らの唇を押さえる。唾液の余韻を残さず味わうようにゆっくりと口の中で舌を這わす。
ドッペルゲンガーの主な食料は人間の精。人と同じ食べ物でも栄養は得られるが満足を得られるかどうかは別である。人間で言えば点滴だけで命を繋ぐようなもの。浅ましさを感じながらもアルトは自らの行為を止めることは出来なかった。
足りない。キス程度では到底満足などできない。むしろ食欲が増してしまったと言ってもいい。
(『捕精剤』を……手に入れなきゃ)
彼女はルチアの町の裏通りを夢遊病者のように歩みを進めていた。
GM:さて、次のシーンプレイヤーはアルトとしましょう。他のプレイヤーは随時登場可能です。情報収集をするか、それともどこかを訪ねておくか。
アルト:そうですね……情報収集もいいですが調達判定を行ってもいいですか?戦闘がありそうなのと、フリック君がいないうちに捕精剤を入手しておきたいです。本当はすぐにでもカティナさんのことやゴブリン盗賊団を調べたいのに体が疼いて仕方のない感じで。
ライナ:中途半端に補給してかえってどうしようもなくなった感じだろうね。
GM:問題ありません。では、判定をどうぞ。目標値は10です。
アルト:【社会】は5『教団のコネ』は流石に無理。……ドロー!成功しました。フリック君に内緒で町を歩き回り、裏通りの怪しげな建物でなんとか一本手に入れました。即座に効果を使って2枚ドローして低いほうを手札に加えます。「……これで、これで暫くは……」
エルマ:成程。裏通りってことはサバトの支部の近所……。うん、丁度ここが合流のしどころだろう。「勇者の相棒が魔物娘とはね……驚いたけど、そのほうが好都合だ」そう言ってアルトの後ろに登場する。
「はあっ……はあっ……これで、しばらくは……」
捕精剤を飲み干し、荒い息を吐くアルト。味こそ最低だが、少なくとも腹を満たすことは出来る。彼女は、飢えが満たされる感覚にしばしの間酔っていた。故に気づいていなかった。彼女を後ろからずっと観察していた存在に。
「勇者の相棒が魔物娘とはね……驚いたけど、好都合だ」
「……誰ですかっ!?」
驚愕の色を浮かべつつ振り返るアルトに対し、エルマはほんの少しだけ笑みを浮かべていた。
アルト:「……誰ですかっ!」この登場の仕方、一歩間違えば悪役だと思うのですが。
エルマ:「私の名はエルマだ。……確認だが、君の名前はアルトであっているかな?勇者フリックとともに任務についているヒーラーだ。魔物娘だと知ったのはついさっきだがね」……この情報は持っていていいよね、GM。
GM:かまいません。
アルト:わたしがききたいのはそこじゃない!分かってていってるでしょう!?
エルマ:そうだな、からかうのは止めにする。「……君に頼みがある。君の勇者様を私に紹介してくれるだけでいい」
アルト:フリック君に何かするつもりですか……!『柊の杖』を構えます。たとえ戦闘能力が無くても、一矢位報いて見せるんだから!
エルマ:いや、何かする気は……む、あったな。魔力を貰わないとダメだ。
アルト:……!
ライナ:ええと、これ本当に大丈夫?なんか一触即発の状況にしか見えないんだけど……?
エルマ:あれ?合流して仲良くするつもりがどうしてこうなった。
フリック:……自業自得だと想うなあ。仕方ない、出よう。【魔力の源泉】で1ドローして……「おーい、アルト!そんなところに居たのか!」
アルト:え、出るの!?「……フリック君」呆然と立ちつくします。
エルマ:おや、好都合だ。ならば言うことは一つ。「フリック君のせい――」
ライナ:登場。こいつ止める。「なんか、連れが迷惑かけたみたいだな、すまない」
フリック:いや、問題ない、問題ないが……どうして魔物がここに!?
ライナ:それにはちょっと長い話が必要になるぜ。二人にとって嫌なことは絶対にしないって約束するからさ。ちょっと聞いて貰えないかい?
フリック:……分かった。聞こう。
「まず、事の発端は魔力が感知されたことだ」
ライナは静かに口を開く。
今の魔物娘達を旧時代の魔物に戻す魔力について。そして、その危険性について。
「……別に、信じてもらえるとは思ってないさ。だけど、君の力が必要なんだ――勇者の力が。本当だよ」
証拠もない、ただの一方的な語り。
だが、フリックは静かにそれを聴いていた。
いや、聞かせるだけの必死さがライナにはあった。
ライナ:と、いうわけであたしたちには勇者の力が必要なんだ。
フリック:信じるに足る証拠は……。いや、それを聞くのは無粋か。
エルマ:そうだな、では一つ証拠を見せようじゃないか。GM、ここで【運んでいた物品
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